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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第8章 ゾン神家の一族
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第77話 探偵はこの中にいる!

 骸城むくろぎ村はとにかく山の奥にある。天神市内からバスに乗って、途中で一回乗り換えてどんどん山奥へ。最初はいっぱいいた乗客も、どんどん減っていき、今はわたし以外に二人乗っているだけ。


 一人は20歳くらいかな?の女性。キャップをかぶったギャル風の服装で、イヤホンからちょいちょい音漏れしている。聞き耳を立てているわけではないが、車内に喋る人がいないため、少しだけ聞こえてくる。お笑いのネタを聞いているようだ。時々スマホで自撮りをしている。服装と見た目だけだと、街中にいるのが似合う気がする。ギャルだし。少なくともどんどん山奥に向かっている市営バスにいるのはちょっと似つかわしくない。まあ服装については私も普段着なので、山奥に適した服装というわけではないけど。


 一方、もう一人はしっかり山奥に適した服装だ。登山客風の装備をしっかりしている。登山用のキャップに厚い眼鏡で、顔がよく見えないが、女性のようだ。山ガールというやつかな。こちらは静かにバスの外を眺めている。


 バスはどんどん山奥へと入っていく。先程まではまだ田んぼや畑が多かったが、徐々に森林の割合が増えていく。時々停まるバス停の周辺にだけほんの数件農家らしい建物があるだけだ。ちなみに乗ってくる人も降りる人もいない。


 そうこうしていると、ギャル風の女性が声を上げた。


「ゲゲ!電波通じんくなった!」


 え、まじで?私も慌ててスマホの画面に目を落とす。確かに、画面の右上の端には「圏外」の文字が。うそー。今まで色んなところにゾンビ調査に行ったけど、洞窟の中とかでもない限り圏外になることなかったんだけど。油断してた。


 まあ圏外なのは仕方ない。ギャル風の女性もしばらくブツクサ言っていたが、やがて観念した様子でイヤホンを外して窓の外を眺めだした。


 そうしてまたしばらくバスは進み、次の停車場の名前が表示された。バス停の名前は骸城村・・・ではない。別の名前だ。骸城村はそのバス停からさらに1時間ほど山道を歩いてようやく到着するのだ。


 わたしは降車ボタンに手を伸ばし、押そうとする―――と、


 ピンポーン


 わたしより先に別の誰かがボタンを押した。


 え、こんな所で降りるのはわたしだけだと思ってたけど、誰が?


 そう思ってバスの中を見渡すと・・・ギャルと山ガール、二人とも降車ボタンに手をかけた体勢で、私と同じようにお互いの方を驚いた顔で見ていた。


 ◆


「おめぇさん達も骸城村にいくのか・・・?」


 わたし達三人がバスを降りる時、妙に暗い表情の運転手のおじさんが話しかけてきた。もちろんわたし達三人は知り合いでもなんでもない、ただ降りる場所が同じだっただけなのだが、運転手さんにそう言われてわたし達は思わず顔を見合わせた。全員キョトンとした表情をしている。


「わたし達()って、他にも骸城村に行く人が多いんですか?」


 代表して、という訳ではないが、わたしがそう質問すると、運転手さんは暗い表情のまま、今バスがいる道路から脇に分かれている細い山道の方を見て、言葉を続ける。おそらく、あの道が骸城村への道なのだろう。


「やっぱりそうなのか・・・。悪いことは言わねぇ。あの村に行くのは・・・やめときな」

「なんかあるんですか?」


 ゾンビの噂があるのはわたしも知っている(だからここに来たわけだし)けど、その事だろうか。だけど、運転手さんの口から出たのは予想外の言葉だった。


「あの村は・・・骸神家の呪いでおかしくなっちまったんだ・・・!」

「骸神家の呪い!?」

「ああ、昔はここで降りる奴なんて月に一人いるかいないかくらいだったのに、しばらく前からちょくちょく人が増えて来てな。バスの乗客だけじゃねぇ。あの村に行く車も増えたみてぇだ。でもなぁ、入っていった人間と、出て行った人間の数が、どうも、合わねぇんじゃねぇかって、周りの村では噂になってるんだ・・・」

「つまり、村に行った人が帰ってこないって事?」

「噂だ噂!見てない所で帰っていってるのかもしれねぇ。でもあの村は昔から閉鎖的だったし、変な呪いの噂もあるから・・・。おっと、いけねぇ、もうバスを発車させないと。あんたら、本当にここでバスを降りるんか?やめるなら今だぞ?」


 そう言われても・・・ゾンビの噂があるなら呪いに怖がってる場合じゃない!


「大丈夫!降ります!」

「ウチも降りるよ~。心配してくれてありがとね、おじちゃん!」

「あ・・・わ、私もおります・・・!」


 私に続き、ギャルと山ガールもそう返事をした。


「そうかい・・・忠告はしたからな。あと、あの村を悪く言ったこと、村の奴らには内緒にしてくれよ。俺の仕事柄、バレたらまずいからな・・・」


 そう言って運転手さんは暗い表情のままバスを発車させた。


 静かな山中の道に残されたわたし達三人。何となく黙っているのも変かな、話しかけようかな、と思ってるうちに、先にギャルが話しかけてきた。


「ねぇねぇ、二人も骸城村に行くとよね?何しに行くの?あ、ウチの事は『あーちゃん』って呼んで~。あのさ、動画撮っていい?」


 さっきの陰気な運転手さんとは真逆の明るさで、グイグイ話しかけてくる。博多弁が少し混じった喋り方が、彼女の明るさをより際立たせている。


「ど・・・動画ですか・・・?」


 一方山ガールの方はあーちゃんさんの勢いに押されて戸惑っているようだ。


「そうそう。ウチ、配信者やってるんだ~。ここは電波届かんから生配信はできんけど、録画して後でアップしようかなって」

「顔が映るのはちょっと・・・」

「じゃあ後で顔隠す編集するね!じゃあまず自己紹介、お名前は~?何しに骸城村に行くの?」


 山ガールは撮影のOKを出したわけではないと思うが、あーちゃんさんの中ではOKになったようだ。スマホのカメラをわたし達の方に向ける。山ガールは戸惑っているようで、もごもごしていた。わたしはどうしようかなと思ったが、まあ面白そうだからいいか。


「わたしはニニカです!骸城村にはゾンビを探しに来ました!」

「ゾンビ!」


 わたしの言葉に、二人は驚いたようにこちらを見た。


「ゾンビの噂を聞いてきたとね!?じゃあウチと同じだ~!」

「同じ?」


 ということは・・・。


「そう!ウチも骸城村の噂を調べに来たの!ウチは依頼を調査する様子を配信して稼いでる、配信系探偵なんよ!」


 配信系探偵!そういうのもあるのか!わたしも驚いたが、山ガールも随分驚いたようだった。


「あなたも、なんですか・・・!?」

「あなたも、って?」

「あ・・・その・・・私も、オカルト専門の探偵・・・みたいな事していて・・・骸城村を調査に来たんです・・・。あ、名前はナツって呼んでください・・・。」


 何と!探偵なんて会うのは初めてなのに、いきなり二人の探偵に囲まれてしまった。そういうことならわたしも『ゾンビ専門の探偵』とでも名乗っておけばよかった・・・!

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