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第123話:一夜明けた後で

「本当に!?」


「うん、そこに持ってきてるよ」


 驚くルークにナターリアは部屋の外を指差した。


 廊下には大きな布の袋が2つ置かれている。


「街の人たちは黒斑熱で苦しんでるだろうから少しでも役に立てるならとナミル村長が持たせてくれたんだよね。村のみんなが街に来るには危険すぎるってことであたしが運んできたってわけ」


 ナターリアは袋をポンポンと叩いた。


「どう?これ少しは役に立ちそう?」


「役に立つなんてもんじゃないよ!」


 ルークはナターリアの手を取った。


「これだけの量があったら街のみんなを治すのに十分な薬が作れるはずだ!本当にありがとう!」


「私からもお礼を言わせてくれ」


 ミランダが前に進み出て右手を差し出した。


「私はミランダ・コールズ。警備隊西地区小隊長で今回の対策班長も務めている。君の持ってきた薬草は我々対策班が全量買い取らせてもらおう」


「あたしはナターリア・ナイトレイ。そこにいるルークとアルマの友達兼商売仲間。それじゃあ契約成立ということで。お代については……」


 ナターリアはミランダの手を握り返しながらにやりと笑った。


「今回は結構ですよ、なんせメルカポリスの危機ですからね。それにこれはお金を出して仕入れてきた物じゃないし」


「いいのか?こちらとしては助かるが……手数料くらい請求しても良いのだぞ?」


「いいんですよ」


 ナターリアはパタパタと手を振った。


「損して得取れは商人の金言ですから。それにここで街のみんなと警備隊長のあなたに良い印象を与えておけば後々にも繋がりますからね。言ってみればこれは先行投資みたいなものですよ」


「そうか……ではありがたく使わせてもらうとしよう」


 ミランダは大きく頷くとルークの方に振り返った。


「早速これで薬を作ろう。ルーク、すまないが手伝ってもらえないか」


「もちろん!まずは最適な比率を割り出すところからだね」


 ルークは腕まくりをすると袋へと向かっていった。





    ◆





 それから一晩中ルークたちは薬作りと治療に駆けずり回った。


 まずチリンの葉とレリブ茶を2:8で混ぜるのが一番薬効があることを突き止め、あとはひたすら煎じては患者に飲ませるという作業を繰り返していた。


 その甲斐あって朝が来る頃には全ての重病人に投薬を済ませることができた。


 薬の効果は凄まじく、飲んで1時間後には早くも回復の兆しを見せ、夜が明ける頃には動き回れる患者も出てくるほどだった。


「何とかなりそうだね」


 微笑むルークの声には流石に疲れが滲んでいる。


「ああ、病院の職員や僧侶たちにもやり方を伝えたし、あとは任せておけばいいだろう」

 ミランダが笑みを返す。


 アルマとナターリア、シシリーは部屋の隅で毛布にくるまって眠っている。


 窓から差し込む朝日がミランダの顔を照らしていた。


「ルーク、君には本当に感謝している。君たちがいなかったら今頃この街は地獄のような有様だっただろう。どれほど感謝してもしきれないくらいだ」


「お礼ならクリート村のみんなに言ってください。街を救ったのは彼らです。1000年前に師匠が伝えたことを彼ら獣人たちがしっかり受け継いでいたからこそ今回の災禍を防ぐことができたんです」


「そうだな、確かにその通りだ。いずれクリート村に行って正式に感謝を伝えることにしよう。街には獣人のことを憎んでいる者も多いがこれで印象も変わるかもしれない。いや、私が変えてみせる。その位しないと彼らの恩義に報いることはできないだろう」


 ミランダが頷く。


「しかしルーク、君の師匠の魔神イリスは大したものだな。あの化け物を討伐した上に黒斑熱の治療方法まで伝えていたとは。我々が教えられてきた魔神イリスとはずいぶんと違っているようだ」


「そうなんだ!」


 ルークは勢い込んでミランダに詰め寄った。


「人族の間では人類種の宿敵(パブリックエネミー)なんて呼ばれているけど僕の知っている師匠はそんなのとは全然違う!確かに自由奔放すぎるところはあるしなまじっか魔力が凄いから暴走すると周囲への被害も凄いけど、本当は周りのことを考えてる優しい……」


「ちょ、ちょっと待て、近い近い」


 ミランダが慌ててルークの肩を押した。


 心なしかその頬か紅く染まっている。


「あ、すいません、ちょっと熱くなってしまって」


「いやいいんだ。君が師匠と仰ぐほどなんだ、相当に尊敬しているのだろうな」


 咳ばらいをしながらからかうような口調のミランダにルークは力強く頷いた。


「ええ、僕が今ここにいるのは彼女のおかげなんです。僕にとってかけがえのない存在です。彼女たちの為なら僕はなんでもします」


 そう言いきるルークの視線には寝息を立てるアルマの姿があった。


 そんなルークを呆気に取られて見ていたミランダだったが、やがて吹き出すように笑い始めた。


「まったく!君にそこまで言わせるとは少し妬けてくるな!」


 笑いながらバンバンとルークの肩を叩く。


「だが君にそこまで言わせるイリスという存在に興味が出てきたよ。いつか会ってみたいものだ。やはり伝聞ではなく自分の眼で見て判断したいしな」


「ええ、是非紹介させてください。もっともそうするにはまだまだ先は長いんですけどね」


 頭を掻きながら苦笑するルーク。


 ミランダはそんなルークに優しく微笑んだ。


「だが君なら必ずやり遂げる、そうなんだろう?」


「もちろんです」


 ルークが大きく頷く。



いつも読んでいただきありがとうございます!


「面白い」「もっと読んでみたい」と思われたら是非とも広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へとお願いします!


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