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白神さんの八十神語り  作者: 松戸京
第六神
100/200

一族

「え……ケイさん、何言って……」


 僕は思わずそう尋ね返してしまった。ケイさんは小さくため息をつく。


「……だから、今の灰村の話を聞けば、八十神語りはそもそも灰村家、そして、黒田家しか関わらないような秘術だった……そういうことになるんじゃないの?」


「え……で、でも……父さんは八十神語りのこと知っていたし……」


「それがおかしいの。まず、八十神語りが白神さんに生け贄を捧げる儀式であった以上、普通の村民が知っているわけないでしょ?」


 ケイさんにそう言われて、僕はようやく理解した。


 それは……そうだ。生け贄を捧げる為の儀式ともなれば、それを村人たちが容認するわけがない。


 それに、現在においても八十神語りの存在が白紙町に残っていないことが、一般の人がその存在を知らなかった何よりの証拠じゃないか。


「で、でも……白神神社では例大祭が……そこで、八十神語りをやっていたんじゃないの?」


「……たぶん、カモフラージュでしょ。おそらく、そこで行われていたのは、仮初の八十神語り……いや、そもそも八十神語りという名前さえ、出していなかったのかもしれない。だけど、アンタのお父さんのお婆さんとやらはそれを知っていた……それがどういうことか、わかるでしょ?」


 わかりたくはなかったが……僕は理解した。


 そして、思わず言葉に出してしまった。


「……僕の家も……八十神語りに関係していたってこと?」


 僕がそう言うと、可哀想なものを見るような目で、ケイさんは僕を見た。


 ……いやいや。さすがにあり得ない。


 だって、父さんはそんなこと、一言も言っていなかったし……


 でも……父さんも知らないだけなのかもしれない。父さんのお婆さん……つまり、僕の曾祖母は一体何者だったのか。


「……つまり……僕も白神神社の関係者なのかな?」


「さぁ……本家と分家……そういう関係性かもしれないけど……それにしてもあまりにも阻害されすぎているし……もっと、別な関係性なのかも」


 ケイさんはいつになく真剣そうな顔でそう言う。僕も何をどう言ったらいいのかわからなかった。


「まぁ……それは黒須君の曾祖母の問題なのか、それとも、黒須君の一族そのものの問題なのか……それはなんとも言えないけどね」


「……ケイさん。言われてみて思ったんですけど……僕、知らないんです。自分のご先祖様や一族がどんな存在だったかなんて……」


「ん? あー。それは当たり前でしょ。むしろ、そんなの知っている方が珍しいし……まぁ、とにかく、せんせーとあの女が帰って来るの待ってるしかない――」


「はい。お待たせしました」


 と、不意に扉を開けて現れたのは……灰村と、浮かない表情の番田さんだった。

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