表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/191

第118話:決戦

 ルークとアルマ、ミランダの目の前に半魔法生物(シング)が山のようにそびえている。


 触手を切り落とされたとはいえその身体にダメージは見られない。


 いや、切られたことを感知すらしていないのかもしれない。


「どうするのだ。このままだと脱出することも叶わないぞ」


 ミランダの声が緊張に震えている。


 しかしルークは落ち着いていた。


「いえ、むしろこれは好機と見ましょう。ここであれを倒せば黒斑熱の蔓延を止められるのですから」


「……まったく、君は大した奴だな」


 意外な言葉に一瞬唖然としたミランダはやがて破顔すると改めて剣を取り直した。


 おかげで肩から余分な力が抜け、冷静に状況を観察する余裕ができるようになった。


「ルーク、確かに君のいう通りだ。なんにせよ黒斑熱を止めるにはあれを倒さなくてはいけないのだな。そう考えればシンプルで済む」


「うう、鎧を着てるとはいえあれと戦うのは気が進まないなあ……」


 ぼやいてはいるがアルマも戦闘態勢を整えている。


「アルマ、あれに肉弾攻撃をしかけるとグスタフやランカーのようになってしまうかもしれない。なにか武器を使った方が良いだろうね」


「そ、そう?じゃあこれで」


 どこかホッとしたようにアルマはグスタフの遺した戦槌を拾いあげた。



「ひとまず動きを封じれないかやってみる。2人は防御に徹しつついけそうなら攻撃を!」


「「了解!」」


 ルークは左手を前に突きだすと詠唱を開始した。


拘禁噛砕(バインドバイツ)!」


 魔力の縄が半魔法生物(シング)に絡みついた。


「いけるかっ!?」


「いや……これは……」


 嬉しそうに叫ぶミランダだったがルークは浮かない表情だ。


 全く手ごたえがない。


 例えるならまさしく泥を縄で縛っているようなものだ。


 おそらくこのまま拘束を強めても全く効果がないだろう。


 不意に半魔法生物(シング)の全身が大きく震えた。


(攻撃が来る!)


 ルークの左目が警告を発する。


 その向かう先はおそらく背後に兵士と《蒼穹の鷹》を庇っているアルマだ。


「アルマ!そっちに行くよ!」

 

 ルークの警告で盾を構えたアルマに触手が襲い掛かってきた。


 半魔法生物(シング)の触手を受けた盾がみるみるうちに黒化していく。


「アルマ!盾を離して!」


「この……っ!」


 アルマは盾ごと半魔法生物(シング)へと体当たりするようにぶつかっていくと戦槌を振りかぶって手放した盾へと叩きつけた。


 衝撃が地面へと伝わり半魔法生物(シング)を中心に巨大なクレーターを作る。


 戦槌はアルマの力を吸収しきれずに粉々に砕け散った。


「どうだ!」



 大地も穿つほどのアルマの攻撃だったが半魔法生物(シング)には全く変化が見えない。


 相変わらず不気味に脈動を続けながら前進を続けていた。



「どうなってんの!?あれでも効果がないなんて!」


 半魔法生物(シング)が再び体を震わせてアルマに向かって触手を伸ばす。


「フッ!」


 気迫一閃、ミランダがそれを剣で切り飛ばした。



断絶結界(アイソレーション)!」


 ルークの結界魔法が半魔法生物(シング)を閉じ込める。


 結界は半魔法生物(シング)と触れ合あってバチバチと火花を散らしている


「おそらくあの結界もそう長くはもたない。それまでに対処方法を見つけ出さないと」


 ルークは足元で蠢く半魔法生物(シング)の残骸に手をかざした。


火炎弾(ファイアボール)


 火炎弾を受けても残骸は燃えるどころかその動きに激しさを増すばかりだ。


「やっぱり中途半端な魔法攻撃は効果がないどころか半魔法生物(シング)に力を与えるだけみたいだ。となると物理攻撃しかないのか……」


「だが物理攻撃も容易ではないぞ」


 そう言って前に出してきたミランダの剣はたったの一撃で刀身がボロボロになっている。


「耐魔効果を持った剣ですらこの有様だ。これでは武器がいくらあっても足りないだろう」


「飽和攻撃を仕掛ければ倒せるかもしれないけど、そうなると水源まで潰してしまうことになるか……困ったな」



「うおおおおっ!!」


 ルークたちが悩んでいると奥から鬨の声が響いてきた。


 振り返ると半魔法生物(シング)に向かって兵士が突進する所だった。


「奴は身動きできない!倒すなら今のうちだ!」


 いつの間にか元気を取り戻したランカーが兵士たちを先導している。


 レスリーの補助魔法が兵士たちを包み込んだ。


攻撃力五倍増(クインクエス)!今の軍勢は兵士100人に匹敵します!これだけの力があればあんな魔獣如き!」


「こんな奴、結界ごと私の最大魔法で吹っ飛ばしてやるんだから!」


 エセルが詠唱を唱えた。


 膨大な魔力がエセルの手の中に集まっていく。


「いけない!そんなことをしたら……!」


壮絶爆裂(グランドブラスト)!」


 ルークの警告も空しくエセルの攻撃魔法が半魔法生物(シング)に向かって放たれた。


 耳をつんざくような音と共に衝撃波がダンジョン内を貫いていく。


 兵士たちはその衝撃にまとめて吹き飛ばされた。


「エセル!何をしてるんですか!私の強化魔法を施した兵士たちに任せておけば良かったのに」


「うっさいわね!そんなちんたらやってたら結界が破られちゃうでしょ!こういうのはね、スピードが命なのよスピードが!」


「何をやっているんだ……」


 流石のルークもこれには頭を抱えるしかなかった。


「あんな泥山、私の魔法で粉々だっての」


 無造作に爆煙の中に足を踏み入れようとするエセル。


「逃げるんだ!」


 ルークの声が響いた時、煙の中から伸びてきた黒い触手がエセルの首元に巻き付いた。


いつも読んでいただきありがとうございます!


「面白い」「もっと読んでみたい」と思われたら是非とも広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へとお願いします!


モチベーションアップにつながりますので何卒よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ