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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
106/200

由来

「……え、えっと……お爺さん……それは……本当ですか?」


 疑うわけではなかったが、思わず僕はそう訊いてしまった。


 お爺さんは特に気を悪くした様子はなく、僕に微笑みかけてきた。


「ええ。嘘ではないですよ。本当です」


「あ……そ、そうですか……」


 僕は間抜けにそう返事してしまった。まぁ……わざわざ客間に僕達を待たせておいて嘘をつく必要もないだろうし……


「で、アンタは私達に、あの女と違って八十神語りの正確な話をしてくれるわけ?」


 相変わらずのぶっきら棒な調子でケイさんはそう言った。お爺さんは少し間を於いてから、続きを話す。


「ええ。もちろん、お嬢様が嘘を言っていたわけではありません。ただ……あの子は正確なことを知らないのです」


 そういって、少し悲しそうな顔でお爺さんはそう言っていた。


「……八十神語りのことを話す前に、少し年寄りの昔話をしてもいいですか?」


 お爺さんの予想外の申し出に、僕とケイさんは思わず顔を見合わせる。


「……どうぞ、ご勝手に」


 ケイさんがそう言ったので、僕も曖昧に頷いた。


「……昔、白神村は、貧しい村でした。私が小さいころも、そうでした……その原因は、どこにあったと思います?」


 そういって、お爺さんは僕の方を見た。


「え……あんまり土地が豊かじゃなかったとか……そういうことですか?」


「ええ。それももちろんあります。ですが……それ以上に、村民は厳しい弾圧を受けていました」


「弾圧……?」


 いきなり出てきた言葉に、僕もケイさんも戸惑ってしまった。


 青柳老人はそのまま話を続ける。


「村民は……村長から厳しい弾圧を受けていました。どんなに不作の年にも、村長は村民に対して一定量の収穫を要求しました。しかも、その一定量の収穫は、役人に渡す時は、何割かは自分のものにしてしまっていたそうです」


「ひ、酷い話ですね……」


「ええ。おかげで餓死する村民も珍しくありませんでした。村民は村長の一族を大変恨んでいたそうです……そんな中、村民を哀れに思ってなんとか助けようとしたのが、神社を代々取り仕切る一族でした」


 そういって、老人は今度はケイさんの方を見る。


「……アナタも、神社に関係する方ですよね?」


 そう言われて、ケイさんは面食らう。


「え……ど、どうしてわかるの?」


「ふふっ。まぁ、私も伊達に年をとっているわけではありませんからね。ところで、アナタだったら、もし困っている人がいたらどうしますか?」


 ケイさんはそう聞かれて少し悩んだ後で、老人の方を見る。


「……まぁ、神社ができることといえば、お祓いとか……祈祷とかじゃない?」


「ええ、そうです。白神村の神社……まぁ、お分かりでしょうが、白神神社のことです。そこを取り仕切っていた黒田家は、村民のために豊作の祈祷をはじめました。それが……八十神語りだったんですよ」

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