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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第6章 ゾンビ病棟24時
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第60話 後始末

「それで、どういうことか、キッチリ説明してもらおうか」


 財前マシロは椅子にどっかりと座り、不機嫌そうに腕組みをしながら問いかけてきた。


 場所はもともと私が入院していた病院の個室。私とジョージは財前マシロの正面のソファーに座り、ニニカさんとメアリさんはベッドに腰掛けている。


 メアリさんの友人であるルイさん。彼女に逃げられた後も、かなり大変だった。なにせメアリさんは治ってるとは言えお腹を貫かれた後だったし、ジョージは気絶した男を縛り上げて担いでいる。工場跡地は戦いでところどころ壊れているし、旧病棟はもっと酷い。床や外壁が壊れて大穴が空いているのだから。


 一緒にいた財前マシロが警察を呼ぶ!とか大騒ぎしたらどうしようと心配したが、彼は意外にも協力的だった。


「謎の男にヒナコちゃん共々連れ去られて、旧病棟と工場跡地はその男たちが不法に使っていた。そいつらがアチコチ壊して、ヒナコちゃんが怪我をしたので、なんとか逃げ出してヒナコちゃんを助けて手術した」


 というのが財前マシロが関係者に説明したことだ。なんと、何一つ嘘を言っていない。私達のことや、細胞異常再生症の患者のことは秘密にしていること以外は。


 そんな説明などなどを財前マシロがやってくれている間、私は縛り上げている男を正式に治療。今は麻酔薬を打って眠ってもらっている。起きたら面倒な上、目を離すわけにもいかないので、大きめのトランクを買ってきて中に入れて病室に置いている。正直これを誰かに見つかったらかなりヤバイ。ドキドキである。メアリさんの穴が開いた服も、トランクと一緒に着替えを買ったメアリさんは付き物が落ちたように、ニニカさんと一緒に穏やかに座っている。。


「その前に、ヒナコちゃんは本当に大丈夫なんですか?入院してた子供がいきなり大怪我なんて、やばくないですか?」


 ニニカさんが内容に反して呑気な口調で質問した。財前マシロは、ジロリと睨み返しながらため息を付いた。


「ヒナコちゃんは大丈夫だと言っただろう。応急処置も適切だったし、俺がすぐに完璧な手術をした。傷も残らないし、もともとの病気への影響も無い。ただ、病院の方は、まあ大問題だな。入院患者、しかも子供が怪我したなんて、病院側の監督責任は大いにある。今副院長が矢面に立って各方面に頭を下げて回ってるよ。まあ、ヒナコちゃんが助かったのが不幸中の幸いだな。副院長の政治手腕なら、必要十分な責任を取ることで収束するだろう。あとは、ヒナコちゃんを傷つけて行方不明という事になっている犯人を捜すために警察が旧病棟と工場跡地を調べてるよ」


 行方不明という事になっている、というのは、犯人の一人が今この部屋のトランクの中に隠されている事を皮肉っているようだ。


「こっちの話はそれくらいだ。さあ、早くそっちの話を全部話せ。そのためにお前達の事を黙ってやってるんだからな」


 仕方ない。ここまで巻き込んでしまったからには、ちゃんと説明しよう。


「では説明しますね。そもそもゾンビとは、起源はブードゥー教に始まり・・・」

「ニニカさん!ゾンビの説明してどうするんですか!あとこの病気はゾンビじゃないから!財前先生が混乱すること言わないで!!」


 まったく、油断も隙もあったもんじゃない。


 ◆


「・・・にわかには信じられないな。現代医学で死亡確定の状況からでも、手順さえ正しく踏めば蘇生させられる医療技術。そんなものが、君の国のある部族にだけ、一種の民間療法として伝わっていたとは。しかもその治療を途中で中断すると、副作用として超常的な力を得る、なんて。いや、むしろ超常的な力で生まれた再生能力を、治療に使っているという方が正しいのか・・・?」

「信じられないと言いつつ、結構すんなり信じてくれてますね」

「まあ、この目で色々見たしな。それに、医術のことでお前が真剣なのは、ヒナコちゃんへの応急処置を見て分かった。それなら、医術のことなら信用してもいいだろう」

「財前先生・・・」


 もしかしていい人なのだろうか。


「しかしあの時自分を医者だといったのはこういう意味だったとはね。天神街でゾンビ専門の診療所をモグリでやってるって?モグリはやばいだろ。よくそれで自分のことを医者だなんて言えたな」

「ぐぬぬ・・・」


 おのれ、財前マシロ。ちょっと優しいかと思ったけど、そんなことはなかった。


「その上、ゾンビの力を悪用しようと、その蘇生技術の知識を奪おうと暗躍してるダンテ・クリストフ、か。まるで映画だな。そっちは正直警察とかの管轄じゃないのか?蘇生技術のことだって、ちゃんと病院なり学会なりに伝えて一緒に研究したほうがいい」

「言いたい事はもっともだと思いますけど、正直、そうすることでどんな混乱が起きるのか分からないのが怖いんです。ダンテ・クリストフのように悪用したい人が他にも出てきてもおかしくない。だから私は、できるだけこの蘇生技術を誰にも知られることなく、私達の部族だけの秘密にしておきたい・・・」

「そういう気持ちも分かるが・・・」


 財前マシロは何か考え込んでいるのか、その先の言葉が続かない。代わりにジョージが、普段と違って真剣な表情で財前マシロに問いかける。


「ここまで聞いて、財前先生はどうしたいですか?この情報を警察なり病院なりに伝えて公にするのか、それとも、俺達のこれまでのスタンスのとおり、一緒に秘密を守ってくれるのか」

「おいおい、ここまで話しておいて、脅しか?公にするなら口封じでも?」

「違います!ちょっとジョージ、そんな言い方・・・!私達は、事実を知った人たちがどうするかを強制していません。すでに沢山の細胞異常再生症の患者を治療していますが、それを秘密にするかどうかは個人の自由です。もちろん、できれば秘密にして欲しいとお願いはしていますが・・・」

「そんなんで秘密を守れているのか?」

「今のところは、皆さん協力してくれています。と言うより、公にすると患者さん自身が矢面に立たされてしまうので、それを恐れているのでしょうけど」

「まあ、それもそうか・・・」


 あと実は、刑事さんにも一人秘密を知っている人がいるのだが。その人が上司に事実を伝えても全く信じてもらえなかったという珍事件もあった。まあそれは今は言わなくていいだろう。


 ジョージが改めて財前マシロに問いかける。


「そういうわけで、財前先生のスタンスはできれば確認しておきたいんですよ。この情報と俺たちを、どうするか」

「・・・。俺は・・・・」


 財前マシロは少し考え込んだあと、その口を開いた。

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