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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
109/200

真相への近づき

 暫くの間、僕もケイさんも何も喋らなかった。


 青柳老人も僕達と同様に黙ったままである。


「え……怨霊、ですか?」


 またしても、僕が最初に口を開いた。


 それを皮切りに、老人はなぜか立ち上がった。そして、なぜか客間を出て行ってしまった。


「え……ど、どうしたのかな?」


 思わずケイさんのことを見てしまう。


 ケイさんはぶすっとした顔で黙ったままである。


「白神さん……怨霊……って……」


「怨霊っていう言葉なんかで……片付く存在じゃないよ」


 僕の呟きにケイさんは、ぼそっとそう言う。


「え……それって……」


「……まぁ、いよいよ本当のことがわかってきたから、やっぱり最初に私が感じたなんとなくヤバイって感覚……あれが間違っていなかったってことが確信に変わってきたわ」


「……ケイさん……その……そんな白神さんに取り込まれちゃっている黒田さんは……大丈夫なんですか?」


 僕の質問に……ケイさんは何も答えなかった。


 ……僕にもなんとなくわかっている。黒田さんが……かなり危険な状態であるということを。


 そして、その生還の確率……黒田さんが僕の知っている元通りの黒田さんに戻ってくれる確率が、とんでもなく低いということを。


「……でも、諦めたら終わりだからね」


 ケイさんは僕の方を向かずにそう言った。


「……え?」


「そういう場合って……誰かに帰ってきてもらいたいって思われているだけで大分違うものだから……黒須君がその知り合いのこと、戻ってきてほしいと思っていれば可能性はなくはない……と思うよ」


 相変わらずのそっけない感じだったが……その言葉がケイさんの優しさだということはなんとなくわかった。


「……ありがとう。ケイさん」


「御礼なんていいわよ。私は、仕事で黒須くんに付き合っているだけだし」


 少し居心地悪そうにそう言って、ケイさんはそっぽを向いてしまった。


 変わった所はあるが……やはりケイさんは悪い人ではない。僕はそう思った。


「お待たせしました」


 と、そこへ老人が帰ってきた。


「え……」


 僕は思わず驚いてしまった。


 帰ってきた老人が手にしていたのは……白い蛇が入った酒瓶だったからである。


「ああ……すいません。私のような村民が白神さんの話をする時は……この白神酒を飲まなくてはいけなくてですね」


「え……白神酒?」


「あはは……その話もしますよ。ちょっとまっていてくださいね」


 そういって、老人は持ってきたコップに、酒瓶から酒を次ぐ。


 一杯分を継ぎ、それを一気に口の中に流しこむ。


「……ふぅ。では……はじめましょう。私が知っている白神さんに関するお話を」

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