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第160話:山賊の謎

「貴様の言う通り、確かにこれは妙だな」


 地面に転がるホブゴブリンの死体をひっくり返しながらバルバッサが呟いた。


「何故一介の山賊如きがこれだけの装備を持っている」


 そのホブゴブリンが身に着けているのは鋼で出来たフルプレートアーマーだった。


 手にした剣も使い込まれてはいるものの作りからして安物ではないと分かる。


 ホブゴブリンだけではない、山賊全体がみな不釣り合いな装備で身を固めていた。


「そしてこの魔人、こ奴らはおそらく魔導傭兵だろう」


 動かなくなった魔人を確認しながらバルバッサが話を続ける。


「私を狙ったということは追放魔人か、あるいは私を殺すようにという依頼を受けていたのか、どちらにせよただの山賊が傭兵を雇えるとは思えぬ。誰かが裏にいるのは間違いがないようだ。こうなると1人位生かして捕らえるべきだったな……」


 残念そうに顔をしかめるバルバッサの傍らでルークは山賊たちの装備を確認していた。


「不思議ですね。なぜ彼らはこのような装備を持っているのでしょう」


「それはさっきも言った。おそらく何者かがこの山賊の金主(スポンサー)になっているのだろう」


「それもありますが彼らの装備が妙なんです。これを見てください」


 ルークは立ち上がると山賊の死体を指で示した。


「こちらの剣は魔界で作られたものですが、鎧の方はアロガス王国製です。あちらは武器がアロガス王国のもので防具が魔界のものです。つまり魔族と人族両方の装備を使っていることになります」


「そういうことか……」


 バルバッサが微かに目を見開いた。


 ルークが何を言わんとしているのか悟ったようだ。


「ルーク、どういうこと?それは何か重大なことなの?」


 アルマとキールが不思議な顔をしている。


「武器や防具と言った武装は輸出入が厳しく制限されてるんだよ。特に人族と魔族の間ではほとんど流通がないと言っていいくらいなんだ。なのにこの山賊はその両方を使っていた」


「それって……こいつらは人族と繋がっていたということ?」


 キールが驚いたように息を呑む。


「あるいは魔族と人族両方とだね。しかもこれだけの装備の都合をつけられる人物だ。魔界の装備は詳しくないけどアロガス王国の方はただの装備じゃない、これは軍に正規配備されてるものと同じクオリティだよ」


「こちらの方は本物の軍装品だ。不当に横流しをしたか、軍と関係のある者が裏にいるということか」


 バルバッサが死体を見分しながら顔をしかめている。


「ともあれこれはどちらか一方の問題ということではなさそうですね。単純に金儲けというだけじゃない、他の思惑が動いているような気がします。もっと詳しく調べ……」


「ともかくこれで山賊討伐という当初の目的は果たされたわけだ」


 ルークの話を待たずにバルバッサは立ち上がると凍り付いた川を指さした。


「約束通り貴様らはここで開放してやろう。その川の向こうが人族の国だ、凍っているうちに渡るといい。安心しろ、貴様らが乗っていた船と船員も帰り次第解放してやる」


「は?え、いや……確かにそういう約束でしたが……」


 バルバッサの豹変ぶりに目を白黒させるルーク。


「どうした?あれほど帰りたがっていたではないか。貴様らはもう自由なのだぞ、むしろ用が済んだのならさっさと出て行ってもらおうか。ここは貴様らの国ではないのだからな」


「はあ!?何それ!」


 キールが目を吊り上げてバルバッサに詰め寄っていく。


「さんざんあたしたちを働かせておいて用が済んだら帰れ?いくら魔族のお偉いさんだからってそんなのないんじゃないの?」


「貴様らの心算など知ったことではない。私は私の約束を果たすまでだ。もともと貴様らは招かれざる客なのだ、むしろ手続きに煩わされることなく帰れることに感謝してもらいたいくらいだ」


 しかしバルバッサの木で鼻を括るような態度は変わらない。


「……わかりました。それではこれで失礼します」


 面食らった顔をしていたルークだったが、やがて軽く頭を下げるとアルマとキールを促しながら踵を返した。


「ちょっと、ルーク!どうしたってのさ?なんであんな奴の言うことを聞くのさ!一発くらいかませてやんないと舐められるばっかりだよ!」


「まあまあ、とにかく今は帰ろう。キールだってしばらく島を離れてるんだし、今は早く帰った方がいいんじゃないかな」


「う……そ、それはそうだけど……」


 不承不承認めたキールだったがそれでも納得はしていないようだ。


「ルーク」


 川を渡りかけたルークをバルバッサが呼び止めた。


「借りを作るのは私の主義ではない。いずれきっちり返させてもらうとして今は先の助言の返礼をしてやろう。獅子身中の虫に気を付けるのだな」


「……それはどういう……」


「言うべきことは言った。あとは自分で考えるのだな。まあ貴様のことだ、薄々感づいているとは思うがな」


 バルバッサは一方的に言うと用は済んだと言わんばかりに踵を返し、討伐隊に号令を出した。


「集められるだけ証拠を集めるのだ、この機会に我が領土の膿を全て出し尽くしてやる」




    ◆





「なんなのあいつ!ほんと腹立つ!」


 キールが怒気も露わに山道を歩いていく。


「せめてルークにお礼の一言でも言えっての!命を助けられたくせに!」


「まあまあ、彼も忙しいのでしょう」


「ねえ、バルバッサは何かを知ってるんじゃないの?あの時ルークが言おうとしたのをわざとはぐらかしたように感じたんだけど」


 アルマが横を歩きながらルークに耳打ちをしてきた。


「おそらくね。あそこで止めたと言うことはまだ言葉に出してほしくなかったのかもしれない」


 ルークは小さく頷くと前を見ながら話を続けた。


「それよりも彼が僕らをここで解放したことが気になるんだ。ひょっとしたら僕らを今すぐ帰すためにあんな態度をとったのかもしれない」


「そ~お~?単にあたしたちに嫌がらせで言っただけなんじゃないの?」


 納得いかないように舌を鳴らすキールだった。



いつも読んでいただきありがとうございます!


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