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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第6章 ゾンビ病棟24時
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第47話 大病院の夜

「財前くぅ~ん。今日はまた大変だったみたいだねぇ~」


 待合室でおかしな女、アピリスを助けた日の夜。九定きゅうてい大学病院のスタッフ用休憩室でコーヒーを飲んでいると、副院長がまたしても猫なで声で話しかけてきた。この人も大概忙しいはずだが、最近よく会う。・・・という事は、院長選に向けた俺の懐柔工作をまだあきらめていないようだ。ご苦労な事だ。


「なんでも、ちょっと前に噂になっていた謎の銀髪褐色の肌の異国の美少女をカッコよく助けたんだって?いやぁ、美男美女でさぞ絵になったことだろうねぇ」

「患者が倒れたのを笑い話にするのも、人の容姿をあげつらうのも、見た目で相手の国籍を判断するのも、全部完璧にコンプライアンス違反ですよ」

「あはは~。ところで、今度こそ一緒に飲みにいかないかい?いい店見つけたんだよ~」


 面倒くさかったので思いっきり嫌味を言ったのだが、全くこたえていない。面の皮の厚い奴だ・・・。


「前も言いましたけど、そういうのに興味ないんで」

「いやいや~分かってるよ~?前紹介した店は財前君は興味ないみたいだったんで、違うタイプの店を調べてたんだよ~。そしたら面白い店を見つけてさー。『ぴーちパーク』っていう、オカマバーなんだけど、最近店員がゾンビのコスプレでメイドカフェするイベントで人気になっててさ~。楽しいんだよ~?」


 オカマバーでゾンビでメイドカフェ・・・?言動が支離滅裂だぞ。副院長は疲れでついにイカれてしまったのか・・・・?


「い、いえ・・・、どんな店でも興味ないんで・・・」

「そうかい?残念だな~。また今度誘うね~」


 そう明るく言って帰っていった。興味ないと伝えているのにこれである。この大病院の副院長になるというのは、あれくらい面の皮が厚くないとできないのかも知れないな。あれはあれで凄いのかも。俺には興味の無い生き方だが。


 窓の外を見ると夜の闇の中、遠くに今も現役の工場地帯の明かりが見える。その手前、この病院の旧病棟と廃工場の煙突は黒い影となってそこに佇んでいる。


 あのアピリスという変な女はどうしているだろうか。過労で点滴を打って、念のため入院。特に問題が無ければ、もう外科医である俺の出る幕ではないが・・・。


「まあ、変な患者なんてごまんといるか」


 今日は夜勤である。これから夜も長い。俺は休憩を終えて仕事に戻ることにした。


 ◆



 夜の病院は静かだ。私、アピリスは病院のベットで眠れずに過ごしていた。


 結局私は大人しく入院することを受け入れた。たまたま開いていたベットが個室だったので、ジョージ、ニニカさん、メアリさんも付き添いでいてくれている。とは言え全員が居着くには流石に狭いので、ジョージだけは病院の中に別に用意された総合の待合室にいてくれている。私の過労を心配してくれるのはいいが、これではみんなが疲れてしまうだろうに。申し訳ない・・・。


 昼間、ヒナコちゃんが検査のために私たちと別れた後、私はすぐに寝てしまった。実際疲れていたのだろう。だが、そのせいで夜になると目が覚めてしまったのだ。


 ニニカさんとメアリさんはソファーで寝ている。スマホも見ないようにジョージに言われている。(FXを見ると心労に悪いから)

確かに最近、こんなふうにゆっくりすることは無かった。だが、一人でゆっくりしていると、逆に色々な事が頭を巡る。お姉ちゃんの事、ダンテ・クリストフの事・・・。


 何となく気がめいった私は、散歩することにした。幸い点滴は既に取れている。静かに起き上がり、廊下へと出る。


 遠くで今も働いている看護師たちの気配を感じながら歩く。・・・すると、前方に小さな人影が見える。ヒナコちゃんだ。こんな時間に一人でどうしたんだろう。隠れているつもりのようだが・・・こちらには気づいていない。彼女も眠れないのだろうか。


「ヒナコちゃん、どうしたの?」


 私が静かに声をかけると、ヒナコちゃんは驚きながらも、口元に指を当てて「シィー!」とこちらの声を制した。


「アピリスおねえちゃん、どうして!?」

「眠れなくて、散歩してたんだけど・・・。ヒナコちゃんこそどうしたの、こんな夜中に」


 病院でなくても子供は寝てないといけない時間だ。

 だがヒナコちゃんはとても生き生きした顔で、私の耳に口を近づけて秘密の話を打ち明けてきた。


「あのねあのね、見つかっちゃったからおねえちゃんだけに秘密で教えてあげるね。私今、この病院に()()って噂の、オバケを探しているの」

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