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第11話-2 王都到着

アルスとコーデの番が来る。


「入城目的を」


兵士が顔を上げ――そこで一瞬、完全に動きが止まった。


「……え?」


「やあ」


アルスは穏やかに手を挙げた。


「久しぶりだな」


「ま、まさか……アルス様?」


兵士の声が裏返る。


「他に心当たりがあるなら教えてくれ」


「い、いえ! 失礼しました!」


兵士は慌てて姿勢を正した。


「その節は、本当に……!」


「井戸の件ならもう終わった話だ」


アルスは気にする様子もなく言う。


「ちゃんと水は出てるか?」


「はい! 今も問題なく!」


「それは良かった」


自然な会話だった。

命令でも、恩着せがましくもない。


(……助けた人)


しかも、覚えられている。


「王都勤めになったのか」


「三年前からです」


「長く続いてるな。出世したんじゃないか?」


「いえ、まだまだです」


兵士は恐縮しきりだった。


「こちらの方は?」


視線がコーデに向く。


「数いる弟子のうちの一人だよ。一緒に旅をしているんだ。」


「はじめまして」


「どうも……」


兵士はにこやかに笑った。


「検問をお願いしてもいいですか?アルス様なら本来必要ないんですが、ルールが決まっていて…」


「もちろん。職務に忠実なのはいいことだ」


検問用の魔道具が作動する。


円盤状の金属が空中に浮かび、淡く発光する。

刻まれた術式が回転し、馬車と二人を包み込む。


(……分離解析)


魔力の反応が層ごとに分かれ、可視化される。


契約由来。

個人由来。

外部付与。


(精度が……)


見たことのない魔道具に、コーデの胸が自然と高鳴った。


「これすごいですね」


思わず漏れた声に、兵士が誇らしげに頷いた。


「王都式です。魔力犯罪の抑止には欠かせません」


その言葉にアルスが小さく鼻で笑った。


「多くの人々がさまざまな目的でやってくる王都には必須の魔道具だね」


「……はい。さて、アルス様、コーデ君、通っても大丈夫ですよ!」


検問を抜けて城門をくぐる。

その瞬間、空気が変わった。


(音が違う)


人の声、足音、車輪の軋み。

すべてが過剰にならず、しかし消されてもいない。


魔法によって整理されている。


(……多い。でも、うるさくない)


密度は高い。

それでも流れは澄んでいる。


石畳の下を魔力が川のように流れているのが分かる。

建物の壁に組み込まれた術式が、熱と湿度を調整している。


すべてが一定の秩序の中に収まっている。


(……管理されてる)


魔法が生活の一部になっている。


浮遊する小型運搬具。

壁面に組み込まれた照明契約。

石畳には衝撃を逃がす術式まで刻まれている。


どれも単体なら見たことはある。

だが、この量、この密度、この完成度は別次元だ。


「……すごいですね」


思わず漏れた言葉に、アルスはちらりとこちらを見た。


「何がだ?」


「全部です」


正直な感想だった。


工房の街では、魔法は必要最小限に抑えられていた。

壊れないために、使わない。

溜めないために、流さない。


だが王都は違う。


魔法を恐れていない。


「……すごい」


「最初はみんなそう言う」


アルスは横目で見てくる。


「で、しばらくすると頭が痛くなる」


「……え?」


「情報量が多すぎるんだ。我々みたいなのには特に」


露店通りに入る。


だが、以前訪れた街とは明らかに違う。


売られているのは魔法“そのもの”ではない。

機能。調整。修復。


「靴底が減ってませんか?」


「保温布、ほつれ直しますよ」


「契約はそのまま、流れだけ整えます」


(……直す前提)


壊れることを想定し、修理する文化。

合理的で現実的。


だが、視線を凝らすと――


(……ここ)


古い契約に被せられた補助紋章。

負荷が一点に集中している。


(流れを一本にまとめれば……)


頭の中で勝手に手順が組み上がる。


「コーデ、細部を見過ぎない方がいい」


アルスの声がすぐ隣から落ちた。


「……」


「癖になると厄介だぞ」


口調は軽いが忠告だった。


「王都は魔法整備が進んでいる。だから余計に綻びに目がいくんだ」


(……確かに)


かなりの数の魔法契約が重なっている。

整備されているからこそ、修復点が無数にある。


「慣れないうちは意識的に視線を切った方がいい。じゃないと頭が割れるように痛む。経験者からの助言だよ」


宿に着く頃には、コーデは確かに疲労を感じていた。


静かな宿だった。

防音と温度調整が自然に効いている。


「良い宿だろ」


アルスが言う。


「……落ち着きます」


夕食は宿の食堂でとった。

素朴だが味付けは的確で体に染みる。


「……あの」


コーデが切り出す。


「明日の予定は?」


「王に会う」


「――はい?」


箸が止まった。


「……え?」


「謁見だ」


「そんな……急に、会えるんですか!?」


思わず声が裏返る。


アルスはその反応を見て、面白そうに目を細めた。


「毎回それを言われる」


「だ、だって……王ですよ!?」


「人間だ」


「そういう問題じゃ……!」


肩を震わせながら笑う。


「初めての長旅で疲れたな」


そう言って、湯を注いだ杯を差し出してきた。


「今夜はゆっくり休め。考えるのは明日だ」


コーデは杯を受け取り、ようやく息を吐いた。


王都はすごい。


だが――

それ以上に、これから始まるものの大きさに、胸がざわついていた。

読んでいただいてありがとうございます!


初投稿なので、投稿設定など至らぬところがあるかもしれません…。


ファンタジーファンの一人として、面白い物語を書いていきたいので、ご愛読いただけると嬉しいです!


週に1話は投稿していきたいと思います!

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