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4・美人だなぁ。母さんほどじゃないけど

 声がした方を見る。うん、やっぱり女の子らしい。それも結構良い装備だなぁ


「ひっひっ、こんな上玉、簡単に殺すかよ」


 と、盗賊らしいことを言ってるけど、こっちに気付こうよ。


「お兄さん、もうこっちは終ったよ?」


 そう声を掛けてあげた。


「そうか、ガキはかたtz・・、ハァ?」


 停止した。見事にみんな気付いてなかったんだ。危ないなぁ。山の中でそんな不注意だと山犬に襲われちゃうって。


 盗賊が固まっている間に全部処分しちゃおう。一気に飛びついて一舞してあげた。


「大丈夫?」


 呆気にとられた女の子を見る。ホントに良い装備してるなぁ。村で皆が装備してるのに近い。これだけの装備をしてるって事は冒険者だったり?


「あなた、どんだけ強いの」


 女の子に驚かれちゃった。


「どんだけ?う~ん。小鬼なら10頭くらいの群れを一人で倒せるくらいには?コレから街まで冒険者登録に行くんだ」


 そう言って女の子に手を差し出した。


「冒険者登録?その強さで今更?」


 うん?ちょっと反応がおかしいけど、どして?


「うん、山奥の村だから、小鬼や山犬が襲って来るんだよ。このくらいじゃないと一人で村から外に出られないんだけど、それがどうかしたの?」


 そう言うと、女の子は笑い出した。


「アハハ、どんな村なの、それ。これから冒険者か。私は現役冒険者で二年前に登録して、今三級なんだ。でも、さすがに単独で『オーガ盗賊団』を狩るのは無理があったかな」


 へぇ~、こいつら有名な盗賊団だったんだ。それにしても、わざわざ小鬼を名乗るとか弱っちい名前だね。


 そう言って立ち上がった女の子は僕より身長がある。うん、その立ち姿だけでも村のみんなくらいには強そうだ。でも、そのくらいで成れちゃうんだ?


「三級なんだ。父さんから冒険者登録してさっさと三級くらいには成れって言われてるんだよ、僕」


「そうか、すぐに三級迄上がれそうな実力があるね君。私はイマルだ。よろしく」


「僕はサク。この北を山三つくらいは入ったとこの村から来たんだ」


 そう言ってくる女の子をまじまじと見つめた。美人だなぁ。母さんほどじゃないけど。


 イマルが盗賊の所持品を回収しているので僕も手伝った。


「『オーガ盗賊団』って有名なんだよね?」


 何だか小鬼っぽいデザインのエンブレムらしいモノを指して聞いてみた。


「ああ、ビフレストでは有名な盗賊団だ。討伐依頼も出ているし、賞金首だった。君に賞金を受け取る権利があるぞ」 


 ビフレスト!目指している街の名前だ。


「イマルはビフレストの冒険者?じゃあ、これからよろしく!」


 僕はイマルに案内されながら間道を進んだ。


 どうやらこの間道は結構使われていたそうだが、小鬼盗賊団が根城にしたことからこの一年くらいはその往来も途絶えていたらしい。

 そこで冒険者組合に依頼が出ていたらしく、街から懸賞金も掛けられていたらしい。


 しかし、相手は規模も分からない盗賊団。なかなか依頼を受ける冒険者は現れず、イマルが勢いで受けたらしい。


「二年で三級まで上がったから調子に乗ってたのかなぁ~」


 そう自嘲してる。確かに今日は危なかった。僕が居なかったら完全に捕まってたよね。


「サクは強いね。もしかして、本当は貴族か?」


 そんな事を聞かれたけど、そんなわけないじゃないか。


「山奥の村で育った村人だよ?」


 そう言うと怪しまれた。


「それにしては随分と整った装備じゃないか。そんな装備を整えるには腕のあるドワーフ職人が居ないとできないぞ?私も最近ようやくこれだけの装備を揃えることが出来たんだから」


 と、なるほど、そりゃあ、ドワーフの職人が居るのが前提だよね。


「うん、ドワーフの職人なら居るよ。父さんも母さんも元冒険者で、知り合いのドワーフと村で暮らしてるんだ」


 そういうとイマルは不思議そうな顔をした。


「ドワーフがパーティーに居た冒険者?山奥?何だか聞いたことがあるような」


 どうやら考えているが、答えに行き当たらないらしい。


「ドワーフが居るパーティーなんていくつもあったって父さんが言ってたよ?そんな珍しくないんじゃない?」


 そう、ドワーフが居るパーティーはいくつもあったと父さんは言っていたし。


「確かに幾つもあるが、引退して山奥の村へ移り住んだってパーティーに何だか覚えがある気がするんだ」


 そう首を捻るイマルと間道を進んで行くと、どうやら下り道になったらしい。


「お、もうすぐ山を抜けるな」


 そんな声を聞いてようやく来たんだと実感した。


 少し歩くと森を抜け、その先に石の壁が見えた。


「あれがビクレストだ」


 そういうイマルに促されて街への道を進んで行く。


 ホントに高い壁だなぁ。村にはこの半分の石垣もないし、柵しかない部分がはるかに多いのに。


「イマル!」


 人が多くなった街道を歩いていると、そんな声が聞こえて来た。走って来るのはこれまた長身の鎧姿の男のひとだ。


「何だ?イチェン」


 どこか嫌そうな顔のイマル。


「心配したぞ。『オーガ盗賊団』の単独討伐なんて、良かった。あきらめて帰って来たんだな」


 そういう男。


「諦める訳がないだろう。ちゃんと討伐してきた。助っ人に助けられたのが大きいが」


 突き放したようにそう言うイマル。あ、男が僕を見た。


「君が助っ人?まだ子供じゃないか」


 胡散臭そうに僕を眺め、舌打ちをする。


「ケッ、貴族か?それとも騎士か?イマルが美人だからすり寄りやがって!」


 と悪態をつかれたけど、そりゃあ、母さんほどじゃないけど、イマルは美人だよ?母さんほどじゃないけど。



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