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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第8章 ゾン神家の一族
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第86話 骸神家の一族

「これが新興宗教のセミナーってやつかぁ。初めて見た」


 わたしはこの村に来る前、メアリさんと話した、色んな怪しい勧誘のチラシの事を思い出していた。言葉巧みに人を集めて、合宿とかして洗脳するという話だったが、この施設でやっていることもその合宿か。メアリさんんはこういうのに近づいたらダメだと言っていたが、わたしにその気が無くても近づいてしまった。


「日常を過ごしていたはずなのにいつの間にか取り込まれている・・・これが宗教勧誘の恐ろしさ・・・!?」

「いや、山奥の村で首なし殺人事件に巻き込まれていたのは日常でも何でもないやろ~」


 あーちゃんが私の言葉に何故かツッコんでくる。それはそれとして、わたし達は今全員まとめて少し広めの個室のようなところに連れて来られている。部屋の中は、建物全体の様子と変わらず、壁も天井も真っ白。部屋に入ると靴を脱ぐスペースがあり、その先は畳が敷き詰められている。その周囲には押し入れがある。この部屋に入る時、松子さんは「共同生活室」と呼んでいた。信者の人たちが何人かで揃って寝泊まりする場所らしい。ちなみに全員というのは、わたし、あーちゃん、ナツさん、レイ刑事、珠代さんだ。松子さん達は珠代さんだけは部屋から連れ出そうとしたが、珠代さん本人がそれを拒否した。


「この人たちを閉じ込めるなら、私もここに残る!」


 そう言って松子さん達を困らせていると・・・。部屋のドアが勢いよく開かれた。そこから現れたのはお爺ちゃんだった。立派な和服に白髪、それと白い立派な髭。お爺ちゃんと言っても体格も良く背筋がシャンと立って物凄い目力と威圧感だ。お爺ちゃんは部屋に入るなり、大きな声で叫んだ。


「儂が骸神家当主、骸神佐兵衛である!!!」


 その声に、部屋の中の全員が萎縮してしまった・・・。それは、その声の勢いだけが原因ではなく、そのお爺ちゃんがゾンビだったからかも知れない。元気いっぱいのお爺ちゃんゾンビ。


 と思ったら、萎縮していない人が一人いた。レイ刑事だ。


「自分は天神警察署の刑事、小南レイです!このような扱いは許されません!今すぐこの子たちを解放して・・・・」

「ええい、何じゃこの若造は、うるさか!!」

「うわぁ!」


 責任者とみて果敢に立ち向かったレイ刑事だけど、あっさりと突き飛ばされて部屋の端っこに激突してしまった。大丈夫かな?あ、大丈夫そうだ。痛がってるけど、立ち上がっている。そんなレイ刑事を気に留めることも無く、骸神佐兵衛は相変わらず大きな声で、珠代さんに向かって声を張り上げた。


「珠代!また松子たちの邪魔をしとったとか!?いい加減大人しくせんか!」

「うるさいなぁ!」


 珠代さんは負けじと大声で対抗する。


「母子家庭で育っていたのにいきなり隠し子だって言われてこんな山奥の村に連れて来られて、こんな日本人形みたいな格好させられて、後継者争いに巻き込まれたと思ったらいつの間にかゾンビにされて村を上げての信者勧誘、という名のゾンビ勧誘!こんなのやってられるわけないじゃない!」

「それは仕方ないのじゃ!確かに儂は最初、隠し子であるお前を後継者争いのために呼び寄せることで、松子竹子梅子が疑心暗鬼になり、凄惨な遺産争いが起きることを期待していた!儂は小説や映画張りに人間が欲望でドロドロするのを見るのが好きだったんじゃ!目の前で骨肉の殺人事件を見てみたかったんじゃ!」


 おじいちゃんサイコパスすぎる。


「じゃが、あのお方に会って、ゾンビにしてもらって、儂は目覚めた!ゾンビを大量に生み出す、その目的のために、この村を提供し、ゾン神教の拠点としたのだ!」

「最初から最後まで全部おかしいだろ!!」


 珠代さんは相当腹に据えかねたのか、地団駄踏みながら怒りの声を上げたが、骸神佐兵衛は気にしていないようで天を仰いで拝みながら「ゾン神様・・・」などと呟いている。


 しかしまあ、そのおかげで大体の経緯が分かった。


「じゃあ珠代さんは、わたし達がゾンビにされないように松子さん達の事を邪魔してたんですね」

「そうよ!あと、あわよくば死んでくれないかと!まあゾンビだから死なないことは分かってるけど!あわよくば!」

「で・・・でも・・・骸神佐兵衛さんは、とても頑固そうなのに何でそんなゾン神教に入れ込んじゃったんですか・・・?後継者を決めなくてよかったんですか・・・?」


 ナツさんが恐る恐る疑問を口にする。


「何じゃこの小娘、頭が悪いのう!ゾンビになって死ぬ心配がなくなったんだから、後継者なんて決めなくていいじゃろ!それよりもゾンビにしてくれた恩をあのお方に返したいのじゃ!」

「な・・・なるほど・・・?」


 ナツさんは微妙に納得したようなしてないような。まあわたしも同じような感想だけど。一応一理ある・・・のか?


「とにかく珠代!お前が何をしてもどうにもならん!いい加減抵抗するのはやめて、ゾン神教の一員としてゾンビ信者を増やすのじゃ!行くぞ!」


 そう言って骸神佐兵衛は珠代さんを引っ張っていった。珠代さんは「ちくしょー!覚えてろー!」と叫んでいたが、抵抗虚しく、だ。


 それと一緒に、松子さん達も部屋を出て行った。


「とりあえずアンタ達はこの部屋にいなさい!あとでまとめてゾンビにしてあげるから!」


 そう言って、部屋の鍵を外からかけてしまった。部屋にはそのドア以外、外に繋がるような窓などはない。つまり、閉じ込められてしまったわけだ。


 ◆


 施設の一室にて、骸神松子は、ある人物の前で跪いていた。先ほどの集会でモニターに映っていた、ゾン神様、その人である。事の顛末を報告に来たのだ。


「以上の通り、村井ニニカ、他数名は施設の中に閉じ込めています」

「やはり村井ニニカで間違いないのか・・・?」

「はい、それは間違いないかと」

「そうか。それはいい報せだ。だが、それなら村井ニニカを探して、恐らく、遠くないうちに『銀のアピリス』がここにやって来るはずだ・・・。その前に、一緒に捕まえた他の奴らのゾンビ化は速やかに行う必要がある・・・・」

「は!すぐに取り掛かります!!」


 そう言って松子は、ゾン神様がいる部屋から立ち去っていった。

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