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第166話:オステン島上陸

 ルークたちを乗せた船はオステン島の人里離れた沖合にたどり着いた。


「村の港は見張られてるから普通に行ったら捕まっちゃうんだ」


 小舟をおろしながらタイラが説明する。


 島に上陸した3人は森の中を進んでいった。


「キール姉ちゃんは村の奥にある牢屋に閉じ込められてるんだ。村の中を通っていくわけにはいかないから裏の崖から回り込んでいかないと」





「待った、誰かがついさっきここを通ったみたいだ」


 森の真ん中でルークが足を止めた。


 地面に手を当てて詠唱を行うと足跡がほのかな光を放つ。


 足跡を見たルークの顔に緊張が走る。


「これは……ガストンの足跡だ。しかも手下まで連れている」


「ガストンが!?」


「シッ、静かに!まだ近くにいるかもしれない」


 驚くタイラの口をルークが慌てて抑える。


 ルークは更に慎重に足跡を調べた。


「人数は6、いや8人……足跡の歪みからしてみんな武装しているのは間違いないだろうね。そしてリヴァスラ氏族の村がある方角から真っすぐあちらに進んでいる」


「……あっちは牢屋がある方向だよ!まさかガストンはキール姉ちゃんを狙って!?」


「今ならまだ間に合うはずだ。急いで止めに行こう」


 3人は足音を殺しながら駆け出した。





    ◆





「ガストン、本当にキールを攫いに行くのかよ」


「俺たちだけで勝手に来ちまって良かったのか?族長たちが良い顔しねえぜ」


「うるせえな、行くといったら行くんだよ!」


 不安そうな仲間の言葉にガストンが声を荒げる。


「エラントの野郎、ふざけたことをしやがって」


 ガストンはギリギリと歯ぎしりをしながら森の中をずんずん進んでいった。


 キールがエラントに捕まっていることは親しいクランケン氏族の人間から聞いていた。


 今は対立しているとはいえクランケン氏族とリヴァスラ氏族は同じ島に暮らす者たちであり、その関係は傍から見る以上に複雑だ。


 氏族間では憎しみ合っていてもお互いに親族もいれば友人もいる。


 一触即発とはいえお互いの状況はほぼ筒抜けと言ってよかった。


「いいか、この森を抜けた崖の下の牢獄にキールは閉じ込められてるって話だ。見張りがいるだろうが関係ねえ、歯向かう奴らはぶっ殺したって構いやしねえ」


「それは困りますね」


 ガストンたちの目の前にルークが姿を現した。


「な、なんだてめえは……って、この前の!」


 突然現れた人影にギョッとしたガストンだったが、それがルークだと知るや否や目をむきながら食ってかかってきた。


「キールが捕まっていることを既に知っているのは驚きですね。とはいえあなたたちに出てこられると事態がややこしいことになりそうなのでここは引き下がってもらえないでしょうか」

「ふざけんじゃねえ!誰がてめえに指図されるかよ!」


「そう言うと思っていました。説得が通じない以上実力行使しかないですね」


 ルークが指を鳴らす。


 しかし何も起こらない。


「てめえ、今のは何のつもりだ?」


「あれえ?本来だったらこれで眠り込むはずなのに……」


 指を鳴らしながらルークが不思議そうな顔をする。


 その間にガストン一行がルークたちの周りを取り囲んだ。


「へ、何が《ベヒーモス殺し》だよ、とんだ虚仮脅(こけおど)しじゃねえか」


 ガストンがせせら笑いながらルークを睨み付ける。


「おおかた誰も知らない土地で強がりたかったんだろうがよお、相手が悪かったな。てめえの方こそケガをしたくなけりゃさっさと失せやがれ。こっちは忙しいんだよ」


「うーん、オステン島の住人は魔法耐性が強いのかな。魔族の血を引いているというのは本当なのかも」


「人の話を聞きやがれ!おい、てめえらこいつらを身動きできねえようにしておけ!」


「「「おおっ」」」


 業を煮やしたガストンの言葉を合図に仲間が一斉に襲い掛かってきた。





    ◆





「つ……強え……」


「な、なんなんだよこいつら……化け物か……」


 数分後、地面にはガストンと都の仲間たちが転がっていた。


「化け物なんて失礼しちゃうわね」


 アルマが服の埃を払いながら憤慨している。


 当然のその体にはかすり傷1つ負っていない。


「ね、姉ちゃん強いんだね……」


 タイラも顔を引きつらせながら驚きを隠せないようだ。


 なにしろ襲ってきた連中のほとんどをアルマが1人で片づけたのだ、驚くなという方が無理だろう。


「痛めつけてしまってすいません。でもここはおとなしく引き下がってもらえませんか?キールは僕らが助けますので」


「よ、余所者のてめえらがなんでそこまでキールにこだわんだ……てめえら人族こそクランケンの連中を焚きつけてるんじゃねえのかよ」


 地べたにはいずりながらガストンがルークを睨み付ける。


 圧倒的な実力差をわからされながらもその目の炎はまだ消えていないようだ。


「それはもちろんキールが僕らの友達だからです」


 ルークはこともなげに答えながら左手をかざした。


 治癒魔法がガストンとその仲間の傷を癒していく。


「それよりも先ほど人族がクランケン氏族を焚きつけているといっていましたね。あなた方は何かを知っているのですか」


「知っているだと?何をすっとぼけたこと……いや、てめえら本当に知らねえのか?」


 ルークたちの表情を見て驚いた顔をしたガストンはやがて半ば呆れたように息をつくと話し始めた。


「しょうがねえ、ここまでやられちまった以上てめえには従うしかねえようだから話してやるよ。今回の大本はクランケンの奴らが魔石を独占したことが始まりなんだ。そしてその裏で人族が糸を引いてやがんだよ」



いつも読んでいただきありがとうございます!


「面白い」「もっと読んでみたい」と思われたら是非とも広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へとお願いします!


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