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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第8章 ゾン神家の一族
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第82話 偶然居合わせた刑事

 池に突き刺さっていたのは死体だった。それも女性、首なしの。


 最初に発見して腰を抜かしていた男性が、竹子さんの命令により気を取り直し、池に入って岸まで引き上げたのだが、それが首無し死体だと分かった時には男性はもう一度悲鳴を上げていた。


 わたしも死体を見に行こうとしたのだが、竹子さんに「若い子がこんなの見るんじゃありません!」と言われて、見に行くタイミングを失ってしまった。


「ニニカちゃん、よく死体を見に行こうなんて気軽に言ったね。怖くなかと・・・・?」


 あーちゃんが青ざめた顔で私に話しかけてくる。青ざめているのはナツさんも一緒だ。二人とも遠巻きに死体を見ている。


「え、むしろ二人とも死体見なくていいんですか?探偵なんですよね?殺人事件の謎を解くのが仕事でしょ?」

「いや、探偵って言っても、普通は殺人事件の調査なんてしないからね。ぶっちゃけ言えば、ウチは配信者ってだけだし・・・」


 一応スマホで撮影はしているようだが、大分及び腰だ。


「さっきは『山奥に閉じ込められた殺人事件!』とか盛り上がってたじゃないですか」

「あの時はまだ死体見てなかったけん・・・」

「私も・・・オカルト系の探偵とか自己紹介しましたが、殺人とかはちょっと・・・」

「えー!探偵が解決してくれないと、この事件どうするんですか!?」

「そこは警察が頑張るでしょ・・・」


 わたし達がそんな事を言っている間に、竹子さんは死体の首があった辺りを隠すように上着をかけ、そして男性に人を呼ばせに行かせていたようだ。屋敷の中からもう一人男性が出てきて、死体を屋敷に運び込もうとし始めた。


「え、運んじゃうんですか?」

「こんな所に置いていられないわよ。人目にもつくし。村のみんなは山崩れで大変だから、この事は一旦皆には言わないで、私が処理するわ」

「え!殺人事件でしょ!?警察呼ばないと!!」

「この村の駐在さんにはちゃんと来てもらいます!」


 そう言って竹子さんは男性二人に命令して、死体を屋敷の中に運び込ませてしまった。村人をパニックにさせたくないということだろうか。


「でも殺人事件ですよ?大体、死んでたのは誰なんですか?服装からすると梅子さんなんじゃ・・・?薄茶色の着物・・・」

「縁起でもない事言わないで!そんなのまだ分からないじゃない!これから私が調べるから、部外者は余計な詮索しないで!」

「いや、でも・・・」


 そこに、遠くの道の方から現れた男性が声をかけてきた。


「竹子様、あの、こっちで人が倒れてるって聞いて・・・」

「駐在さん!」


 服装からして警察官のようだ。彼はもう一人、別の男性を横に引き連れていた。その人物を見て、先に驚きの声を上げたのはわたしだった。


小南しょうなんレイ刑事!?」


 ◆


 小南レイさんは、新人の若い刑事さんだ。以前、ゾンビが街の人を誘拐した事件に巻き込まれていたのを、アピリス先生とわたし達が助けてあげた。その事件でゾンビの事を知って以来、わたし達と協力関係にある。ちなみに彼はゾンビじゃない。


「ニニカちゃん、何でこんな所に!?」

「レイ刑事こそ、何でこんな山奥の村に?」

「ボクはゾンビの噂を調べに来たんだよ。それが仕事だからね!」

「わたしもゾンビの事調べに来たんです。それが仕事ですからね!」

「あの、お二人はお知り合いで?レイさんは刑事さんなんですか・・・・?」


 竹子さんが物凄く怪しんでいる顔でレイ刑事の方に尋ねる。それに対してレイ刑事は警察手帳を見せてハキハキと答えた。


「はい!天神署の刑事です!先ほどはゾンビ明太子ありがとうございます!」

「さっきは刑事だなんて言ってなかったですけど・・・」

「はい!秘密捜査ってヤツですね!」


 どうやらレイ刑事はわたし達よりも先にこの屋敷に来て、同じようにおもてなしをされていたらしい。ただその時は刑事であることは隠していたようだ。隣にいた駐在さんが困った顔で竹子さんに話かける。


「それでその、この刑事さんが、事件があったのなら協力すると言って聞かなくて、ここまで来たんです・・・」

「ああ・・・」


 竹子さんはようやく事情が呑み込めたようだが、かなり困惑した顔をしている気がする。


「それで、人が倒れているって聞きましたが、その人はどこに!?」

「そう、大変なんですよ、レイ刑事。殺人事件、殺人事件ですよ!首なし死体の!」

「なんだって!?それは本当かい!?」


 ここまで言って自分で気づいたのだが、レイ刑事はやる気のあるいい人ではあるんだけど、どうもあまり仕事の方は出来ないらしい。山奥の村で起きた殺人事件、偶然居合わせた刑事は、いまいち頼りにならない、となると、やっぱり探偵が頑張るしかない状況ではないか?あーちゃんとナツさんがやってくれないなら、私が探偵として頑張るしかない・・・?


 そんな事を考えていたが、レイ刑事は一応ちゃんと仕事をしようとしていた。


「竹子さん、被害者は誰なんですか!?」

「いえ、首が無いので誰かは分からなくて・・・」

「じゃあ死体を検分しましょう!死体の場所に連れて行ってください!!」

「いや、でも、あの・・・」

「あ、そうだ!レイ刑事!殺人事件はこの一件だけじゃないんですよ!この前にもう一人、首なし死体を見てるんです、わたしたち!!」


 話がどんどん進んでしまう前に、わたしは重要な情報をレイ刑事に告げた。池の死体よりも前に、わたしとナツさんが見た、火事の中の首なし死体の件だ。そっちも調べてもらわないと!


「なに!?連続殺人事件!?」

「ちょっと待って!そんな話、私も聞いてないわよ!?」


 レイさんだけでなく、竹子さんも声を上げて私に詰め寄ってきた。


「だからー!さっき屋敷で火事騒ぎがあったでしょ?その火事があった部屋の中に、紫色の着物の女性の首なし死体があったんですよ!!でも火を消した後に死体が消えてたんです!火を消した男の人たちは信じてくれなかったけど、わたしとナツさん二人で見たんだから間違いないです!」


 わたしの言葉に、ナツさんもコクコクと首を縦に振って同意してくれている。


「そんな・・・。ニニカちゃんの事は信じるけど、死体が消えるなんて・・・」


 レイ刑事も半信半疑という感じだ。だが、意外な事に竹子さんは物凄く深刻そうな顔をしていた。


「本当なの!?炎の中で、首を斬られていたって・・・!?」

「はい!間違いありません!!」


 その言葉を聞いた竹子さんは、ゴクリと唾を飲み込んで、絞り出すように言葉を紡いだ。


「まさか・・・骸神様の祟り・・・!?」

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