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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
101/200

話の続き

「あ……番田さん。その……話は終わりですか?」


 僕がそう訊ねると、番田さんは浮かない顔のままで小さく頷く。


「ええ、終わりましたよ。次の八十神語りの話は、隠すことなく、番田先生にお話しました」


 番田さんの代わりに、灰村が淡々と言う。


「へぇ。じゃあ、そろそろ、ここからはお暇したいんですけど」


 ケイさんがすかさずにそう言う。すると、番田さんはチラリと灰村の事を見る。


「ええ。どうぞ。お二人はお帰り下さい」


「……は? お二人って……どういうこと?」


 ケイさんがジロリと番田さんの事を見る。すると、番田さんは申し訳無さそうに俯く。


「……すまない。ケイ君……黒須君には……灰村邸に残ってもらう」


「……はぁ? せんせー……それ、本気で言ってんの?」


 ケイさんがそう言っても、番田さんは否定しなかった。


「え……ま、待ってください。でも、僕、家に帰らないと……」


「その点は問題ありませんよ。お家には、私の方から連絡しておきますから」


「で、でも――」


「問題、ありません」


 灰村は僕に二の句を継がせないように、はっきりとそう言う。


 さすがにこれ以上遅くなれば父さんや母さんも心配すると思うのだが……灰村には何か考えでもあるのだろうか。


「……だったら、私も残る」


 と、ケイさんが憮然とした態度でそう言う。すると、灰村はキョトンした顔でケイさんを見る。


「なぜです? アナタは、部外者でしょう? そもそも、これ以上ここに……いえ、この町に残る必要なんて、ないじゃないですか」


「……あのね、私はせんせーに頼まれてこんなクソ田舎まで来ているわけ。それなのに、途中で放り出して帰れるわけないでしょ」


 ケイさんはそう言って、僕の方を見る。


「いいよね? 黒須君」


「え、ええ……」


 なんだかよくわからなかったが、僕は思わず番田さんの方を見てしまった。


 番田さんはまるで信じられないものでも見たかのように、未だにどこか浮ついた感じであった。


「ま、別に私はどうでもいいですよ。爺や。いる?」


「はい。おります」


 意外なことに、灰村はケイさんが僕と一緒に残ることを拒否しなかった。


 そして、灰村が扉に向かってそう呼びかけると、客間を開けて、先ほどの不気味な老人が姿を現した。


「夕食、一人分増やして」


「かしこましました」


 それだけ言って、老人は客間を出て行った。


「さて。それじゃあ、番田先生にはお帰りいただいて……三人で今夜は楽しく過ごしましょうか」


 不気味な笑みを僕とケイさんに浮かべて、灰村はそう言ったのだった。

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