泥棒、駄目、絶対
じりじりと紫外線が降り注ぐ夏、グラウンドに響きわたる部員の掛け声。野球部が夏の大会に向けて追い込みをかけている声だった。しかし野球部ではない俺には関係ない。俺の目的はただひとつ、野球部マネージャーの下着を盗み出すことだ。
彼女の麗しさは尋常ではない。真夏でもあるにも関わらず鳥肌が立ってしまうほどだ。そんな彼女の下着とあらば欲しがらぬ男子はおるまい。しかし、俺はそれを誰かと共有するつもりはない。俺が独り占めしてやるのだ、彼女のフェロモンが染み付いた装備品を。
野球部の所有するプレハブ小屋に近付いてきた。彼女のロッカーもここにあるはずだ。扉に手をかけてみる。しめた、鍵は締まっていない。逸る気持ちを抑えてプレハブ小屋に入ると、そこには信じられないものが転がっていた。部屋の真ん中にある椅子、その上には女性物の下着が転がっているではないか。ピンクの縞々布パンツ。推定Aカップ用のブラジャー。野球部のプレハブ小屋に転がっている女性用下着、これは彼女の私物であるという以外の結論が考えられるだろうか。
俺は震える手でそれらを持ち上げる。これが、これが俺の追い求めていたもの。婦人服売り場にある新品とは訳が違う。それはかつて女性の恥部を包んだ経験のある物品。その付加価値は原価の数倍まで跳ね上がること請け合いだ。顔に近づけてみる。不思議と彼女の香りはしない。洗ったばかりなのだろうか、洗剤の匂いが漂う。少し残念な気もするが贅沢は言うまい。ポケットにしまい、頬を伝う汗を手で拭う。一体どれだけを時間が経ったのだろうか。早くここを離れなければ。
そう思った瞬間、扉が開いた。そこには練習を終えたガチムチの野球部員数人。しまった、何とか言い逃れをして脱出しないと。
「あの、これは、その――」
そこで気付く。ポケットから下着がはみ出していた。あぁ! 何てことだ! これでは言い訳のしようがない。僕が諦めた刹那、
「あ、それ俺の下着」
と彼らのうちの一人が仰った。……は? 俺の下着?
その言葉を皮切りに、部員たちが身に纏うユニフォームを脱ぎ始めた。その下には……女性物の下着が。
「え? え?」
「お前、よく見ると中性的な顔立ちじゃないか?」
「これ着てみろよ」
そう言って部員達が気持ち悪い表情で俺に詰め寄ってくる。やめろ、来るな、俺にそんな趣味は……来るんじゃない!
「アッ―――――――――――――!」
泥棒、駄目、絶対。