異変
ウシロガミ様の話が終わると、白神さんは一仕事終えたと言わんばかりに大きく伸びをした。
「終わり……ですか?」
「ああ、どうだった? 怖かったかい?」
「え……いや、まぁ……黒田さんは……黒田さん?」
と、話が終わってから気付いた。
黒田さんは顔面蒼白で、ガタガタと歯を鳴らして震えていた。
「ちょ……黒田さん、大丈夫?」
「……これを……これを狙っていたんですか……アナタは……」
黒田さんは信じられないという顔で白神さんを見る。
白神さんはいつもののんびりとした表情で黒田さんを見る。
「ん? 何がだい?」
「と、とぼけないで下さい! こ、これは……お爺ちゃんが言っていたのとは格が全然違う……私なんかじゃ……ううん、違う。これじゃあ、私が……」
と、そうブツブツと言った後で、黒田さんはいきなり後ろを振り返った。
そして、怯えた様子で周囲を見る。
「く、黒田さん?」
「い、今誰かが……私のことを……」
「え? だ、誰もいないって……ねぇ、白神さん?」
そういって白神さんを見る。
白神さんはニコニコしながら黒田さんを見ていた。
「どうやらそっちの子にとっては随分と怖い話だったみたいだね。とりあえず、今日はお終いだ。次の神様の話は10日後……黒須君。そっちの子もちゃんと連れてきてね」
「あ……はい」
そういって僕は黒田さんを見る。
黒田さんはその話の間も、落ち着かない様子で周囲をキョロキョロと見回していたのだった。