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5・こうして僕の冒険者生活が始まった

「イチェン、サクの実力は本物だ。私目当てで『オーガ盗賊団』を潰せるならそれで良いんじゃないか?」


 イマルがどこか勝ち誇ったように男にそう言った。


「イマル、お前・・・」


 男はその言葉で怯んだ。何やってるんだろう?


「サク、臆病者は放っておいて組合へ行こうか」


 イマルは僕にそう声を掛けて来た。男は追いかける気力を失ったようだ。そんなガッカリしなくても父さんには負けるけど、そこそこイケメンなんだから、モテてるんじゃないのかなぁ


 イマルに促されるように街門へやって来た。


「入街税は銀貨1枚だ」


 え?めちゃくちゃ高くない?


「街や組合の身分証がないから仕方がないんだよ。役所や組合で身分証を作れば銅貨3枚になるから、街に入ったらすぐに作りに行った方が良いぞ」


 つか、何その落差。父さんに聞いていたけど、さすがに現実に聞いちゃうとびっくりだよ。


 その理由も母さんに聞かされている。

 

 ビクレストはこの辺りで最大の街だとかで、各地から人が集まって来る。しかし、それは良い事ばかりではなく犯罪者や食い扶持を失った人たちが来るそうだ。そうやって集まってしまうと疫病や犯罪が蔓延してしまうので厳しく入街を制限しているらしい。

 その代わり、周辺の村には人がソコソコいるらしく、犯罪を抑えるために街から兵士や冒険者が派遣されるという話だったような?


「さて、冒険者組合へ行こうか。サクには懸賞金を受け取る権利もあるからな」


 そう言ってイマルに促されながら冒険者組合へと向かった。


 街は人であふれている。壁の外と違って武装した人をほとんど見かけない。本当に安全なんだろうなぁ


 キョロキョロしているとイマルに笑われた。


「本当に田舎から出て来たんだな。立派な鎧と剣を持っているから街には慣れているのかと思ってたんだけど」


 ってさ。


 周りが人だらけで歩きにくいし、宿場町以上に建物が建ちまくっていて景色全てが建物だなんて、僕には違和感でしかないよ。


「ほら、あれが冒険者組合だ」


 そう言われた建物は結構立派で、入口なんて石造りじゃないのかな?こんな建物村で見たことないよ。


 建物に入るとイマルはスタスタと目的であろう場所へ向かった。


 周りの視線がイマルに集まっているのが分かった。


「お帰り、イマル。どうだった?」


 窓の向こうから声を掛けて来たのは、アレ?見覚えのある顔?


「ん?サク君か。そうか、もう成人なんだな。登録窓口は向こうのねーちゃんだ」


 やっぱりそうだ、行商人の護衛のひとじゃないか。


 そう思った瞬間。なぜか僕に視線が集中した。


「エコイカウンの知り合いってなんだよ。有望新人なんてレベルじゃないだろ」


 なんて声が聞こえて来た。


 そう言えば、そんな名前のオジサンだっけ。


 言われた通り、そのお姉さんの窓口へと向かった。


「登録お願いします」


 そういうと、特に何を聞かれるでもなく登録が進む。あれ?


「あの、冒険者登録って名前や特技を聞いたり技量を見たりしないの?」


 そう、父さんに聞いていたのだと、登録のために名前や特技を書く必要があったはずだ。それもあって村では文字を教えている。計算を教えるのは行商人との取引もだけど、達成報酬の計算だとか武器や武具の購入をするときにも必要だからだ。よね?


「一般の登録はそうしますよ?しかし、サク君の場合はエコイカウンさんがその身分と技量を保証されていますので、免除とさせていただきます」


 え?そんなので良いのかな?


 僕が不思議がっていると、後ろから声が掛かった。


「おいおい、エコイカウンが認めたって。そりゃあ知り合いかもしれねぇが、こんなガキを技量も見ないってどうなんだよ」


 振り返るとガッチリした体系の戦士っぽい人が居た。グローインのオヤジさんほどじゃないんだけど。


「では、シウラさんが行いますか?ウタリさんの息子さんですので、気を引き締めて当たってくださいね」


 受付のお姉さんがその人にそう言った。あれ?なんで父さんの名前知ってんの?あ、そうか、父さんも元冒険者だから。


「チャシ、冗談キツイぜ。いくら何でも特級のあのウタリだろ?こんなデカいガキが居るのか?」


 あれ?この人も知ってるのかな?


「ウタリのガキだと?」


 と、こちらはドワーフっぽいな。グローインのオヤジさんみたいに顔が濃い。


 そして、ジロジロと鎧と剣を見る。


「なるほどな。グローイン師匠の作で間違いねぇ。触れるまでもなく分かるレベルじゃねぇか」


「す・・スラーイン、冗談だろ?」


 シラウって人が後ずさりしている。


「これを見て師匠の作だと気が付かないヤツが居たら、ソイツはドワーフじゃねぇぞ」


 シウラって人がヨタヨタと壁まで後退した。どうしたんだろう?


「では、サク君。これがあなたの冒険者証です」


 そう言って渡されたそれは、金属でできた札だった。うわ、父さんたちが持ってるのとおんなじだ。


「あ、『戦神』だ!って、サクッて聖女ユッキの息子なんだ!」


 イマルがいきなり叫んだ。


「うん、母さんの名前はユッキだけど。聖女?」


 聖女って、教会でお祈りしたり病を治す人だよね?母さんはヒーラーだけど父さんやオヤジさんと一緒に小鬼や山犬蹴散らすような強い冒険者だよ?たしか、鬼も一人で倒せるってオヤジさんも言ってたんじゃなかったかな?


「最強の聖女ユッキの息子だって!」


 他からもそんな声が上がる。ん?


「戦神と聖女の息子のご登場かよ。コイツは驚いた」


 んん?


「えっと、冒険者だから、まずは薬草採取だよね?」


 と、チャシさんに聞いてみた。父さんもそう言ってたけど。


「そうですね。それでかまいませんが、オーガの討伐も出来るんですよね?」


 と、聞かれた。


「小鬼でしょ?10頭くらいの群れなら倒せるけど、鬼が居るとちょっと無理かなぁ」


 そういうと、建物内が静まり返った。え?何で?


「オーガ10頭を単独討伐とか、戦神はどんな教育してんだ・・・」


 あれ?そんなにおかしい事だったの?村だと小鬼と戦えるなんて常識なのに。


 ふとイマルを見た。


 なぜか顔を横に振って必死に否定している。


 どうしたんだろうなぁ


「でも、やっぱり薬草採取からやるよ」


 こうして僕の冒険者生活が始まった。これからどんな冒険が待っているのか楽しみだなぁ

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― 新着の感想 ―
[良い点] これから物語が始まるのかと思いきや、これで完結⁈ 一応タイトル回収しているのかな? なんだか淡々と山奥の村を出た少年が街に出て冒険者になる無自覚無双。 相変わらずなネーミングセンスで金…
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