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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第8章 ゾン神家の一族
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第79話 第一村人発見

 木々に囲まれた道を抜けると一気に視界が開け、そこには目的地である骸城むくろぎ村が広がっていた。


 山の奥の村なので、勝手に凄く狭い江戸時代みたいな村を想像していたが、実際にはそこまでではなかった。村全体も木々に囲まれていて外とは隔絶されている感はあるが、結構広い。と言っても殆どが畑。その中に家が点在している。コンビニは無いけど商店らしいものはある。信号は無い。木々の向こうにも何かあるらしく、村全体が一望できるという訳でもない。一番目立つのは今いるところから村の反対側、少し坂の上になっている所にある、とても大きくて立派な日本家屋。その家のそばには大きな池もある。


 まあつまり・・・。


「結構普通の村やったね~」


 あーちゃんがスマホで動画を撮りながらスタスタと歩いて入っていく。


「あ、あの・・・あんまり撮影しながら村に入っていくのはやめた方が・・・」


 ナツさんが気まずそうにあーちゃんに注意する。


「えー、なんで?」

「だって・・・こういう村で知らない人が撮影してたら嫌がられますよ・・・」

「大丈夫だよ~。そんなに人いないし」


 確かにそんなに人はいない。そんなには。ちょっとはいる。


 少し離れた場所に、畑の中で働いている人とか、道を歩いている人とか、何人かこちらの方をじっと見ている。


「こういうパターンだと、排他的な村人たちから警戒されて冷たくされるのが定番ですよね!!」

「ニニカさんは、何でちょっとワクワクしてるんですか・・・」

「あはは、そういうのも面白いよね~」


 そんな話をしていると、わき道からヌッと人影が出てきた。ちょっとビックリしたが、その正体は中年のおじさんだった。麦わら帽子を被り、農作業中です、という恰好をしていた。


「どうしたとね、お嬢ちゃん達。こんな村に何の用ね?ピクニックにでも来たと?」


 人のよさそうな笑顔で話しかけてきた。やっぱり目立つよね。観光地って訳でもなさそうだし。


「あ!第一村人はっけ~ん!おじさん、ちょっとインタビューしていい?」

「なんね、撮影しとると?それはちょっと恥ずかしかね」

「大丈夫大丈夫!モザイクかけるから!ねえねえ、最近この村でなんか、変な噂とか事件とかない?」


 おお!あーちゃんが怒涛の勢いで質問を始めた!いきなり撮影された怒る人もいそうだけど、全く物怖じしないのは凄い。ナツさんは凄くオロオロしてるけど、まあいいか。


 こういうパターンだと、最初は友好的だった村人が、村の事を詮索されると突然態度が冷たくなり・・・みたいなのが多いけど・・・。


「おお、アンタ達もゾンビの噂を聞いてやってきたとね?」

「え!?」

「ゾンビ!?ゾンビの事知ってるの!?おじさん!」


 思いがけず突然出てきた「ゾンビ」の言葉にわたしは思わず体を乗り出す。


「あはは、やっぱり!最近若い人がやけにこの村に来ると思って話を聞いたら、なんかゾンビの噂が流行ってるって聞いたとよ。だからアンタ達もそうかと思ったけど、図星やったね!」

「それで、ゾンビは、ゾンビは本当にいるの?おじさん見たことある!?」

「いやいや、まさか。ゾンビなんておるワケなかたい。でもアンタ達も、自分で色々調べたかとやろ?人んちや畑に勝手に入ったりせんかったらよかよ」

「え!いいんですか!?」

「よかよか。せっかくこんな村に来てくれたっちゃけん、少しでも村を楽しんでいって欲しかって、骸神むくろがみ様が言っとるけんね」

「骸神様!?」


 突然出てきた骸神の名前に、ちょっとびっくりしてしまった。


「神様が?言ってるんですか?」

「え?違う違う。骸神様っていうのは、この村の村長たい」

「ほら、さっき話してた、骸神家の事じゃないですか・・・?」


 後ろからナツさんが小声でフォローしてくる。


「そうそう、よう知っとるね。あっちのほうに大きい家が見えるやろ?今もいると思うから、案内するよ。こんな村やから気の利いたグルメも無いけん、骸神のお家の人がおもてなししてくれとるとよ」

「へぇー。わざわざ村長さんの家の人が」

「面倒見のよか人やけんね」

「いいね~。では我々は、この村の長に話を聞きに行きます~!」


 あーちゃんがスマホで撮影しながらナレーションを入れる。


 おじさんの案内で村を歩いている間、何人かのおじさんおばさん達とすれ違った。皆人がよさそうに笑顔で挨拶したり「ゾンビ探しがんばるとよ」とか話しかけてくれる。とは言え、休日の昼間のわりには人は少ない。若い人も子供もいない。田舎はそんなものなのかもしれないけど。


 あーちゃんはおじさんに色々インタビューをして、おじさんはそれに笑顔で答えながら歩いている。


「そういえば」


 わたしはある事を思い出しておじさんに声をかけた。


「この村に入る直前に、着物の若い女の人を見たんですけど、おじさん知ってます?おかっぱ頭の」

「!!」


 わたしの質問に、おじさんは先ほどまでの笑顔から一転、目を見開いた真顔になり、足を止めて私の方を見た。


「アンタ・・・見たのか、タマヨ様を・・・!?」

「た、タマヨ様・・・!?」


 突然の事に、わたしは流石にちょっと気後れしてしまう。おじさんはしばらく考え込むように沈黙した後、また前を向いて歩きだした。


「おいの口からはなんも言えん・・・。骸神の家に着いたら、家の人に聞いてくれ・・・」

「え・・・あ・・・はい・・・」

「あ、あの・・・、私も骸神家の家に伝わる伝説について聞きたいんですけど・・・」

「それもおいからは言えん。全部家の人に聞くんだな」

「そうですか・・・はい・・・」


 ナツさんの質問もかわされてしまった。


 そうしてわたしの質問から一気に気まずい雰囲気になったまま、わたし達は村一番の大きな家、骸神家の前にたどり着いた。


 家と言っても、先ずは大きな木造の門が待ち受けている。おじさんはその傍にあるインターホンを押して、中の人と小声で会話を交わすと、「ここで待ってな」と言って帰っていってしまった。


 そしてすぐに門が内側から開く。中にいたのは和服の、中年の女性。派手なわけではないし、年相応の見た目ではあるが、とても美人だ。


「ようこそ、遠いところまでよく来てくれましたね。骸神松子です。せっかくですので、お茶でもお出ししましょう」


 彼女は微笑みながら、しかしその目は少し冷たいものを感じたのは、気のせいだろうか。


 そうしてわたし達三人は、骸神家に足を踏み入れた。

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