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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第7章 ゾンビにまつわるエトセトラ その2
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第68話 ゾンビを甲子園に連れてって(中編)

「三球勝負だ!お前が三球投げて、一つでもストライクが取れればお前の勝ち!全部ヒットさせたら俺の勝ちだ!」

「ほう・・・プロ選手でも打率は3割程度・・・。それなのに三球全てヒットさせるとは、凄い自信だ」


 結局、野球勝負をすることになった。アピリス先生はどうして野球勝負をする必要があるのかずっと納得いっていなかったが、面白そうだからこのまま突っ走ろう。ジョージさんも何だかんだやる気みたいだし。


 野球ゾンビがバッターボックスに、ジョージさんがピッチャーの位置につく。夜中のグラウンドで、ギャラリーはわたしたちだけ。途端に張りつめた空気が流れる。わたしは思わずごくりとつばを飲み込む。


 ジョージさんはゾンビの力を全開にしている。集中力が十分に高まったのか、ボールを持つ手とグローブををはめた手、両方を高く掲げる。体を捻り、それと連動させて両手を胸の前に左足を上げてタイミングを見計らう。そして左足を踏み出すと同時に体の捻りを一気に逆に振り戻す。その時の方の動きに追従するようにボールを持つ右手を弓のようにしならせ、そして一気に野球ゾンビに向かってボールを投げ放つ!


 練習の時よりも明らかに勢い、迫力、スピードが増している!もはやボールを目で追う事は出来ない。風を切る刹那の音、そして―――


 カキィイイイイイン!!


 その次に響いた音が、無情にも第一球の勝負の行方をその場の全員に知らしめた。


「バ、バカな・・・!!」


 ジョージさんはその場に両ひざをつく。


「すげぇ球だったぜ!だが俺のバッティングの方が一枚上手だったようだな!!」


 野球ゾンビは興奮した様子でそう勝ち誇る。


「さあ!あと2球だぞ!!」

「クッ!想像以上に凄いバッターだ。どうすれば・・・」

「ターイム!!」


 勝負を続けようとする二人に対して、わたしは高らかに声を上げた。


「ほう、作戦タイムか?いくらでも相談していいぜ!?」


 野球ゾンビのお許しも出たので、わたしはこれ幸いとジョージさんを呼び寄せた。


「どうした、ニニカちゃん」

「どうしたもこうしたも無いですよ。打たれてるじゃないですかー」

「すまん。でもアイツ想像以上に凄いバッターだ。俺もゾンビの力いっぱいで投げてるけど、あいつもゾンビの筋力と動体視力で完全に球を捉えていた・・・!」

「まったく、偉そうな口叩いておいて、全然ダメじゃないですか。ここはわたしが出ます!!」

「ええ!?」

「野球ゾンビさん!選手交代!私が出ます!!」

「お前が?悪いけど俺は、強いピッチャーとしか勝負したくないんだ」

「ふふふ、ご安心を。私もゾンビですから!!」


 そう言って私は薬袋を外してゾンビ化する。すると野球ゾンビは驚いた顔をした後、不敵に笑った。


「まさかこんなにゾンビがいるとは・・・。面白い!選手交代を許すぜ!!」


 野球ゾンビはノリノリになった。だがジョージさんやアピリス先生、メアリさんが心配そうに近寄って来る。


「おいおい、野球なんてやったことあるのか?投げれるのか?」

「学校の体育で野球やったことあります!」

「そんだけ!?」

「大丈夫!我に秘策アリ!です!」


 そう言って私が上着を脱ぐと、現れたのは野球のユニフォーム姿。こんなこともあろうかと、服の下に着ていたのだ。そしてピッチャーマウンドに立つ。


「本当にいいんだな!?下手でも俺は容赦なく打つぜ!?」

「ふふふ、逆に目にモノ見せてやりますよ!」


 そうして私は大きく振りかぶり・・・思いっきり投げる!それに対してジョージさんと野球ゾンビがテンション上がって解説を始めた。


「おお!結構ちゃんと投げれているぞ!」

「球速はそれほどではない・・・だけど、何だこの球は、ブレて2つに見える・・・ナックル!?いや・・・本当に球が2つある!?」


 野球ゾンビはわたしの球に驚愕しながらバットを振る、が、それは球に当たることなく空を切る!うしろのフェンスにボールが当たる音がする。2つ分。


「やったーストライク!」

「バカな!今確かにボールが2つあったぞ!?」


 野球ゾンビが私の方に向かって詰め寄って来る。


「ふっふっふ、球と一緒に私の目玉を投げたんですよ!」

「ギャー!!目玉が無い!?」


野球ゾンビはわたしの片目が無い顔を見て悲鳴を上げた。


「これぞ分身魔球!わたしの勝ちですね!」

反則ボークだよ!!」


 近くに寄ってきたジョージさんに頭をはたかれる。


「そうだ!流石にこれは納得できない!反則のペナルティで、この2球目も俺の勝ちだ!」

「えー!そうなの!?ガーン!」


 漫画だと分身魔球とかよく見るんだけど。まさか反則とは・・・。しょうがないので投げた目玉を探しに行く。


「すいませーん!暗くて目玉が見つからないんですけどー!」

「こんな暗闇で目玉を投げるんじゃない!諦めて新しいのを生やしなさい!」


 ジョージさんに怒られてしまった。仕方なく言われたとおりに目玉を生やして戻って来ると、野球ゾンビが勝ち誇っていた。


「さあ、どうする!3球目も打ったら俺の勝ちだ!またそっちの男が投げるか?あれくらいの球なら何度でも打てるぜ!」

「うーむ、俺が投げるしかないだろう・・・」


 ジョージさんが呻く。私も目玉を投げちゃだめなら出来ることは何もない。すると―――。


「はい!私が投げます!」

「メアリちゃん!?」

「メアリさんも野球できるの!?」

「体育の授業でちょっとだけ!」

「メアリちゃんも体育だけ!?何でそんなに自信満々なんだ!?」

「日本はみんな授業で野球やるの!?そんなに野球が流行ってるの!?」


 アピリス先生が何故かカルチャーショックを受けている。


「メアリちゃん、本当に大丈夫!?ニニカちゃんみたいに変な事するんじゃない!?」

「多分、きっと、恐らく、大丈夫!」

「おいおい、今度はそっちの姉ちゃんか?まともな球投げれるんだろうな!?」

「安心してください、私もゾンビです!」


 そう言ってメアリさんもゾンビ化する。


「アンタもゾンビか!じゃあOK!」


 OKなんだ。野球ゾンビのゾンビに対する期待が厚い。話が早くていい。


 そうして今度はメアリさんがピッチャーマウンドに立つ。さすがにメアリさんは野球のユニフォームは来ていないが、キャップだけは貸してあげた。


「行きますよ!」

「来い!!」


 メアリさんが振りかぶり、球を投げる!またもジョージさんと野球ゾンビの解説が始まる。


「おお!メアリちゃんも結構ちゃんと投げれている!流石ゾンビの身体能力か!」

「だがこれなら俺には余裕で打てるぜ!俺の勝ちだな!」


 そう言って野球ゾンビがバッドを振る。だけど、そのバッドが当たる直前、球は突然変化し、大きくカーブした!


「なに!?」


 野球ゾンビ咄嗟にバットの軌道を球に合わせようとする。が・・・。


 カシャァアアアン・・・!


 バッドが空を切った直後、ボールが背後のフェンスに当たる乾いた音が響いた。


「バ、バカな・・・!」


 今度は膝をついたのは野球ゾンビの方だった。


「あんなにキレのいい変化球を投げるなんて・・・。お、俺の完敗だ・・・」

「やったー!メアリさん!!」

「凄いじゃないか!あんな変化球投げられるなんて!!」

「野球の事よく分からないけど、とにかく凄いんですね」


 野球ゾンビが負けを認めるのを見て、わたしたちはメアリさんに駆け寄り彼女を囲む。アピリス先生だけはテンションに乗り切れていない。多分野球のルールがよく分かっていない。


「(ところで・・・)」


 ジョージさんが野球ゾンビに聞こえないように小声で喋る。


「(あの球、メアリちゃんの『糸』で曲げたんだろ?)」

「(正解!まあ、バレなきゃイカサマじゃない、ってことで)」


 メアリさんはそう言うと小さくウィンクした。


「という訳で、約束通り治療を開始します」


 アピリス先生は早速野球ゾンビに近づく。すると彼はガバッと顔を上げて、懇願してきた。


「ま、待ってくれ!ゾンビを治しちゃうのは待ってくれ!!」

「おいおい、約束を破るとは、それでも球児か!?」

「いや、あの、あと数日間!数日だけ待ってくれ!俺にはゾンビの力が必要なんだ!!親友と、親友と野球勝負するために!!」

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