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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第9章 ゾンビナイトフィーバー
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第94話 ゾンビの謎に迫る

 今となっては遠い昔のような記憶。

 実際には、たった一年も経っていない過去。


 あの頃私はまだ世の中を知らない子供だった。


 故郷の村で、お母さんから村に伝わる蘇生技術の勉強を。

 街の学校で医学の勉強を。


 退屈とも錯覚する変わり映えのしない平穏な日々。


 その中で、時々お母さんを尋ねに来る異国の女性。

 Dr.アシハラ。


 落ち着いた大人の女性の強さと穏やかさを感じさせるその姿。

 村と街の往復しかしていなかった私にとって、異国という未知の世界から来た神秘性。

 そして、尊敬するお母さんと一緒に、村の中に閉じ込められていた蘇生技術を研究し、世界に広めていこうという志。


 それらに、私は憧れを抱いていた。


 ほんの数回しか会ったことが無い。言葉も殆ど交わしたことが無い。そんな女性に対する、漠然とした憧れ。


 しかし、そんな私の日々は、あの日無惨にも打ち壊された。


 ダンテ・クリストフ


 奴がお母さんを殺し、村をメチャクチャにし、お姉ちゃんは行方不明に。


 お母さんの形見となってしまった、蘇生技術の知識を知るには、今やDr.アシハラに望みを託すしかなくなっていた。


 ◆


「・・・アピリスさん・・・!!!」


 突然目の前に現れたDr.アシハラの姿に私は動けないでいたが、彼女は私に駆け寄り、そして、抱きしめてくれた。

 抱きしめたあと、すぐに私の両肩を持ち、顔を覗き込んでくる。


「生きていたんですね!シェンノさん・・・あなたのお母さんが亡くなったって聞いて、あなたも、そしてお姉さんのパナテアさんも、亡くなったものとばかり・・・!」

「Dr.アシハラ・・・アシハラさん、母に起きた事・・・知ってるんですね!?」

「はい・・・!突然シェンノさんとの連絡が取れなくなって・・・・でも中々簡単に行ける場所じゃないから、私が行ったときには事件からかなり時間が経ってしまっていて・・・。私は村の人たちには秘密でシェンノさんと研究していたので、事件の後話を聞こうとしても怪しがられて殆ど聞けなかったんです。かろうじて分かったのは、シェンノさんが亡くなったことと、あなた達姉妹の姿もなかったこと。だから、私・・・!」


 そこでアシハラさんは言葉を詰まらせた。


「教えてください!一体何があったのか。そして、なぜあの村だけに伝わっていたはずの秘術を受けた人が、日本に・・・この福岡に現れているのかを・・・!!」

「それは・・・」


 私は少し言いよどんだ。が・・・これは大事な話だ。避けては通れない。それに、のんびりしている時間は無いのだ。早くアシハラさんと可能な限り情報を共有しないと。

 そして、もしアシハラさんが細胞異常再生症の完全なる治療方法を知っていたら、全てが解決するはずなのだ・・・!


「全ては、ダンテ・クリストフという男が起こした事なんです・・・!」

「ダンテ・クリストフ・・・。ニニカさんも言っていた、あの」

「はい、でも、あの日、何が起きたか私も詳しくは覚えていないんです・・・。あの前後の記憶が曖昧で・・・。覚えているのは、ダンテ・クリストフと、その傍に・・・血まみれで倒れている母の姿・・・・!!」

「・・・・!」


 そこまで聞いて、アシハラさんは慌てて私の手を取った。


「ご・・・ごめんなさい・・・!そんな、そんな辛い場面を思い出させてしまって・・・!」

「いえ、いいんです・・・・。大事な事ですから。そして、奴は言ったんです。『この村の秘術はいただいたよ』と・・・」


 アシハラさん、そして、周りで聞いているニニカさんや皆も息を飲んでいるのが分かる。


「でも、私が覚えているのは本当にそれくらいなんです。なぜダンテ・クリストフのような得体の知れない男が村の中に、しかも母の秘密の研究室にいたのか。その後何が起きたのか、覚えていなくて・・・。気づいた時には数日経っていました。村の人に看病されて・・・。ショックで気を失ったんだろうと言われました。そして、母の研究データは全て奪われ失われていて、姉のパナテアも行方不明。村の人も何も知らないと・・・」

「そんな事が・・・・」


 アシハラさんは沈痛な面持ちで私の話を聞いている。


「でもダンテ・クリストフは、秘術の全てを知ってはいなかった。中途半端な知識しか身につけられなかったようです。でも奴は、その知識を悪用し、沢山の犠牲者を生み出した・・・。まるで人体実験をする可能様に・・・」

「秘術を途中で止めた時に起きる症状ですよね。ここの人達みたいに・・・」

「やっぱり、そこまで知っているんですね!秘術の全てを知っていたら、彼らを完全に治療して元に戻すことが出来るんです!でも私は母から秘術を教わっている途中でした。ダンテのように、中途半端な知識しかないんです。資料になる物は全てダンテに奪われていました。村にも秘術を継ぐ者はもういません」

「そうだったんですね・・・」

「だから・・・だから、アシハラさんが頼りなんです!」

「わ、私ですか・・・!?」

「母と一緒に秘術を研究していたDr.アシハラ、あなたの知識が最後の希望なんです!教えてください!秘術のことを、あなたが知っている全ての事を!そしたら、そしたら、ダンテに細胞異常再生症にされた全ての被害者たちを、元の体に戻してあげられるんです!!」

「わたしはゾンビのままでいいんですけど」

「ニニカさんは黙ってて!ややこしいから!」


 余計なところで口を挟むニニカさんを一蹴し、私はアシハラさんの両肩を掴みその目を見つめる。

 アシハラさんは少し戸惑った、が、すぐにこちらの意を汲んでくれたようだ。


「アピリスさん・・・。あなたの言いたい事、分かりました。秘術を最後まで完了できれば、なるほど、ダンテ・クリストフがいくら被害者を生み出しても、《《治療》》していくことが出来るんですね」

「・・・っ!はい、そうです!アシハラさん、秘術の事を、母から全て聞いているんですか!?」


 だがアシハラさんはゆっくりと首を振る。


「いいえ・・・私も全てを知っているわけではありません。恐らく、あなたやダンテ・クリストフが持つのと同じ程度の、中途半端な段階までしか・・・」


 そんな・・・。最後の希望の彼女でも、全ては知らないなんて・・・。私は眩暈を覚えそうになった、だが、彼女の目はまだ光を失っていないことに気づいた。


「でも、恐らくあなたが知らないであろうことは、教えられます。これが何かの助けになれば・・・・」

「・・・!それは一体!?」

「この秘術がなぜ・・・死を迎えた人すらも蘇らせることが出来るのか。その超常の力の源を・・・!!」

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