話したいこと
それから、しばらくすると北地区にたどり着いた。
相変わらずの薄気味悪い雰囲気……僕は未だに慣れることができなかった。
ケイさんもなんとなく辛辣そうな顔に見える……僕達は何も言わずに歩いた。
ただ……不自然なことがあった。ケイさんと僕が歩いているのは……どうにも灰村家の方向ではないようなのである。
「あ……あのさ」
思わず僕はケイさんに訊ねてしまった。ケイさんは立ち止まって気だるそうに僕の方を見る。
「あ? 何?」
「えっと……こっちって、灰村家の方向じゃないと思うんだけど……」
僕がそういうと、ケイさんは少し考え事をしたように俯いてから今一度僕の方を見る。
「……そうね。黒須君にはちょっと悪いんだけど……さきに言っておかないといけないことがあるから」
「え……先に言っておく? 僕に?」
いきなりそう言われても、意味がわからなかった
ケイさんは一体僕に何を言おうとしているというのだろうか。
「え、えっと……それって……」
「まぁ、付いてきてよ。私からは説明しづらいしさ」
そういって、ケイさんは歩きだしてしまった。僕も、その後に続く。
暫く歩くと、どんどんと寂しい場所が広がっていった。廃墟、空き地……北地区らしい風景が広がっている。
「あ……あのさ……ケイさん?」
「あ、いた」
と、前方にケイさんが何やら見つけたようだった。
「ああ、来たか」
「え……あれは……」
僕達の目の前に立っていたのは、黒いスーツの男性……
「……番田さん」
「やぁ、黒須君。無事だったか」
黒い探求者は、その何もない寂しい場所に、孤独に立っていたのだった。