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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第8章 ゾン神家の一族
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第87話 Dr.アシハラ 葦原ナツカ

「こんなことになるなんて・・・ウチら、一体どうなってしまうと~・・・」


 ゾン神教の合宿施設の一室に閉じ込められたわたし達。そこで、あーちゃんはへたり込んで弱音を吐いてしまった。


「すぐにゾンビにするって言ってましたからね」

「ゾンビにするって、どうやって?」

「私の時は、グサーって体を貫かれて気を失って、気づいた時にはゾンビになってましたね」

「いや~!!」


 わたしの言葉にあーちゃんは再び頭を抱え込んでしまった。ヤバ、つい正直に喋ってしまったが、刺激が強すぎたか。あーちゃんは見た目ギャルだがそんなに肝は据わってないみたいだ。いや、ギャルとか関係ないか?

 あーちゃんと比べるとナツさんはだいぶ落ち着いているように見える。


「マズイですね・・・。松子さんの言う通り、すぐにでも私達に手をかけるつもりのはずです・・・。そうでなければ、全員同じ部屋で、荷物も取り上げないなんてことしないでしょうし・・・」

「どうすっとよ〜。もうおしまい!?せめて最後まで映像を取り続けて、あとから来た人に『映像はここで終わっている・・・』って言ってもらうしか無い運命!?」

「安心してください!あなた達はボクが必ず守ります!」


 レイ刑事は体が痛むだろうにそれを感じさせないようにピシッと立った。でも・・・


「さっきのおじいちゃんゾンビに一発でやられてたじゃん〜。無理だよ〜」


 あーちゃんに泣かれてしまった。私はレイ刑事の肩をポンと叩く。


「気持ちは立派だけどやっぱり無理ですよ。この村ゾンビだらけなんでしょ?単純に数で負けちゃうし・・・。アピリス先生達が助けに来てくれないとどうしょもなくない?」

「そうは言っても、電波も届かないんじゃ助けも呼べないだろ!?」


 それはそう。うーん、どうしたら・・・。わたしとレイ刑事が頭を悩ませていると、ナツさんが遠慮がちに近づいてきた。


「あの〜・・・さっきなんて言いました?アピリスって・・・?」

「ええ、はい、アピリス先生。私のゾンビ病を治療してくれた人なんですよ!そしてゾンビ専門の病院であるアピリス診療所を・・・・」


 わたしがアピリス先生の事を説明していると、ナツさんはみるみる驚き顔になって、話し終わりを待たずに私に顔を近づけてきた。


「アピリス!本当に!?アピリス=シエノンさん!?」

「え!?え!?」


 突然の事に、今度はわたしは理解が追い付かなくなる。ナツさんはアピリス先生の事を知ってる!?シエノンってなんだ?苗字かな?わたしも知らないのに。


「アピリス先生と知り合いなんですか!?」

「やっぱりアピリスさんと知り合いなの!?本当に!?」

「本当ですよ、ほら。わたしは今、アピリス先生が開いているゾンビ専門の診療所で一緒に働いているんです」


 わたしはスマホの中の、アピリス先生とわたしで撮った写真を見せる。それを見てナツさんは改めて驚き目を見開いていた。


「本当だ・・・!アピリスさん!日本にいたの・・・!?」

「あの・・・ナツさん、アピリス先生と一体どういう知り合いで・・・?」


 わたし達のやり取りを今部屋の中にいるあーちゃんとレイ刑事も何だなんだと注目している。特にレイ刑事はわたしと同じ気持ちだろう。ナツさんがアピリス先生を知っているのは一体なぜ?もしかして、わたしが知らないだけで、ゾンビを治療してもらった患者さん?


 ナツさんは少し考え込んだ後、意を決したようにしゃべりだした。


「さっきの写真・・・、アピリスさんの仲間だっていうのは、本当みたいですね・・・。それなら私も正体を明かします・・・」


 そう言うとナツさんは、ずっとつけていた帽子とメガネを外した。


「私は・・・、アピリスさんのお母さんと一緒に、彼女達の村に伝わる特殊な医療術を研究していたんです。その時にアピリスさんに会ったこともあるんです!」

「え・・・!」


 全く予想外の事に、わたしは一瞬言葉を詰まらせた。


「もしかして、あなたはDr.アシハラ・・・!」

「え・・・知っているんですか!?そう、私は、アシハラ。葦原ナツカです」


 アピリス先生がずっと探していたDr.アシハラ。ナツさんが、その人だったなんて・・・!


 ◆


 骸城村に行ったまま連絡が取れなくなったニニカさんとDr.アシハラを探すため、私、アピリスは、ジョージ、メアリさんを乗せた車を全力で走らせ続けていた。骸城村はかなり山奥にある。最速で来たつもりだが、すでに日は落ち、夜になっていた。周囲を木々に囲まれた細い山道を突き進んでいると・・・。


「センセイ!危ない!」


 ジョージの声と、私がブレーキを踏んだのは殆ど同時だった。車のヘッドライトに照らされていたのは、車の目の前に倒れこんでいる木々。完全に道を塞いでいる。


「山崩れ・・・!?こんな時に・・・!」


 これ以上は車で進めない。私たちはすぐさま車を降りた。


「こっから先は走っていくしかないみたいね」


 メアリさんはそう言うと同時に胸元の薬袋を外し、細胞異常再生症の発症状態になる。正直あまり好ましい事ではないのだが、今はこの病気によって強化された身体能力に頼るしかないだろう。ジョージも同じように変身し、私の傍に近寄る。ジョージが私を抱えて、メアリさんといっしょに、道なき道をその足で進んでいく。それを実行に起こそうとした時・・・。


「アピリス先生、あれ・・・!」


 メアリさんが、倒木で阻まれた道の先の方を指さす。

 夜の中の山林。恐ろしいほど暗いその道の先に、光が見える。


 いや、光というより、あれは・・・!


「燃えている・・・!?」


 骸城村があるはずの方角から、オレンジ色に揺らめく炎の色が漏れ出ていた。

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