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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第8章 ゾン神家の一族
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第76話 F県S市 骸城村

 アピリス先生達がDr.アシハラの手掛かりをイトさんから聞いている頃、わたし、村井ニニカが何をしていたかと言うと、少し時間を数日前まで遡って説明する必要がある。


 ◆


 その日わたしはすごく落ち込みながら診療所に帰ってきた。


「ただいま~・・・」

「ニニカちゃん、おかえり~。・・・どうしたの?随分元気ないけど」


 診療所ではメアリさんが一人で受付番をしていた。ゾンビ化して刀を出して素振りをしている。ダンテ・クリストフとの戦いが今後激しくなることを予感して、特訓をしているのだ。特にメアリさんは、ダンテの仲間になってるお友達のルイさんと仲直りするために、打倒ダンテにこれまで以上にやる気を出している。さすが戦闘に適した特殊能力を持ったハイゾンビ。わたしみたいな一般ゾンビとは違うんだなぁ。


 と、わたしは診療所にメアリさん一人しかいない事に気づいた。


「あれ、アピリス先生とジョージさんは?」

「今日は先生は訪問診療で、ジョージさんはバイト」

「あーそうでしたっけ・・・」


 そう言えばそうだったような、と思い出しながら私はぐったりと椅子に座り込む。


「どうしたのニニカちゃん・・・?随分元気ないけど。めずらしい」

「そうなんですよぉ~。聞いてくださいよメアリさん」

「うんうん、どうしたの?」

「わたし、ゾンビの噂の調査に行ってたんですけど、頑張って調べたのに何と、全くの嘘っぱちだったんですよ!」

「あ~・・・今日は何の噂調べに行ったんだっけ」

「怪奇!キノコゾンビ!の噂です」

「あれかぁ・・・」


 メアリさんは何故か急に興味を失ったかのような微妙な表情になった。


「あれは・・・嘘だと思うよって、皆言ってたじゃない」

「えー!?」

「だってキノコゾンビだよ?意味わかんないじゃん」

「いやいや、キノコ人間とゾンビは、一見無関係に思えるけど、よく考えると共通点が多いんですよ?キノコに支配された人間は自我を失い生きる屍のように彷徨い、さらにキノコ胞子をまき散らすことで仲間のキノコ人間をどんどん増やしていくんです。これってゾンビと同じでしょう?」

「まず『キノコ人間』の事をさも常識のように話すのやめよう!?ニニカちゃんってキノコ人間の事も好きなの!?」

「いえ、キノコ人間は別に。でもキノコゾンビならいると思うんですよね!」

「力説してるけど、嘘だったんだよね?」

「そうなんですよ!ゆるせない、あのタケノコ農家めぇ~!」

「タケノコ農家がキノコゾンビの噂流してたの!?なんで!?」

「なんか、キノコの評判を落としてタケノコが天下を取るためだとか」

「キノコタケノコ戦争だったの!?」

「そんなこんなで、期待が大きかった分、ガッカリしたんですよ。最近ハズレ続きだし」

「まあ確かに。ゾンビの事件が多くなるにつれて、話題に乗っかってきただけの嘘の噂を流して面白がる不届き物も増えてるみたいね」


 そう、この診療所でのわたしの大きな仕事は、ゾンビについての知識を生かして世間に流れるゾンビの噂から本物のゾンビを見つけだすことなのだ。でも最近は中々本物にたどり着かない。


「は~次はどうしようかな。ここら辺のチラシから調べてみようかな」


 そう言いながらわたしはカバンの中から数枚のチラシを取り出した。


「なぁに、それ?・・・うわ!」


 チラシを見たメアリさんは何故か顔を引きつらせて悲鳴を上げた。


「天神公園で歩いてたら配ってたんですよ。これは若い女の人2人組から貰ったやつ。これは40歳くらいのおじさんから。これは白いひげが長いおじいちゃん、これは色付きサングラスのオバチャンから」


 それぞれのチラシには力強い多種多様な色のゴシック体や、物によっては手書きの筆文字でメッセージが書かれている。「世界は滅びます。神にゾンビにしてもらい生き残りましょう」「あなたの才能が目覚める!億を稼ぐゾンビメソッド(勉強会はコチラ)」「青春!ゾンビサークル!合宿開催のお知らせ!」「ゾンビと和解せよ」などなど・・・。


「とりあえずこのどれかに書いてる住所に行ってみようかなと・・・」

「ダメ駄目、絶対だめーーー!」


 メアリさんが急に大声を上げて私の言葉を遮る。


「こういうのはダメよ!なんて言うかその、ゾンビと関係あろうが無かろうが、とても危険なの!」

「え、なんでですか?」

「大学に入った時の説明会で注意喚起があったの。こうやって若者の興味を引いて合宿とかに連れて行って、逃げられなくする集団があるらしいのよ」

「ええ!?つまり・・・結局ゾンビより、本当に怖いのは人間、ってことですね・・・・!?」

「ゾンビより怖いかどうかは置いといて、これはヤバいから、暮井刑事たちに教えて後は任せときましょう」

「まあ、メアリさんがそう言うなら。でも・・・はぁ、あと残ったのはこれくらいかぁ」


 ため息をつきながら私はスマホのとあるページを見る。


「何それ?」

「ネットの噂の中でも割と有力そうな奴です。骸城むくろぎ村という所で、ゾンビの目撃情報が多数」

「へぇ・・・なんかすごい名前の村ね。県内だけどかなり山奥なのね・・・」

「じゃあ今度ここに行って調べてみますね」

「一人で大丈夫?私やアピリス先生達は予定入ってるけど・・・・」

「まあ村を見に行くだけだし、大丈夫ですよ。最悪わたしもゾンビだから、何とかなるし」

「油断するのはよくないわよ。危なくなったらすぐ逃げるのよ。私達にこまめに連絡してね。山の中だから電波が心配だけど・・・」

「大丈夫ですよ~。この時代、電波の届かない所なんて無いですって~。あっはっは」


 メアリさんは一応心配してくれるが、・・・一応というのは失礼か、本気で心配してくれているのだが、それはそれとして。これまでも何度も一人でゾンビの調査に行っているので、まあいつもの仕事の範疇だ。それにわたしはプライベートでも一人でゾンビスポットに行ったりするしね。


 そうして、後日わたしは骸城村へと向かった。結構遠いので、原付ではなくバスに乗って。


 ◆


「まさかこの時代に電波の届かないところがあるとはね・・・」


 私は山道を揺れるバスの中で、スマホの画面を見つめてそう呟いた。骸城村に向かい、バスはなおも進み続ける・・・。

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