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第178話:最終決戦

「ルーク、さっきも言った通りそっちの蛸は任せたからね」


 指を鳴らしながらイリスがリヴァイアサンの方を向く。


「わかりました。師匠もお気をつけて」


「誰に言ってんだい!」


 イリスは吠えるなり空高く飛び上がった。


 そのままリヴァイアサンに強烈な横蹴りを浴びせる。


 天を衝くリヴァイアサンの巨体が横薙ぎに倒された。


 海中に逃げ込もうとするリヴァイアサンの尻尾にイリスの指が食い込む。


「逃がしゃしないよ!」


 数十メートはあるリヴァイアサンを振り回すと崖に叩きつけた。


 振動が島全体が震わす。


「ゴ ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」


 咆哮と共に逃走を図ったリヴァイアサンは不可視の壁に阻まれてもんどりうった。


「言っただろう、逃がさないって」


 ゆっくりとイリスが歩み寄っていく。


 島全体が神獣の領域封鎖(ロックダウン)で閉ざされているが、更にその内部でイリスの領域封鎖(ロックダウン)が神獣たちを閉じ込めていた。


「久しぶりに下界で暴れるんだから少しは楽しませておくれよ?」


「ギャ ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」


 リヴァイアサンの咆哮はいつしか悲鳴へと変わっていた。





「……僕が心配するなんておこがましい話だったな」


 イリスの戦いぶりにルークがため息をつく。


 あれで魂の一部のみというのだから本体が本気を出したらどこまで強いのか想像すらできない。


「いけないいけない、僕は僕のやるべきことをしないと」


 イリスの戦いに見とれていたルークは頭を振るとクラーケンに向き直った。


 至近距離から見るクラーケンはさながら肉色の城壁のようだ。


 のたうつ巨大な腕は数千の軍勢が束になっても敵わないだろう。


「本当に僕にできるのかな……」


 苦笑しながらルークは左手を地面に置いた。


泥濘変移(スワンプ)!」


 ルークのいる場所を中心に地面が泥へと変わっていく。


 クラーケンが自重で泥の中へと埋まっていった。


 が、8本の腕を器用に動かしながら泥の中を這い出して来る。


「当然そうなるよね。でもこれでしばらくはこちらを攻撃はできないはずだ。崩壊コラプス!」


 ルークの魔法で頭上の断崖から岩石が崩れ落ちていく。


 岩石は空中で刃物のような形状に変わってクラーケンに降り注いだ。


巌石槍(ボルダースピア)!」


 巨大な槍となった岩石がクラーケンの腕を貫く。


「ケエエエエエエエッ」


 クラーケンの甲高い絶叫が響き渡る。


 同時に漏斗から真っ黒で粘性を持った液体が噴射された。


「危ない!」


 クラーケンの放った墨状の液体はルークが張った防御魔法をあっさりと打ち破る。


 墨がかかった岩が煙を出しながら溶けていった。


 リヴァイアサンと戦っていたイリスが警告を発する。


「気を付けるんだよ!そいつの墨は鉄だろうか肉だろうがなんでも溶かすからね!」


「は、はいっ」


 すんでのところで墨をかわしたルークだったがクラーケンの持つ未知の能力に背筋も凍る思いだった。


(さすがは神獣、まだこんな能力を隠していたのか!)


 クラーケンを縛り付けていた岩の槍も墨で溶け始めている。


(思ったよりも早く拘束が解けてしまいそうだ。これは急がないと)


 油断する間もなくクラーケンの体表の模様が変わっていく。


(雷撃か!)


 対物理防御魔法を展開したルークの周囲に雷撃が降り注いだ。


 直撃したら一瞬で全身が黒焦げになる威力だ。


 強靭且つ自在に動く8本の巨大な腕にあらゆるものを溶かす墨と広範囲攻撃の雷撃、そして強力な魔力耐性、クラーケンはそれ一体で要塞と軍隊を兼ね備えたような存在だった。


「本当にとんでもない相手だね。でもこれで大体わかったよ!」


 ルークは雷撃が収まった隙に一気に距離を詰めていった。


泥濘変移(スワンプ)!」


 クラーケンの体が再び泥の中へと沈んでいく。


 泥の中からもがき出ようとするクラーケンの漏斗が大きく膨らんだ。


 しかしそれはルークの想定内だった。


瀑柱(ウォーターピラー)!」


 魔法で生み出した巨大な水の柱がクラーケンの墨を阻む。


 その隙にルークは左手の親指を掴んで勢いよく引っ張って投擲した。


 アダマンスライムで出来た義手が細いワイヤーとなってクラーケンの胴体に絡みつく。


 ワイヤーの片方を地面に突き刺すとルークは大きく飛び退り、詠唱を開始した。


 クラーケンが再び雷撃を放つために大きく体表を震わせた。


 しかし何も起こらない。


「無駄だよ。アダマンスライムの素材は電気抵抗率がほぼゼロなんだ。放電するより先に大地に流れていくだけだよ」


 雷撃ができないことに気付いたクラーケンが大きく体をくねらせる。


 しかしアダマンスライムのワイヤーは動きに合わせて伸びていくので全く切れる様子がない。


 その間にもルークは詠唱を続けていた。


 詠唱に合わせて周囲の岩が淡い光を放っていく。


 オステン島の魔素を多く含む岩が反応しているのだ。


 岩から漏れ出た魔素の光がルークを中心に渦巻いていく。


「そうだルーク、あんたならできるよ」


 横目で様子を見守っていたイリスが笑みを浮かべた。


「ブオオオオオオッ」


 凄まじい呼吸音と共にクラーケンが力任せに体を持ち上げた。


 魔力の奔流でアダマンスライム製のワイヤーがちぎれ飛ぶ。


 同時にルークの目が見開かれた。


 左眼の義眼が赤い閃光を放つ。


穿孔衝撃魔槍(フルバーストスピア)!」


 ルークの魔法が発動した。



いつも読んでいただきありがとうございます!


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