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3・ごめんね?僕、童貞じゃないんだ

 街道に設けられた宿場町はやっぱり豪華だなぁ


 この街道は東西をつなぐ幹道なんだっけ?ものすごく重要で人の往来も多い。もちろん、頻繁に警備の兵士や依頼を受けた冒険者が往来しているらしいと父さんのメモ書きにある。


「どこの宿が良いとかは書いてないなぁ」


 できればそこまで書いておいて欲しかったけど、仕方がない。それに、あんまりお金を使えるわけではないので適当に見繕った宿に泊まった。


 久しぶりの温かい食事にホッとしたのは言うまでもない。でも、ちょっと肉がおいしくないような?やっぱり山の中の村って新鮮な肉が食べられる贅沢な場所なのか?父さんもそんな事言ってたし。


 でも、結界で魔力を使う必要もない安全なところで眠れたのは大きかった。翌日は元気よく旅立つことが出来たんだ。


 しばらく街道をノンビリ歩く。僕だけ急いでいても他の人たちに迷惑だからね。昨日、街道を駆け足で急いだのは失敗だったかなぁ


 そして、宿場町を出て少し行ったところにある村。


「えっと、ここから近道できる間道があるって書いてあるんだけど・・・・・・、あ、あった」


 それは明らかに人が長年歩いて作られた道筋だった。獣道とは違ってハッキリと道筋が見える。


 それにしても、父さんやオヤジさんって、街へ行くのにこんな道を通るのかな?確かにたった数日で街へ行けるのは良いけど、ずっと山犬の気配がしてるようなところばかり通ってるのもどうかと思うんだ。


 少し間道へ入った時に後ろから声が掛かった。


「おい、小僧。その武器と防具置いて行きな」


 振り返ると五人くらいいる。宿場町を出てからずっと後ろを歩いていた人たちかな?それにしても、間道に入る装備じゃないと思うんだけど、この人たち。


「おい、なに変な顔してんだ。言ってることが分からねぇのかテメェ」


 そういきり立ってるけど。だって、そんな装備でそんな事言われてもなぁ


「お兄さんたち、盗賊ゴッコしてるの?大人がやると恥ずかしいよ?」


 まさか、そんなオモチャみたいな装備で盗賊だって言われても、別に怖くも無いんだけど。


 着ているのは革鎧っぽいけど、山犬に引っかかれたら破れるほど薄いし、持ってる剣なんて、オヤジさんが打った鍬や包丁の方が強いんじゃないかな?オヤジさんが見たら怒って打ち直すんじゃない?


「んだとコラァ」


 まあ、ゴッコだからここで怒った風にしないと話にならないのかな?五人はいきりたって僕を囲んだ。


「オイ、今のうちに言うこと聞きやがれ。俺を誰だと思ってんだ?あァ」


 怖そうな顔作ってるけど、村を襲って来た盗賊はこんな迫力ない造った怒り顔じゃ無かったなぁ


「何暢気な顔してんだこのガギャ!」


 そう言って一人が剣を振り上げた。う~ん。型も何もないなぁ。そんなんじゃ山犬も追い払えないよ?


 遅い振り下ろしをノンビリ眺めて避ける。


「テメェ!」


 怒ったふりしてるけど、僕はこの人たちと遊んでる時間は無いんだけどなぁ


「ねぇ、急いでるから遊ぶなら他を当たってよ」


 そう言って囲みの隙間を抜けて間道を進んで行く。


「待てやコラァ」


 どうやら弓を持ってるのが居たらしい。矢が飛んできたので取ってみたけど、あれ?


「これ、ホントに毒塗ってない?」


 大した毒じゃないんだけど、毒には違いない。遊びで使うようなもんじゃないんだから、ホントに危ないよこの人たち。


「おま、素手で取りやがった」


 驚く五人。でも、取れるでしょ。このくらいできないと小鬼のアーチャーの矢を避けるなんて出来なんだけど。


「もう容赦しねぇ。死にやがれ!」


 と言って一人が走って斧を振り上げる。う~ん、そんな粗悪な斧だと無駄に力が要るし、正確に振り下ろすの大変じゃないかなぁ?


 もちろん避けたけど、途中で軌道が変わった。


「ふごぉ」


 でも、そもそもが遅いから意味が無いんだよね。僕は片手で相手が振るう斧の柄を握って振り下ろした速度を生かして相手を放り投げてあげた。


「なんて奴だ」


 驚いてるけど、こんなの基本じゃないの?小鬼の方が力があるから、このくらいできないと相手に出来ないよ?


「お兄さんたちと遊んでる暇はないから。じゃあ」


 驚いている隙に僕は走り出した。余計な道草だったなぁ


 しばらく走っていると何だかまた人が居るようだ。


 それも、襲われてるのかな?


 近づいていくと、一人を取り囲んでる集団が見えた。こんな所で盗賊ゴッコかな?あ、でもこれは装備もちゃんとしてるから本物の盗賊かもしれない。


「ヒヒヒ、もう逃げられんぜ」


 そんな声が聞こえた。囲まれている人も必死そうだ。よく見ると盗賊は数人倒れているみたいだ。


 一斉に襲い掛かられてしまった。けど、あの襲われている人だけ僕に気付いてるみたいだね。素通りは出来ないなぁ


「ねえ、オジサンたち」


 僕はその盗賊っぽい人に声を掛けた。


「なっ!」


 いや、襲うのに夢中で気付いてないとか、山犬にも襲われちゃうよ?


 そして、驚いた盗賊っぽい人はいきなり襲って来た。うん、さっきのごっこ遊びとは違って本物だ。


 でも、僕が剣を抜いて弾くとあれ?剣が切れちゃった。よっわ、粗悪品過ぎだよ。さっきのオモチャよりはましだけど。


「なかなか腕に自信がありそうだな、ガキ。その手の物好きな奴も居るからお前もしっかり相手してやるよ」


 と言って醜く嗤う。うわ、本物だ、このオジサン。


「ヒャヒャ、ぼくチン怖いのかな?ほら、死にたくなけりゃあ武器捨てな!」


 そう言って取り囲んでくる盗賊たち。


「ごめんね?僕、殺人童貞じゃないんだ。オジサンたち、死んで?」


 本物だと分かった以上、遠慮はいらない。父さんや母さんほど徹底できないけど、この人たちはしっかり蹂躙してあげないとね。それにしても、初めて盗賊狩りに連れていかれた時には眠れなかったなぁ


 母さんの剣舞ほどきれいじゃないけど、二、三回舞ったら囲んでた盗賊はみんな事切れている。う~ん、剣も斧も槍もホントに粗悪品ばかり。鎧も見た目ほどの能力無いんじゃないかのな?


「くっ、殺せ!」


 ちょっと考えているとそんな声が聞こえた。あ、そうだ、襲われてる人が居たんだっけ。


 

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