第1話『義妹、今日も家の中でサバイバル開始』
「あー、今日も疲れた……。さて、家に帰るか」
俺――篠原悠真、高校二年生。
特に秀でた才能もなく、成績も普通、運動神経も普通、顔も普通。
世間で言う“量産型男子高校生”そのものだ。
唯一人と違うとすれば――
家に、超危険人物がいることくらいだろう。
◇
「ただいまー……って、うおあああああっ!!?」
玄関を開けた瞬間、俺の足元が崩れた。
危うく落ちそうになりながらも、ドアノブにしがみついてなんとか体勢を立て直す。
「ちょ、ちょっと待て!? 家の中に落とし穴って、どういうことだよ!!?」
下を見ると、玄関マットの下に仕掛けられた段ボール製の偽床と、その下にはクッション……と、なぜかお菓子の空き箱が敷き詰められていた。
危険なのか安全なのか、全然わからん。
その瞬間、2階から元気な声が響いた。
「お兄ちゃん、生還おめでとう! 今日のステージ1はクリアだね!」
俺の義妹――篠原咲良。
俺より一つ年下の高校一年生。
見た目は小動物系でかわいらしく、学校では「清楚系美少女」と呼ばれてるらしいが、家では完全にトラブルメーカーである。
「お前……また家の中を危険地帯にしたのか?」
「うん! 今日からこの家は、“家庭内サバイバルエリア”だから!」
「なんでだよ」
「夏休み、暇じゃん?」
――それだけかよ。
◇
「はぁ……。とりあえず部屋に戻らせてもらうぞ」
「甘いよ、お兄ちゃん……。まだステージ2が残ってるからね」
ステージ2? と思った瞬間、リビングの扉を開けると――
「――ブシュッ!!」
いきなり謎の白煙が噴き出した。
「ゲホッ!? おい、なんだこれ!? 毒ガスか!?」
「スモークマシン♪」
「趣味で家庭用買うな!!」
視界不良の中、なんとかソファにたどり着くと、今度は床に何かが仕掛けられていて――
「ピピー! 足元トラップ作動! ペナルティ5秒間、動いちゃダメ!」
「……お前、ほんとに何してんの?」
「お兄ちゃんが平和ボケしないように、刺激を提供してあげてるの!」
俺、別に刺激いらないんだけど。
◇
結局、その後も
・キッチンの冷蔵庫からゴムヘビ(しかも冷やしてある)
・お風呂場に潜んでる遠隔操作ロボット掃除機(洗剤入りの水鉄砲装備)
・自室のドアノブにビリビリグッズ(低刺激)
など、義妹渾身の罠が次々と襲いかかり――
俺の平凡な帰宅時間は、完全にサバイバル訓練と化した。
◇
夜。
やっと全ての罠を解除し、布団に倒れ込む俺。
もう、疲労困憊だ。
だが、ふと気配を感じて顔を上げると、そこには懐中電灯片手にベッドの下から覗き込む義妹の顔があった。
「お兄ちゃん、明日の新ステージも期待しててね!」
「…………」
静かに、枕を顔にかぶせた。
今日も安眠は遠い。
――義妹、家の中で何してんだよ、ほんと。
(つづく)
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