第6話『義妹、家の中を本格RPGダンジョンにする(レベル99まで上げさせる気か?)』
日曜日の朝。
久しぶりに、今日は平和に過ごせると思っていた俺――篠原悠真は、
甘かった。
「お兄ちゃん、今日のクエストは“自宅ダンジョン踏破”だよ!」
起き抜けに叩き起こされ、そう宣言された。
「……ちょっと待て。ダンジョンて、あのRPGの?」
「うん! 家全体がRPGの世界って最高じゃない?」
「最低だよ」
なのに、義妹・咲良は満面の笑みだった。
◇
リビングには、
【ダンジョン入口】の札。
玄関には、
【セーブポイント】の張り紙。
洗面所には、
【毒の沼地ゾーン】と書かれたバスマット。
そしてキッチンには、
【ボスエリア】――
「やりすぎだろ!!」
「いやぁ、朝から2時間かけて作り込んだからさ!」
……努力の方向性を間違えてる。
◇
「で、俺は何すればいいんだ?」
「まずは、1階から“スライム”討伐してきて!」
「スライム?」
「ほら、そこに落ちてる風船たち!」
部屋の隅には、水色の風船が転がっていた。
――風船かよ!!
「剣(=新聞紙丸めたやつ)で、全部倒してきてね!」
「俺、高校生だぞ!? なんで休日に風船斬ってんだよ!!」
「さあ、冒険の始まりだー!!」
◇
仕方なく風船をひとしきり叩き潰すと、
次は階段ゾーン。
「ここは“落とし穴回避地帯”だから慎重にね!」
……ただのクッション敷き詰めゾーンじゃねえか!!
しかも途中に「トラップ発動!」とか言いながら水鉄砲撃ってくるし。
「やめろ、水しぶきが冷たいんだよ!」
「これぞ臨場感!」
お前の臨場感のために俺が犠牲になってるんだけど。
◇
そしていよいよ、最終ステージ:キッチンのボス戦。
「ここのボス、超強いよ! 準備はいい?」
「……誰がボスなんだ?」
「私だよ!」
「知ってた」
咲良はなぜか鍋のフタを盾に、泡立て器を剣にして構えていた。
「いざ、勝負!!」
「やれやれ……」
結局、兄妹で10分ほど鍋フタバトルを繰り広げ、
母さんに「うるさい! キッチンで暴れない!!」と怒られて終了。
◇
その日の夜。
ようやく布団に倒れ込んだ俺は、天井を見上げて思った。
「俺、レベル上がった気がする……」
現実世界のレベルアップに、なんの意味があるんだろうな……。
――だが、明日も義妹ダンジョンは続く気がしてならない。
(つづく)
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