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女社長がなにやらヘルメットのようなものを二つ持って帰ってきた。
「ほら、これを使って特訓をするぞ」
「これを使ってって…俺にはヘルメットにしか見えないんですが?」
そういうと驚いた顔をしたが
「ああ、確かに珍しいものだしな。知らなくても不思議ではない」
「それでこれは一体…」
「VR機だ」
「VR機?」
聞きなれない言葉を耳にし首をかしげる。
「まぁ簡単に言えば、これを被れば仮想空間で遊べるってことだ」
「仮想空間?」
だめだ、頭の悪い俺じゃ何を言っているのか理解できない。
「言葉で言っても理解しづらいかもな。とりあえず被れ」
そういわれ、VR機を頭に装着する。
「現実世界と意識が遮断されるからな、その辺で横になっておくといい」
言われたとおり、仰向けになる。
「だ、大丈夫なんですか?」
「当たり前だ。では、起動するぞ。私もあとを追うから向こうについたら動かずに待っておくように」
え、闇咲さんじゃないんですか!?
そう思ったのもつかの間、カチッとヘルメットのスイッチを押されると意識が薄れていった…
☆ ☆ ☆
気が付くと白い空間に俺はいた。さっきまではたしかに事務所にいたはずだ。
「ここが…仮想空間」
手を動かすことができる、歩くこともできる。まるで現実世界のようだ。
「ようこそ、仮想空間へ」
突然後ろから声がしたので驚いた。
「き、木下社長!ここは本当に仮想空間なんですか!?」
「そうだよ。その様子だとVR酔いはそこまでないようだね」
俺はまだ、これは夢なのではという疑いが解けず、自分のほほをつねった。
「いっ…たああああああああぁ!!?」
「何をしているんだ、君は」
「き、木下社長、痛覚がありますよ。やっぱりこれはなにかのトリックでここは現実世界なんじゃ?」
「只野、これから特訓をするといっただろう。痛覚はもちろんONにするに決まっているじゃないか」
「じゃあここが仮想空間だという証拠は!?」
そういうと女社長は何もないはずの空間に向かって指を操作した。
次の瞬間、さっき見た銃器がずらりと目の前に出現した。
「これで信じてもらえたかな?」
「い、いったいどこから…」
「もう一度言う、ここは仮想空間だ。データが存在すればあらゆることができるまさに夢の空間だ。もっとも今使っているハードでは現実世界でできないことはできないが」
信じざるを得ないのかもしれない。だが、原理がわからない。頭が悪いからしょうがない。
「ちなみにこれは第三次世界大戦の際、実際に日本兵を鍛えるときに使った」
第三次世界大戦…これは俺でも知っている。核兵器の応酬で地球滅亡を予想された最悪の戦争だ。だが結果は日本軍が3日でこの戦争を終結させたのだ。…日本は無傷のままで。戦争に参加した国々はしばらく軍事ができないくらい壊滅したらしい。噂によると超能力とかいう人間を超えた力をもった兵士がいたとかいないとか…
「そういえばなんで木下社長はそんなことを知っているんです?」
「何を隠そう、私も第三次世界大戦参加兵でその生き残りだからな」
頭が痛い。