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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
123/200

寂しい場所

 しばらく北地区を歩く。相変わらず周りは不気味な感じで覆われている。


 僕はいつも通り不安な気持ちになりながらも、なんとか灰村家に向かって歩く。


「……寂しいよね」


 ふと、ケイさんがそんなことを言ってきた。僕は思わず立ち止まってしまう。


「え……寂しい?」


 僕が訊ね返すと、ケイさんは少し悲しそうな顔で僕を見る。


「うん……なんというか……言っちゃ悪いんだけど、この土地そのものが、寂しいの。私も色々見てきたけど……ここまで寂しい土地は見たことがないよ」


 寂しい……ケイさんの言う「寂しい」という言葉の意味がわからなかったが……ケイさんにはそれがわかるのだろう。


「……それは、白神さんのせいなの?」


 僕がそう訊ねると、ケイさんは首を横に振る。


「違う。元から。そういう場所なんだよね、ここらへんは……さぁ、行こう」


 ケイさんはそう言って、先へ行ってしまった。


 僕は周囲を見回す。


 荒れ果てた空き地、ボロボロの空き家……それは不気味であると同時に、確かにどこか寂しげだった。


 まるで、かつてのように、また人々に戻ってきてほしい……そんな声が聞こえてくるようだった。


 そして、それは、もしかすると……


「白神さんも……そうなのかな?」


 ふと、いつか黒田さんが言っていたことを唐突に僕は思い出した。


 忘れられてしまった神様。無くなってしまった信仰……


 単純に八十神語りという呪術だけじゃない……白神さんのそんな無念が、もしかすると、今起きていることには関係しているのかもしれないと、僕には思えてならなかった。


「黒須くーん! 早く」


 ケイさんの声が聞こえる。


 僕は足早にその寂しい場所を立ち去ることにした。

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