エピローグ 消えゆくはずの友
こんにちは、一介です。失踪するかもしれませんが、こんな作品を書いてみました。時間があれば読んでみてください。
想像。
別にどうってことの無い夢想から自分の未来を思う将来の夢まで、色んなことを人間は想像する。
勿論嫌な想像だってある。頭の中で思いついた無限の可能性が、想像だ。
この物語は、そんな想像が現実となる物語。
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『きっと…忘れられる日が…くるから…』
妙な夢を見た僕は目を覚ました。
「景くん、朝だよ。早く起きなさい」
「ん…おはようございます、おばさん」
今日も一日が始まった。
顔を洗い、歯を磨き、支度をして僕は学校へと向かう。
「行ってきます」
「気を付けて行ってきなさいね」
おばさんは僕の住む保護施設の管理人だ。
僕はあまり記憶がないけれど幼くして両親が死んでしまったらしく、親戚の家をたらい回しにされここへたどり着いた。
今では施設の皆と仲良く暮らしている。
こうやって中学校に通えるのもお金を出してくれた元保護施設住人の人とおばさんのお陰だ。
最初の方は孤児として腫れ物に触るような扱いをされたけど、二年の月日が経ち、そんなこともほとんどなくなっている。
「よお景。今日はなんかいつもよりご機嫌だな」
「う、うん。少し嬉しかったことがあってね」
こいつは友達の健二。仲良しで、いつもこの二人で遊んでいるんだ。
「何があったんだよ?」
「今日は僕の誕生日で、サプライズパーティの準備をしているのを見かけちゃったんだ」
「そうか、お前誕生日か!」
健二はあまりそういうことに気を使わないタイプだ。そういうところが俺は好きなんだけどね。
「おめでとう。特に何もやらんけどな」
「ありがとうさん」
「それよりお前、例の発表見たか?メイチャークエストの新シリーズ発売決定だってよ!」
「見た見た。僕もやりたいなぁ…」
こうやって喋ったり、ふざけ合ったりして過ごすのはとても心地がいい。
放課後は部活でテニスをする。
中学の軟式テニスが俺と健二の出会うきっかけになった。
今ではペアを組んで連戦連勝だ。
「いや〜今日の練習も疲れたな」
「でもいい練習だった。大分動きもよくなってきたね」
二人で練習の成果を語り合う。すると、女子テニス部の羽生さんが走ってきた。
「お疲れ様、こっちも練習終わったよ」
「三人で帰るか」
「じゃあ僕は少しだけやることがあるから校門で待っててよ」
「「了解!!」」
片付けを終え、僕は色々用事を済ませてから学校を出た。
「おまたせー!」
「早く帰ろうぜ、お前は今日誕生日なんだろ?早く家にいってや…」
その瞬間だった。
突然黒い塊のような物が降ってきて、目の前で二人が叩きつけられた。
「え…?」
目の前まで飛んできた二人を起こそうとしたが、彼らは動かない。
「おい、健二!羽生さん!?」
校門前に見える黒いものは、四足歩行の化け物だった。こちらをニヤニヤと嘲笑うように見つめていた。
「う、うああああああああああ!!」
化け物は目にも止まらぬ速度で動き、僕を捕まえた。そのショックで僕は気を失った。
そして今に至る。
「意識が戻りました!」
「景!!よかった、生きてたのね!!」
目の前にいたのはおばさんだった。
「え…うん。おばさん、どういう状況?」
「あなた三日も寝てたのよ、夢魔が現れて襲われたそうよ」
「夢魔…?」
「そうか。知らないのも当然ね。夢魔っていうのはね…」
僕が寝てたこの三日間の内に、世界各地に色々な種類の化け物が生まれ、それを政府は夢魔と名付け、駆除対象にしたそうだ。
「健二たちは…?」
「…………」
「まさか…」
病院の一室で横たわっていたのは二つの骸だった。
僕は吐いてしまった。
僕を気にかけてくれた大切な友達はもういない。
僕に守る力があったわけじゃないし、彼らが僕を庇ったわけでもない。でも、僕の心には罪悪感がまとわりついていた。
「ごめんなさい。僕、生きるから。二人の分までめげずに努力して、二人のところに誇れる自分になってから行くから…待ってて」
『あん…気にすん…よ』
『私も…てるから……張って…』
「え、何か聞こえ…?」
周りを見渡したが誰もいない。
「二人がまたそばにいてくれたらな」
出来もしないことを想像してしまった。
それが僕の最初の夢想だった。
こんにちは、一介です。
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ではまた次回の話でお会いしましょう。