表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

第9話-2 旅立ち

数日後の夜。

コーデはアルスの執務室に呼ばれた。


机の上には古い地図と文書が広げられている。


「座ってくれ」


アルスは静かに切り出した。


「まず、謝りたい」


「?」


「他の者たちと比べて、君には直接教える時間をほとんど取れなかった」


コーデは首を振る。


「そんな……」


「だが、今だから話せることもある」


アルスは地図を指す。


「この国――ルミナス王国は契約による魔法“古文書による魔法”が根付いている国だ。この街から馬車で数日の首都エリデアでは、日々新しい魔法契約が生まれ、多くの呪文が開発されている」


指は北へ。


「ヴァルハイト。王国北部の地域だ。慣習も価値観も、首都とは少し違う。ラグの出身もこの一帯だね」


さらに地図の端へ。


「南に行けば、獣人たちの国のガルド=フラ連邦がある」


少し間を置き、また地図をなぞる。


「そして、旧エルディア諸邦。かつて複数の小国が連なっていたが、今は名ばかりの地域だ」


指先が森に囲まれた印へ移動する。


「その近くにあるのが――リュネ=シルヴァリス」


コーデは息を飲んだ。


「エルフの里。実在するのですか」


御伽噺でしか聞いたことがない種族の名前を聞いて、コーデは息をのむ。


「彼らは滅多に人前に姿を見せない。寿命も感覚も我々とは違う。時間の流れそのものを、別のものとして捉えている節がある」


地図に指を置いたまま、言葉を続ける。


「だが、世界の“歪み”に最初に気づくのもいつも彼らだ。土地の記憶、古文書よりも古い何かを彼らは感じ取っている」


コーデは無意識に拳を握っていた。


「……世界の歪み、というのは」


「修復係が扱う“不具合”のもっと根の部分だ」


アルスは視線を上げ、コーデを見る。


「壊れた魔導具や暴走した古文書は結果にすぎない。原因は、世界そのものの綻びにある」


「ここ数年、各地で古文書の反応がおかしい。この街の古文書修復依頼が増えているのも偶然ではない。周期も場所も偏りがある」


そして、小さく息を吐いた。


「本来、私がそれを見て回るべきだった。だが――修復師と名乗るのは今は私だけだ。そして私一人の力には限界がある」


「……“修復師の領域”」


沈黙。


「私はもう少ししたら旅に出ようと思う。歪みの兆しをこの目で確かめるために。ルミナス王国だけではない、国境を跨ぐこともあるだろう」


コーデを見据える。

外で、風が建物を撫でる音がした。


「他の弟子たちに比べて、君には直接教える時間を持てなかった。それをずっと気にしていた。」


アルスは、少しだけ言葉を探すように間を置いた。


「見識を広げるために君もついてこないか」


即答はできなかった。


この街。工房。孤児院。そしてラグが大切にしていた場所。


だが――

ラグの言葉が、ふと胸によみがえる。


「もし離れることになっても…迷うなよ。お前は、お前の道を行けばいい」


コーデは、ゆっくりと息を吸い、吐いた。


「……はい」


自分でも驚くほど静かな声だった。


「行きます。代表と一緒に」


アルスは少しだけ目を細めた。


「ありがとう」


それは代表としてではなく、一人の修復師としての礼に聞こえた。



季節が暖かくなってきた頃。

コーデは、旅支度を整えながら工房を振り返った。


ここが終わるわけではない。だが、コーデ自身はここから先へ進む。


遠くで鐘が鳴る。


交易路の先、知らない街。知らない世界。


新しい物語が始まろうとしていた。

読んでいただいてありがとうございます!


初投稿なので、投稿設定など至らぬところがあるかもしれません…。


ファンタジーファンの一人として、面白い物語を書いていきたいので、ご愛読いただけると嬉しいです!


週に1話は投稿していきたいと思います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ