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第179話:封印

 ルークの左腕から放たれた魔力の槍はまっすぐクラーケンの眉間に突き刺さった。


 クラーケンの体が硬直し、体表が一瞬で真っ白になる。


 そのままぶるぶると震えたかと思うと地響きと共に倒れこんだ。


「や……やったか……?」


 額の汗をぬぐいながらルークが呟く。


 傍から見れば一撃で決着がついたように見えるがギリギリの勝負だった。


 あと数秒遅ければやられていたのはルークの方だったかもしれない。


「ルゥーーークゥーーー!!」


 そこにイリスが飛び込んできた。


 ルークを砂浜に押し倒すとその頭を胸の間に挟むように抱きしめた。。


「あたしは信じてたよ!ルークなら必ずやってのけるって!」


「ちょ……ししょ……まだ……」


「ルーク!!」


 そこに崖を駆け下りてきたアルマたちがやってきた。


「マジかよ……本当に神獣を倒しやがったのかよ」


 浜辺に横たわる神獣を見てガストンが絶句している。


 ガストンだけではない、やってきたみながその光景に言葉を失っていた。


「これは……本当に貴様が倒したのか……」


 ゲイルはなおも信じられないというように歯を噛みしめた。


「僕1人では無理ですよ。リヴァイアサンは師匠が倒しました」


 ルークはそう言うと後ろを振り返った。


 地面に倒れ伏したリヴァイアサンはまるで山そのものだった。


 体格は自分とさほど変わらないイリスがどうやってこの巨大なリヴァイアサンを倒したのか、詳細はルークにもわからない。


 まるで部屋の片付けでもしたかのように、気が付けばイリスはリヴァイアサンを討伐していたのだ。


 改めてルークは己の師匠の凄さを実感していた。


「しかし、クラーケンの方は貴様がやったのだろう」


 絞り出すように呟くゲイルの拳は真っ白になるほどに握りしめられていた。



 この島に来てサイフォスの元で厳しい修行に明け暮れてきた。


 それこそ死にそうな目に遭ったことすら枚挙にいとまがないほどだ。


 それを全て乗り越えてきたのもひとえにもっと強くなりルークに勝つという強烈な執念のなせる業だった。


 そして強くなっているという自覚もあった。


(それでも……それでも俺は未だ自分は奴に届かないのか……!)


 皮肉なことにゲイルは強くなったが故に己とルークの力の差を実感することになっていた。

 今の自分ではおそらくクラーケンを倒すことはできないと己の実力を冷静に観察できるほど強くなったが故に、彼我の力量差も認識せざるを得なかった


 目の前にそびえるクラーケン、それは今のゲイルとルークを隔てる実力の壁そのものだった。






「ルーク!!!」


 アルマが飛び込んできた。


 イリスを弾き飛ばすようにルークに抱きつく。


「ルーク!良かった……無事で……」


 イリスと同じようにルークを胸にかき抱く。


「ア、アルマ……苦し……」


 たて続けに胸に頭をうずめられたルークの顔が真っ赤になっている。


「あ、ごめんなさい。でも、本当にルークが無事でよかった」


 慌ててルークの頭を離したアルマは改めてルークを見つめながら目頭を拭った。


 そんなアルマにルークが笑顔を返す。


「うん、なんとか終わらせられたよ」


「ルーク……」


「アルマ……」


「はいそこまで」


 見つめ合う2人の間にイリスが割り込んできた。


「そういうのはもう少し後でやってくれないかな。いや、あたしの後でやってくれないかな」

「なんでイリスの後なのよ、山の外では私の方が優先って約束……」


「そういう話じゃないっての」


 イリスがアルマの鼻をつまむ。


「まだ終わっちゃいないんだよ」


「どういうこと?」


「クラーケンはまだ完全に倒したわけじゃないんだ」


 ルークがよろよろと身を起こす。


 さきほどの魔法を放つために体力も魔力も使い果たしていた。


 それでもクラーケンを完全に倒すには至っていない。


 今は急所に強烈な一撃を食らって一時的に気を失っているだけだ。


 その証拠に神獣が目覚めた時から続いている未だに地鳴りは収まっていない。


 放っておけばいずれ島は崩れ落ち、海へと没することになるだろう。


(その前に次の一手を打っておかないと……)


 一歩踏み出そうとしたところで足がもつれてたたらを踏んでしまう。


 それを抱き止めたのはイリスだった。


「無茶しなくていいよ、あとはあたしに任せておきなって」


「しかし……」


「いいんだよ、ルークはやれることをやったんだ。ここから先はあたしの仕事だよ」


 イリスはルークに肩を貸しながら片手を天に掲げた。


「みんな下がってな!でないと怪我をするよ!」


 イリスが上げた手の先に数十層もの魔法陣が現れる。


 魔法陣は2体の神獣を包み込んで半球上の封印を形成していった。


 同時に周囲の磯や崖を形成していた岩石が宙に浮きあがるとクラーケンとリヴァイアサンの周囲に積みあがっていく。


 やがてそれは巨大な円蓋となって2体の神獣を完全に覆いつくしていった。


「な……なんだ……これは……!」


「凄え……!」


 人間には到達しえない絶対的な力を目の当たりにしてゲイルたちは言葉を失っていた。


 岩石の円蓋が完成した時、地鳴りは収まっていた。


「はい、完成。これでこいつらは起きてこないよ」


 イリスが笑顔と共に振り返った。



いつも読んでいただきありがとうございます!


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