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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第5章 ゾンビギニング
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第43話 出口のない暗闇

 ゾンビ誘拐事件の後、家に着いた頃にはすっかり朝になっていた。


 私、蘭葉メアリは家に着くなり、ベッドに倒れこんだ。疲れた・・・。肉体的はそうでもない。徹夜だったが、ゾンビになってからは疲れに強くなった。しかし、精神的に疲れた。いや、疲れたというよりは、精神がすり減ったという感じか。


 ジョージさんの過去、彼がブラック企業から受けた仕打ちは勿論気分の悪いものだった。未だにあのような仕打ちをする会社があるかと思うと腹立たしい。さらに、その後のダンテ・クリストフの登場、そのエピソードで私の心は怒りでいっぱいになった。


 ゾンビ誘拐事件でダンテ・クリストフと再び会った時点から私は冷静ではいられなかった。奴のせいで私と友人・・・保谷ルイ達はゾンビにされた。そしてあまつさえ、奴の口車に乗せられ、私は友人達を()()()しまった・・・。


 あの時の手の感触は未だに覚えている。自分がゾンビになったことなどよりも、現実感のない話。しかしまぎれもない現実。大学生になったばかりで、精神的に大人とは言えない私には耐えられないものだった。私は自暴自棄になろうともしたが、アピリス先生達の存在もあって、取り合えずダンテ・クリストフへの復讐を心の支えにして自分を保とうとしていた。『怒り』で誤魔化すしかなかったのだ。


 だが、やはりダンテ・クリストフと会い、ルイ達を殺したことを、あのように揶揄されると、どうしようもなく心がかき乱される。自分を保つためはずの『怒り』が許容量を超える。


 ふと、ベッドに倒れこんだまま自分の部屋を見やる。大学生向けの1ルーム。小奇麗に見えるのは物が少ないからだろう。大学入学で一人暮らしを始めて1年目。何も最初から物を少なくしようとしたわけではない。大学デビューというつもりもないが、新生活に憧れて買いそろえた物はある。このベッドもそうだし、オシャレをしようと大きな鏡とハンガーラック、友達と遊ぶためにとゲーム機も買ってみた。


 だがその後程なくして私はゾンビになってしまった。ダンテへの復讐のため、情報収集にと大学には通い、そのために最低限の友達付き合いをしているが、それ以上の私生活は無い。ハンガーラックにおしゃれのための服が増える事も、友達とゲームで遊ぶこともなかった。大きな鏡だけは、ゾンビになった自分の姿を見るために役立っている。


 ゾンビになった人は、アピリス先生のおかげで人間らしい暮らしを取り戻していることだろう。それは素晴らしいことだ。だが今の私は、復讐しか目的がない、まさに生きる屍のようだ。


「所詮私は、仇敵ダンテ・クリストフを殺すためだけに生きるクリムゾンビースト・・・」


 もしダンテを殺すことが出来たら、その後は・・・。


 いつもそこで、考えるのを辞めた。

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