外部からの存在
「番田さん……こんなところでなにを……」
僕がそう訊ねると、番田さんは今一度目の前の何もない空き地を見る。
無論、北地区にこういう空き地があるのは不思議な事ではない。だけど……なぜだかその土地は不気味な感じというか……嫌な感じがしたのだった。
「ここが、何かわかるかね?」
僕がそんなことを考えていると、番田さんはそんなことを聞いてきた。
「え……ただの空き地……じゃないんですか?」
「君には……そう見えるのか?」
……違う。俺にだって目の前のこの土地が何かおかしいことは理解できている。
だけど、何がおかしいのか……それが理解できなかった。
「……では、質問を変えよう。黒須君。君の家……君のお父上はお墓参りにはどこに行くんだね?」
「え……な、なんですか。いきなり……」
番田さんはいきなりそんなことを聞いてきた。俺は意味がよくわからず、ただ、聞き返してしまった。
「そのままの意味だ。どこに行くんだ?」
「え……隣町の神社ですよ。そこでお墓参りしますけど……」
僕がそう言うと、番田さんはケイさんの方を見る。ケイさんは小さくため息をついた。
「……ねぇ、おかしくない?」
「え? 何が?」
「だって、黒須君のお父さん、この村の出身なんでしょ? だったら、この村に一族のお墓があるのが、普通なんじゃない?」
「……あ。そ、そういえば……」
……なんで気づかなかったんだろうか。言われてみれば当たり前である。
でも、父さんも特に気にしているわけでもないようだった。
それでも……やはりおかしいことには変わりない。
「後、もう一つ質問」
と、続けてケイさんが僕に訊ねてくる。
「そもそもさぁ……この街に、お寺ってある?」
ケイさんはそう言って、ずっと僕のことを見ていた。
お寺……そういえば……僕はお寺を見たことがない。
見た気になっていたが、実際にはこの街でお寺なんか見たことがない。
「そうだ。この街にはお寺がない。その他の宗教的建造物も一切ないのだ。唯一……白神神社を除いてね」
番田さんはそう言って、今一度目の前の空き地を見る。
「だが……かつて、この土地に、ある宣教師がこの村にやってきた際、一つの教会があった」
「え……教会?」
僕が番田さんとケイさんの言っていることについていけないでいると、番田さんは小さく頷く。
「そうだ。その宣教師の名前は、アダム・クロス……かつて白神村に顕れ、唯一滞在することを許された唯一の外部からの存在だ」