第90話 骸神家三姉妹
「我ら!」
「骸神家三姉妹!」
「当主代理の力、お見せするわ!!」
松子、竹子、梅子と呼ばれた三人の女性はそう声を合わせると、一緒に連れて来ていた部下と思わしき村人からそれぞれ武器を受け取った。
「おいおい、刀とドス、それも両方真剣かよ。そしてもう一つは・・・ゲッ」
三人目が受け取った武器を見てジョージはうめき声を上げる。
「鎖つき鉄球!?」
トゲトゲがついた黒光りする鉄の球・・・それも、スイカほどの大きさもある・・・から鎖が伸びて、その先に取っ手がついている。随分物騒な武器だ。いや、刀とドスとかいう短刀も、刃物だから物騒なんだけど。
「和服のおかみさんに日本刀、ドス、それに鎖付き鉄球・・・!これはまさか・・・!」
ジョージが言葉を言い終わる前に、真ん中にいた、松子と呼ばれた女性が声を上げる。
「やっちまいなー!!!」
その号令をきっかけに、松子、竹子、梅子の三人、そして周囲にいた他の村人たちも一気に私たちの方に攻めよってきた!
「キルビルじゃねーか!!」
ジョージが叫び声を上げる。確かそんな名前の映画があった気がする。が、状況はそれどころではない。
梅子という気弱そうな女性が、鎖を頭上で振り回すと、スイカ大の鉄球が凄い勢いで円弧を描き回転する。触れればもちろんタダではすまない。その嵐のような勢いに私たちがたじろいでいると、その隙をついて梅子という女性は鎖を巧みに操り、鉄球を私たち目掛けて投げつけてきた!
「「「危ない!!」」」
思わず三者同時に叫び、それぞれに跳び避ける。だが荒れ狂う鉄球を相手に、冷静に足並み揃えて逃げる事は出来なかった。つまり、三人バラバラの方向に逃げてしまったのだ。
「今よ!三人を分断させなさい!!」
松子と呼ばれた日本刀を持った女性が叫ぶと、村人たちが言われたとおりに私たちを引きはがすように迫って来る。
「ジョージ!メアリさん!!」
「アピリス先生!すぐにそっちに・・・ああ、もう!!」
メアリさんが刀を振り回して周囲の村人を攻撃するが、思うようにいかない。糸を使って空中に飛び上がれば・・・と思ったが、都会と違って田舎の村は上空に糸を変える場所が少ないようだ。せめて森の中なら話は違っただろうが、今いる場所は周囲が田んぼや畑、小さな作業小屋くらいしかない。しかもあちこち火が回っている。確かメアリさんの糸は火に弱かったはず。
「センセイ!メアリちゃん!この場はバラバラに逃げるしかない!敵を倒しながら、それぞれあっちを目指すんだ!!」
ジョージが珍しく大声を出して指示を出してくれる。彼が指し示す先は、村の奥、未知の先には木々が生い茂っている。だが、その向こう側にも、燃える炎の明かりが見えた。
「よく分からんが、村とは別の場所にも何かあるらしいし、どうもゾンビ達はあっちの方から来ているようだ!となると、ニニカちゃんやゾン神様とやらはあっちにいる可能性が高い!!」
「おのれ!そうはさせるか!!」
ジョージの推理はそれだけでももっともらしかったが、松子という女性が強烈な抵抗意志を見せたことで、信憑性がさらに高まった。
「分かりました!二人とも、安全第一ですからね!」
「センセイこそ!!」
「アピリス先生、すぐ合流しますからね!!」
そう声を掛け合って、私たちは敵の手段から逃げ出す。出来るだけお互いの姿を認めながら逃げたかったが、夜の闇と炎の光のコントラストに視線は邪魔され、早々に見失ってしまった。
とにかく敵に掴まってしまえば終わりだ。今はそれぞれ身の安全を最優先として、村の奥の炎の明かりを目指して駆け出す!
「グォォオオオオオ」
前方に立ちふさがる人影・・・、これは私に敵意を持っていないようだが、意識混濁症状の患者だ。当てもなく彷徨っているらしい。私は素早くニードルガンを操作し、走りながら相手の心臓目掛けて針を撃つ。それが命中した患者はその場に崩れ落ち、私はその脇を通り過ぎてなおも進む。
周囲には他にも患者が何人か目に留まる。意識混濁で彷徨っている人もいれば、明確にこちらに敵意を向けて向かってくる人もいる。本来であれば全員治療してあげたい。だが、全員は相手をしていられないのだ。後で必ず治療します。そう心の中でつぶやき、かけ続ける。
(ジョージ、メアリさん、それにニニカさん、どうか無事で・・・!そしてDr.アシハラ・・・!もし会えたら、必ずこの細胞異常再生症を完治する方法を導き出さないと・・・!)
―――だが、そんな私の目の前に突如一つの人影が立ちふさがった。
「追い付いたわ!この村で私から逃げられると思わない事ね!」
それは、先ほど振り切った三姉妹のうちの一人、松子と呼ばれたリーダー格の女性だ。手にはさっきと同様日本刀を持っている。他の二人の姿を咄嗟に探すが、周囲にはいなかった。追い付いたのは彼女一人だけか・・・!?
「銀のアピリス・・・。アンタの仲間のゾンビならまだしも、ゾンビでもないただの人間であるアンタくらい、捕まえることは訳ないのよ・・・」
そう言って松子は日本刀を構え、私に相対した。
◆
その頃・・・ジョージとメアリはそれぞれ別々の場所で、竹子、梅子と対峙していた。
「やれやれ、着物でドス構えるなんて、いよいよヤクザ映画だな」
「誰がヤクザよ、失礼ねぇ!ウチは先祖代々由緒正しき骸神家よ!」
「おのれ、悪の組織の女幹部目!鉄球なんて凶器には負けませんよ!」
「あなたも刀持ってるじゃない・・・!お願いだから、抵抗なんてしないで今すぐ降参してゾン神様に忠誠を誓ってください・・・!」
分断されたアピリス、ジョージ、メアリの三人は、それぞれの場所で戦いが始まるのだった。




