第2話『お兄ちゃん、朝食前にダンジョン攻略してもらうね♪』
「……朝からこれかよ」
まだ朝の7時。
俺、篠原悠真は眠気と戦いながら、玄関に立っていた。
目の前には、なぜかダンボールで作られた迷路が家の廊下いっぱいに広がっている。
「お兄ちゃん、おはよう! 今日も元気にサバイバルしてる?」
義妹――篠原咲良は、ダイニングテーブルに座ってトーストをかじりながら、リモコン片手に言った。
そのリモコンが、さっきから妙に怪しい。
「まず聞くけど、この迷路を抜けないと朝ごはん食べられない感じ?」
「うん、そう!」
即答かよ。
「今日のテーマは“朝食前の冒険”。
さあ、お兄ちゃん、勇者になってこの家ダンジョンを突破してごらん!」
「いや普通に朝メシ食わせろよ」
「勇者は空腹を乗り越えてこそ勇者なんだよ!」
お前、それっぽいこと言えばいいって思ってないか?
◇
仕方なく、俺は迷路のスタート地点に立つ。
でもよく見ると、このダンボール、
「左:スライムゾーン」「右:トラップゾーン」「直進:???」
と、なにやら手書きで怪しすぎるルート案内がされていた。
「どれ選んでもろくな目に遭わないやつじゃん……」
「時間制限あるから、早く選んで!」
「いやゲームかよ!」
渋々、俺は左のスライムゾーンへ。
すると、天井からスポンジの塊が大量に降ってきた。
「うおっ!? なんだこれ!? 」
「スライムだよ! ちゃんと水を含ませてあるからリアルでしょ!」
「ただの濡れたスポンジじゃねーか!! 冷てえし!!」
義妹の無駄な努力だけは評価したいが、やっぱり家でやることじゃない。
◇
その後も――
・右ルートから巨大風船が転がってきたり(どこで膨らました)
・直進すると大量の紙吹雪が飛んできたり(掃除どうすんだ)
・ときどき、義妹のラジコンカーが突っ込んできたり(なぜ武装してる)
――と、朝から体力を削られまくる俺。
最終地点のダイニングにたどり着いたときには、もはや立っているのがやっとだった。
「やったね、お兄ちゃん! 朝食ゲットおめでとう!」
「もういらねえ……疲れて食欲なくなった……」
「えー、せっかくフレンチトースト作ったのにー」
「あ、フレンチトーストなら食べる」
「現金か!」
こうして、なんとか朝食にありついた俺。
……しかし、ようやく落ち着いたと思ったその時だった。
「ちなみに、今日の放課後は“外出先サバイバル”だからよろしくね!」
「ちょっと待て、お前、家の外でもやる気か!?」
「うん! コンビニでおやつ買いに行くミッション、楽しいよ!」
……俺の平穏な日常、帰ってこない気がしてきた。
(つづく)
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