表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2・知らない魔物の名前を聞いたんだけど

 野営なんて一人でするのは危険だ。


 でも、僕はその極意を父さんから学んだ。山で野営する事は簡単じゃないけれど、僕には可能な技がある。


「セーフティ」


 そう、何のひねりもない単純な事。結界張れば良いんだよ。


 もちろん、食事を済ませたらちゃんと火は消している。火を見て集まって来られたら困るからね。小鬼なんて馬鹿じゃないから焚火なんか見つけたら群れを成して襲って来かねないんだって。そんなの単独で撃退できるのは父さんやグローインのオヤジさんくらいだよ。あ、母さんも出来るんだっけ?


 だから、僕は大人しく結界張ってなるべく気配を消して寝ることにした。


 翌日起きたらお日様の方向を確認する。


 うん、方向はだいたい分かった。次は川を探して歩こう。


 一山超えたという事は、もうそこまで高い山も険しい渓谷もないだろう。浅い沢や小さな川をいくつか超えながら進んで行く。


 高度を下げながら歩いていくと見付けた。目的の川で合ってるんじゃないかな?


 さて、川を見つけた。色も父さんの地図の説明通りだね。しばらく川沿いを歩いて、川が大きく蛇行している地点までやって来た。


 どうやらここでもまた直登で近道するらしい。きっと川が大きく蛇行してるんだね。


 山を登っていくと、やはり小道に出くわした。今度は確実に人道じゃない。


 その道はどうやら尾根を川へ向かっているので無視して進む。


「ん?山犬かな」


 それにしても、気配を消そうともしない山犬だね。そんなんじゃ獲物に逃げられ放題なのに。しかも一頭じゃなさそうだ。


 気配を消して山犬に近づいていく。まだ気が付かないとかトンだ怠け者だなぁ。


 そして、見えた姿は山犬で間違いない。しかも、何か狩りでもしているのかこちらを見てすらないんだけど、追ってる獲物が分からないなぁ


 そこで、ワザと山犬に見つかるように音を出してみた。


「あ、来た来た」


 ようやくこちらに気が付いた山犬の数頭が一気に飛び込んで来るけど、おっそいなぁ~、まるで狩る気が見えない。そんなんじゃ狩られるだけじゃないか。

 僕は餞別にもらった剣を振りぬいて襲って来た三頭を薙ぎ払った。うん、さすがオヤジさんだ。切れ味も良いし振りぬいてもしっかりコントロールできるバランスしてる。木こりの斧だって疲労軽減しながら作業効率三倍らしいし、凄いよね。


 そう思いながら倒した山犬をみる。うん、山犬で間違いないんだけど、何でこんなに遅いんだろう?


「ほい!そんな殺気向けながら突っ込むとか自殺行為だよ?」


 後ろから襲って来た山犬を振り返らずに斬り倒す。ホント、よっわいなぁ、この山犬たち。


 もちろん、ここで解体なんてやってる余裕はないから処理はスライムと山犬に任せよう。


 僕は山犬を放置してそのまま進んで行く。


 するとまた気配がある。今度も複数だ。


 カサカサ、ガチャガチャ音がしているから人かな?


 しばらく歩いていると前から数人の防具を付けて武器を持った人たちが走って来た。


「え?」


 相手が僕に驚いている。どうしたんだろう?


「おい、こんな危ない山で何してんだ。お前も逃げろ!ブラックウルフに見つかった」


 とか叫んでる。


 という事は、さっきの山犬はそのブラックウルフを警戒していたのかもしれないね。それにしたって、雑に僕を襲う理由にはならないんだけど、何でだろう?


「おい、ヤバいぞ。ほら!」


 とは言っても、そっちへ行くと山犬が網張ってたんだけど、まあ、僕が倒したから安全だとは思うんだけど。そうか、聞いたことない魔物が居るのか、ちょっと面白いかも。


「大丈夫だよ。だぶん?」


 彼らにはそう言って先を進んだ。呆れていたけど、彼らの装備は僕の装備より劣る。魔物討伐してる麓の村人かな?


「チッ、知らねぇぞ!」


 そう言って走り去っていった。


 そしてしばらく進むと前方から気配がして来た。


「あれ?ただの山犬じゃないか」


 もしかして、山犬もブラックウルフに追われてるのかな?


 と思ったけど、殺気を僕に向けて襲い掛かって来た。逃げてるのにものすごく余裕がある奴らだな。


 ちょっと呆れながら剣を抜いてそいつらを斬り倒していった。ホント、この剣凄いな。母さんが言っていたダンスを踊る事も出来るんじゃない?剣舞って言うんだっけ?そのくらいバランスが良くて振りやすい。

 ちょっと母さんが踊ってくれた剣舞って奴を真似てみる。うん、さすがオヤジさんが打った剣だなぁ。ぜんぜん体の芯がぶれないし、思い通りに剣を振るえる。凄い。


 そんな事をしていると、ブラックウルフに出会うことなく峠を越えたらしい。ブラックウルフって強い魔物、ホントに居たのかなぁ


「やった。今日は街道に出られる!」


 だって、目の前にもう山が見えないんだ。って事は、大きな峠を越えて平野に出たって事だ。


 喜んで斜面を駆け下りていくと、やった。二日で抜ける事が出来ちゃった。これで冒険者になっても山の探索がすぐに出来るんじゃないかな?もちろん、山の中は危ないって知ってるから慢心はしない。絶対。


 夕暮れより早くに街道に出ることが出来た。ちょっと変なところから出たから街道を歩く人らに驚かれたけど、気にしない気にしない。


 街へ行くまでに宿場町みたいなところをひとつ通るんだっけ。今日はそこで泊まれると良いなぁ


 さ、速足で向かえばきっと泊まれるはず!

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ