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清々しい朝日が肌に心地よい温もりを伝え、僕は気分よく目を覚ました。
気分がいいのは、昨晩、ラナンさんに応援してもらったからだろうか。なんとなく、心が軽くなった感じがする。
今日、僕は、鶯に告白する。
決意を胸に目覚めた朝。
もちろん緊張はしている。
だけど、僕と鶯は幼馴染みでずっと一緒にいた特別な存在。それが恋人という特別な存在へと変わるだけなのだ。
特別から特別になる。そう考えれば、変わるわけですらない。
今までどおり。自然なふたりの関係。
明確に言葉で表した場合においてのみ、その関係の呼び名が違うものとなり、ちょっとだけ、お互いのつながりが強くなる。
たったそれだけのこと。
愛の告白。それは一般的には重大なイベントだろう。
でも僕と鶯にとっては、ほんの些細な通過点でしかない。
「好きだよ」「うん、あたしも」
時間にして五秒で終わる、ゲームだったら一枚絵すら用意されない日常風景のひと幕。
「ところで昨日テレビで見たんだけど……」「それより、カブやんがね……」
続けてそんな普段どおりの会話が始まる程度の、簡単なやり取り。
今まで口にしてはいないけど、お互いの気持ちはすでにつながっている。
幼い頃からずっと一緒に育ってきて、これから先もきっと一緒で、なにげなく夫婦になって、なにも変わらないままに幸せな家庭を築いている。
そういった未来しか考えられない。
鶯がなにを考えているのかわからず不安だった記憶もあるけど、そんなの恥ずかしがっているからに決まっている。
だから絶対、大丈夫。
普段の僕からは考えられないほど、自信に満ち満ちている。
それもこれも、ラナンさんのおかげだ。
素早く制服に着替え、部屋を出ようとすると、そのラナンさんから温かな声がかけられた。
「告白……するんですのね?」
「……うん」
「頑張ってください。わたくしは染衣さんの味方です。恋花の陰から応援しておりますわ」
「ありがとう」
僕が笑みを浮かべて応えると、ラナンさんも花のような微笑みを向けてくれた。
そしてそっと、僕の手を取る。
「あ……」
ちゅっ……。
軽く音を立てて、ラナンさんは僕の手の甲にキスをしてくれた。
「勇気の出るおまじないですわ」
「あ……ありがとう……」
一瞬で茹で上がったように顔が熱くなってきたのは、恋花の妖精のおまじないの効果なのか、それとも……。
「そ、それじゃあ、行ってくるね!」
僕はラナンさんの顔をまともに見ることができず、飛び出すように階段を駆け下りた。
朝食の時間、なぜだか真っ赤になっている僕に、お母さんや好野がなにやらいろいろと喋りかけてきているみたいだったけど。
今の僕にはそんな言葉も、まったく届いてはこなかった。