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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
112/200

訪れる運命

 灰村家での一件の後、数日が過ぎた。


 黒田さん……正確には琥珀のことであるのだが……は、相変わらずの感じで僕に接し続けてきた。


 僕の方も刺激してはいけないということで、あまり変わった対応はしなかった。


 ただ、頭の片隅にはいつも、青柳老人が話してくれたことが残っていた。


 白神さんのこと、そして、八十神語りのこと……


 今、僕はその中心部にいるのだ……それが嫌でも意識させられてしまった。



 そして……ついに、八十神語りの日がやってきた。



「賢吾」


 いつものように放課後、琥珀は僕に話しかけてきた。


「え……あ、ああ。何? 琥珀」


 既に用件はわかっているが、僕は一応そう返事をする。


「今日は、何の日かわかっていますよね?」


 嬉しそうな顔でそういう琥珀……もちろん、わかっている。


「あ……ああ。白神神社……行くんだよね?」


 すると、琥珀は少し悲しそうな顔をする。


「賢吾……行きたくないのですか?」


「え? そ、そんなことないよ……行くさ」


 琥珀はジッと僕のことを見ている。それはまるで蛇が、得物を狙う目つきに似ていて、僕は少し怖かった。


「……なら、いいんですよ」


 そういって、琥珀はそのまま僕に背を向ける……思わず僕はホッとしてしまった。


「ただ……賢吾。私に言ってないこと……ありますよね」


「……え?」


 琥珀はそう云うと、貼り付けたような笑顔のままで僕の方に振り返った。


 その笑顔は……笑っていなかった。


 表情は笑っているのだが……目は怒ったように僕を見ている。


「余計な知恵をつけたこと……私に教えてませんよね」


「え……余計な知恵って……」


 すると、琥珀はそのまますごい勢いで僕の方に近づいてきた。


 僕は避けることも出来ず、その場に突っ立っていた。


「……どうせ、運命は変わりません。あんまり私のことを馬鹿にしていると……今ここで一緒に死んでもいいんですよ?」


 僕の耳元で抑揚のない声で琥珀は云うと、また、ニッコリと微笑んだ。


「さぁ、行きましょう」


 全身の血の気がサッと引いた心地をしたままに、僕は琥珀の後を付いていったのだった。

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