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第83話:決着

「え……?これで終わり……?」


 地に倒れ伏したサイクロプスを見てもキックにはまだ信じることができなかった。


 《蒼穹の鷹》があれほど攻撃しても全く効かなかったのだ、今この瞬間に起き上がってきたとしても全く不思議じゃない。


 しかしサイクロプスはピクリとも動かない。


 やがてその身体が魔素へと分解されていった。


 同時に辺りを覆っていた領域封鎖(ロックダウン)も消えていく。



「ほ……本当にサイクロプスを倒したのか……?」


「俺たちがやったのか?」



「やったんだよ!俺たちがサイクロプスを倒したんだ!」


「本当かよ!本当にやっちまったのかよ!」


「「「「「うおおおおおお!」」」」」」


 信じられないと言うようにお互いを見ていた獣人たちの中から次第に歓声が上がっていく。


「おめでとう、見事に倒したね」


「ル、ルークさん、本当に言うとおりにしたら倒せたんすけど……どういう訳なんですか?」


 肩を叩かれたキックが驚きの表情でルークを見上げる。


「魔獣は体内に核を持っているのは知ってるよね。サイクロプスは特殊な体質で核が2つあるんだ。そして攻撃を受けるとその核が攻撃された反対側に移動するという体質も持ってるんだよ。だから幾ら攻撃を受けても倒せないしすぐに回復するんだ」


「そ、そうなんすか!?」


「そう、ただし核は胴体から他の部位には移動できない。なのでアルマに正面から攻撃させて背面に核が移動したところで君たちに攻撃してもらったというわけ」


「す……凄え……そこまでわかってたんすか」


「彼らが解析する時間を作ってくれたからね」


 ルークの視線の先には呆然とする《蒼穹の鷹》の姿があった。



「ば……馬鹿な……獣人どもがサイクロプスを倒した……だと?」


「あり得ねえ!こんなことはあり得ねえ!でたらめだ!でまかせだ!」


 額に血管を浮き上がらせたグスタフがルークの胸倉を捕まえた。


「てめえが何か手を回しやがってたに違いねえんだ!こんなのは認めねえ、認めねえぞ!」


「手を貸したのは事実ですがあくまで倒したのは獣人の皆さんです。そもそも手を貸さないとは言ってないですし」


「ふざけんじゃねえ!くだらねえ御託なんざ聞きたくねえんだよ!てめえにはいい加減ムカついてんだ!これ以上グダグダ言ったばっ……!」


 グスタフの言葉はそこで止まった。


 アルマの拳がきれいにその顎を撃ち抜いたからだ。


 膝から崩れ落ちて昏倒するグスタフ。


「ルークに手を出すなら私が相手だから」


「おお~、流石は漆黒の狂戦姫(バーサーカー)


 シシリーが小さく拍手をしている。


「き、貴様ら!我々と戦う気なのか!?」


「まさか。先ほどのは……意見の相違から来るちょっとした衝突というやつです」


 剣を抜き放って身構えるランカーに対してルークが肩をすくめてみせる。


「それよりも獣人たちに最終討伐権があるということでよろしいですね?まさか勇者であるあなた方がギルドのルールをないがしろにするということはないですよね?」


「ウヌヌ……」


 言葉を詰まらせるランカー。


 ルークは会話が終了したと判断して後ろを振り向いた。


「そう言えばサイクロプスの遺留物はなんでしたっけ?」


 サイクロプスは既に魔素へと変換されており、そこには一抱えほどもある球体が残っていた。


 半透明の乳白色をしており、淡く光を放っている。


 それを見たシシリーが飛びかからんばかりにその球体へと駆け寄った。


「こ、これは……!サイクロプスの眼球、サイクロナイトと呼ばれている宝玉だよ!」


「サイクロナイト?高価なんすか?」


「高価なんてもんじゃないよ!耐魔効果がとんでもなく高いうえに磨いたら宝石にもなるから貴族が護身用の魔具にするのに重宝してるんだから!私もこんなにでかいのは初めて見たよ」


 不思議そうな顔をするキックに口から泡を飛ばしながら説明する。


「そう言えば私も持っていたっけ」


 アルマが髪を掻き上げた。


 イヤリングに小さな宝石が付いている。


「誕生日プレゼントにお父様が買ってくれたものなんだけど、確かこの石がサイクロナイトで金貨10枚はすると言ってたような」


「じゅっ……!」


 キックが目を丸くした。


「シシリー、この大きさだとどのくらいの価値になるかわかるかな?」


「うーん……私も宝石関係にはあまり詳しくないんだけど……」


 ルークの質問にシシリーが眉をしかめながらサイクロナイトを見つめる。


「この大きさならおそらく20キロはあるでしょ……加工前だとしても金貨200……いや300枚はくだらないと思う」


「300……!?」


 獣人たちが絶句した。


 金貨300枚と言えば村が3年は食うのに困らない額だ。


 そしてその額に眼を色を変えたのは獣人たちだけではなかった。


 ランカーが、エセルが、レスリーが目を爛々と輝かせながらサイクロナイトを見つめている。



「キック、これは君のものだ」


 ルークはそんな《蒼穹の鷹》を横目にサイクロナイトをキックに手渡した。


「正しくはサイクロプスを倒した君とボルズのものだね。シシリーも言ったようにこれはかなり価値があるものらしいからきっと君たち獣人の役に立つと思うよ」




「これが俺の……」


 キックは手渡されたサイクロナイトをじっと眺めていたが、やがて意を決したようにルークの方を見た。


「これは受け取れないっす。ルークさんが持っていてください」



いつも読んでいただきありがとうございます!


「面白い」「もっと読んでみたい」と思われたら是非とも広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へとお願いします!


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