警怪夫婦
どうも、ラスタと申します
別サイトで執筆していた作品たちを整理すべく、投稿いたしました
このサイトにはあまり訪れることが出来ないので感想レス等は出来かねますがご容赦ください
ではでは、ラスタワールドを心ゆくまでお楽しみください
僕は刑事生活安全課に所属する警察官、いわゆる刑事だ。
この地方警察署に配属されて以来、数々の事件を解決へと導いてきた。とは言っても、刑事ドラマみたいに殺人事件が多発するわけもなく、大半が盗難事件とかなんだけどね。
それでも僕は一つだけ誇りに思っていることがあった。それは、犯人をただの一度も取り逃がしたことが無いということだ。例え万引き犯だって、署に報告された事件は解決できなかったことは無い。署の人達も僕のことをそれだけで尊敬してくれていた。
そう、ヤツが現れるまでは……。
*
「あなた~、朝よ? 起きて?」
僕は毎朝優しい妻の朝の声で目覚める。起床した僕は寝ぼけながら身支度を整えると、ダイニングの椅子に座る。テーブルの上には既に妻が作ってくれた朝食が並んでいた。メインは僕が昨日食べたいと言った焼き鮭だ。二人一緒に食卓に着き、食べ始めた。二人の間に会話が弾む。妻とは去年結婚したばかりで、今はまだラブラブだ。だから二人の会話は朝食の席だって途絶えることはない。
談笑しているとそろそろ出勤する時間帯となった。名残惜しさを感じながらも妻に行ってきますのキスをして署へと出勤した。
署に着くと、何やら皆が騒がしく署内を動いていた。近くの同僚を捕まえて聞いてみたところ、またヤツから予告状が届いたみたいだと返答された。
怪盗マリアンヌ、それがヤツの名だ。神出鬼没の怪盗で、目撃証言から女性であろうという事以外何も分かっていない謎の人物だ。そして、僕が唯一取り逃がした犯人でもある。
予告によれば夜に町の銀行を襲うみたいだ。僕は今度こそ捕まえようと決意し、警備の配置を聞くため上司の元へと向かった。
*
予告状が届いた日の晩、僕は彼女と対峙していた。相手は言うまでもなく怪盗マリアンヌだ。
「よくこの場所が分かったわね?」
彼女はそう言った。僕は彼女に答えるため口を開く。
「金庫にたどり着くには従業員入口か地下からの入口しかないからね。君ならば従業員入口の方から来ると思ったよ」
彼女は僅かに驚いた表情で僕を見た。
「あら、お見通しというわけね? 根拠は何かしら?」
「地下道は複雑に入り組んでいて確かに逃走にも便利だ。でも君は警察がそこに着目することを予測していたはず。なら警備が手薄であろうと思われる従業員入口を使うだろうと推理したまでさ」
彼女はため息をついて、やれやれという風な格好で両手を挙げた。
「そこまで分かっていたなら警備を増やせば良かったんじゃないかしら?」
「生憎、君を何度も取り逃がしたせいで僕はあまり信用されていないんだ」
「それは残念だったわね」
彼女はそう言った。あの余裕は何なんだ? もう逃げ場は無いはずなのに……。
「ところで、あなたはもう逃げ場が無いなんて考えているんじゃない? だとしたらそれは間違いよ」
何だって? そんなはずはない。この通路は何度もチェックした。抜け道なんて存在しない。一体どうやって逃げるというんだ?
「あなたのたった一つの誤算は、女性の体型の変化を甘く見ていたということよ」
彼女はそう言ったかと思うと背後に走り出し、換気口へと入り込んでしまった。
そんなバカな! 確かにあの換気口の鉄格子は外れていたが、彼女が通れる大きさは無かったはずだ。まさか、いつの間にか痩せていたのか? 僕はまたしても逃してしまったらしい。僕は仕方なく換気口に向かって叫んだ。
「明日は目玉焼きにしてくれ~!」
*
翌朝、妻に起こされた僕は食卓に着いた。今日のメニューは僕の要望通り目玉焼きだ。妻のお腹周りを見ると、確かに以前より痩せているような気がした。
次は絶対捕まえてやる。