表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

I killed Cock Robin

春霞によって美しい月はぼんやりと光を放つ。


そんな夜はまるで、小さき王女の――


「今日から私があなたの母です。よろしく、アリス」

「はい、お母様」小さな王女の名はアリス。彼女の母は流行り病で亡くなった。王、つまり彼女の父は新しい妃を迎えた。


アリスが十の誕生日をある日。

「アリス、こちらに来なさい」

「なあに?お母様」

継母は悲しそうな目をしていた。

「あなたに話があります」

「なにかしら?」

「あなたが今年の――川の贄に選ばれました……」その国には大きな川があり、たびたび氾濫が起きた。

そこで人々は川に贄を捧げることにしたのだ。

「……」

「アリス、ごめんなさい」

継母の声は沈んでいた。

「だ、大丈夫よお母様。私はこの国の王女ですもの、平気だわ」

「そう……」

継母は少しだけ微笑んだ。



次の日。アリスの身体は木製の十字架にくくられている。

「お母様、お父様、ありがとう」

「アリス……」

「そろそろ時間です」

声に促かれ、王と妃はアリスから離れる。

木の十字架は錘を付けた状態で川に流された。

ゆっくりゆっくり、アリスは沈んでいく。

視界の隅には女王の姿。その隣には一人の男。

「よくやってくれたわね」

「いえ、これくらいたやすいこと」

「ふふ、私はただ女王の座が欲しかっただけ。あんな王女は邪魔でしかないのよ」

「それで女王、報酬は」

「どうぞ、金貨一袋よね」

「ありがとうございます」

「あんな王女が死んでくれてせいせいしたわ!」

水に沈む直前、アリスの目にうつったのは女王の笑顔。耳に聞こえたのは女王の笑い声。




…………許せない


今までの言葉は全て、偽りだったのだ。




許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!!

アリスの身体を支配するのは真っ赤な憎しみ。

動けない身体がもどかしい。ここで死ぬしかないのか。


「力を貸してあげるわ」

最後に聞こえたのは幻聴か――……




「ん………」

目をあける。アリスは川沿いの草むらに横たわっていた。

「あれ?なぜ私…」

「王女さま、おはよう」

振り向くと、一人の少女がいた。

「あなたは?」

「私? 私はアメジスト」

「なんで…」

「憎いんでしょう?」

「…ええ」

「力を貸してあげるわ」

「でも、どうやって」

アメジストは笑った。「私は魔力の石、魔石よ」

「魔石…」

願いを叶え、魂に宿る石。

言い伝えで聞いたことがある。

「どう?」

「…いいわ、アメジスト」

「決まりね」

言葉と同時に、アメジストの姿は消えて、代わりに紫の光がアリスの身体に吸い込まれていく。

「さ、復讐の舞台を始めましょう」


そうして王女は紫の花を手に入れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ