第183話:陰謀の瓦解
「は?え?えぇっ!?……キ、キールゥ!?なぜお前がここに!?」
キールの存在に気が付いたオミッドの顔がみるみるうちに真っ青になっていく。
「エラントに襲われていたところを助け出して僕らと一緒にいたんです。エラントが神獣を目覚めさせたという彼女の証言は真実です。僕が保証します」
ルークは改めてオミッドに向き直った。
「ウィルキンソン卿、エラントはその後で神獣によって殺されました。どうやってあなた方は彼から救援要請を受け取ったのですか?」
「そそそ、それは……」
オミッドの顔を滝のような汗が流れ落ちていく。
「ふざけたことを言うな!」
ダンデールが大声で吠えるとルークを睨み付けた。
「エラントが死んだ?世迷言を言うでないわ!我々は確かに救援要請を受け取ったのだ!間違いはない!おおかた貴様らがエラントを殺してしらを切っているのだろうが!」
「……そ、その通り!我々は確かにエラント君から助けを求められたとも。その後彼に何が起こったのかは知らぬが、それは我々の関与するところではない!」
ダンデールの意図を汲み取ったオミッドが口裏を合わせてくる。
「そう来ますか」
ルークはため息をついた。
こうなってしまえばただの水掛け論だ。
こちらがどれだけ言っても突っぱねるだけだろう。
「それではひとまずそれは置いておくとして、これからあなた方はどうなさるおつもりですか?神獣は既に封印されています。あなた方がこの島に留まる理由はもはやないのでは?」
「「ぬぐっ!」」
ルークの言葉にオミッドとダンデールが言葉を詰まらせる。
「そ……それは……」
顔を見合わせていた2人はやがて何かを決意したように振り返った。
ダンデールが断固とした口調で突っぱねる。
「いいや、まだ神獣はこの島にいる。この件は片付いてはいない」
「ですから神獣は既に封印されているのですよ。なんでしたら現場まで案内しましょうか?」
「その必要はない」
そう言ってルークを見据えるダンデールの目には凶悪な光が宿っていた。
「貴様らをここから動かすつもりはないからな」
いつの間にかルークたちは武器を構えた兵士たちに囲まれていた。
「……これはどういうことですか?」
「言っただろう、神獣はまだ片付いていないのだと。そして貴様らは悲しくもその戦いに巻き込まれて死んでしまったというわけだ」
ダンデールが不敵な笑みを浮かべる。
ルークはオミッドに振り返った。
「ウィルキンソン卿、あなたもダンドーラ卿に加担するのですか?」
「し、仕方がないのだ!き、貴様が余計なことをするのが、わ、悪いのだ!」
オミッドは冷や汗を拭いながらルークを睨み付けた。
「大人しく王都へ戻っていればよかったものを!余計なことに首を突っ込むからこうなるのだ!」
「それでは島を守るために来たというのも僕らを助けに来たというのも全て口実で元々この島を支配するために侵攻してきたことを認めるのですね」
「賢しいことを言うな!小僧が!」
ダンデールがルークを睨み付ける。
「我々がどれだけの準備をしてきたと思っている!この計画にどれだけ注ぎ込んできたかわかるか!こんなところで止まるわけにはいかんのだ!」
「うわ、逆切れしてるよこの人」
「やかましい!そもそも貴様らのような未開人にこの島は不相応なのだ!これだけ高純度の魔石を何故貴様らに独占させねばならん。どうせ我々が買い取っているのだ、採掘まで我々の手で管理したほうが効率的なのは当然の道理だろうが!」
呆れているキールに向かってダンデールが吠えた。
「勝手なことを……島民の同意が得られないことはわかっていたからこんな行動に出たというわけですか。エラントをそそのかして神獣を目覚めさせ、それに乗じて軍を送り込んで島を支配する予定だったのですね」
「それもこれもあのエラントとかいう若造が無能だからだ」
ダンデールは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「いつまで経っても島をまとめ上げられぬからこんな強引な手を取る羽目になったのだ。何が僕がこの島の王になる、だ。しょせんは寒村のガキ大将にしかなれぬ器よ」
ルークはのべつまくなしに身勝手なことをまくしたてているダンデールから視線を外すと憐みのこもった眼でオミッドの方を見た。
「ウィルキンソン卿、まさかあなたまでその計画に加担しているなんて」
「し、仕方ないだろう!こんな片田舎の監督官の稼ぎなどたかが知れている!貴族の体面を保つには何かと入り用なのだ!」
オミッドの顔は羞恥と怒りで真っ赤になっている。
「だからダンデールと組んだというわけですか。仲が悪いように見せかけておいて裏で結託していたのですね」
「その通りだ。紛争になればなるほど魔石の需要は高くなるからな。この島の魔石取引は我々が独占しているから価格も思うがままというわけだ」
ダンデールが得意そうに胸を張る。
「しかし魔石取引は国に厳しく管理されているから利益といってもたかが知れている。ならばこの島を我々のものにしてしまえばいい、そう思うのは当然の帰結であろう。ともかく我々はもはや引き返せぬところまで来ている。知られてしまった以上は生かして帰すわけにはいかぬのだ」
オミッドが周りにいる兵士を腕で示した。
「こちらの兵士は1000名を超えるのだ。しかも魔族もいる。ルーク、貴様は神獣を倒したそうだが、さしものの貴様でもこの数を相手にはできまい!」
「1000名だあ?お前ら本気なのかよ!?」
イリスが呆れたように髪を掻きむしる。
「なんでそれっぽっちしか用意してないんだよ!そんなんじゃ退屈しのぎにもならないだろ!やる気あんのか!」
「な、何故魔族がこんなところに?ダ、ダンデール、これはどういうことなのだ!私は何も聞いていないぞ!」
「そんな奴、儂も知らんぞ!おそらく用心棒として雇っただけだろう。こっちには魔族が200名はいるんだ、何をおびえる必要がある」
ダンデールは恐怖にひきつるオミッドに檄を飛ばすとイリスを睨み付けた。
「同族と言えども敵対する以上容赦はせんぞ」
「同族だあ?」
イリスが指をボキボキと鳴らす。
「近頃の魔族は躾がなってないみたいだねえ。これは厳しく教えてやる必要があるね」
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