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第116話:門の奥に潜むもの

 ルークの魔法はブーツだけでなく地面の足跡も黄色く輝かせていた。


 ランカーの足跡はルークたちの背後、太古の水門(オールドゲート)の周囲でも光を放っている。


 太古の水門(オールドゲート)に残されたランカーの手の跡もその存在を誇示するように輝いていた。


「こ、これは……?」


 クラヴィの背後にいた兵士たちからどよめきが起こる。


「見たこともないというのに何故あなたの足跡が残っているのですか。いや、あなただけじゃない、《蒼穹の鷹》全員です」


 ルークの言葉と共に他の3人の足跡も輝きだした。


 足跡は太古の水門(オールドゲート)の奥にまで続いている。


「どういうことなのか説明していただけますか」


「こ、こんなものでたらめだ!貴様のくだらないまやかしだ!こんなものが証拠になるものか!」


 ランカーは顔を真っ赤にして怒鳴った。


「確かにそうかもしれません」


 ルークはあっさりと認めた。


「これを証拠とするには弱いでしょう。ならばこれはどうですか」


 ルークが指を鳴らすと太古の水門(オールドゲート)に付けられた刀傷が赤い光を放った。


 それに呼応するようにランカーの剣とグスタフの戦槌も光り出す。


「な、なんだこれは?」


「この水門は魔法に対して強固な防御力を持っている反面、1000年という年月で物理的な防御力は相当落ちていました。それでもあと数百年は持ったはずですが……あなた方はそれを強引に破壊したのでしょう、おそらく武器もかなり刃こぼれしたはずです」


 ルークが水門の傷を指差す。


「あの光っている部分にあなた方の武器の欠片が残っています。調べれば成分が同じだと一致するでしょう。これがあなた方がここに来ていたという証拠です」


「なにっ!?」


 ランカーが剣を抱えるようにしてぎょっと目を剥いた。


「どうやら馬脚を現したようだな」


 ミランダが前に出た。


「君たちの武器を預からせてもらおう。もしルークの言ったとおりだったら君たちもただでは済まんぞ」


「ふざけんじぇねえ!」


 ランカーの後ろにいたグスタフが声を荒げながら前に出てきた。


「なんで俺たちがそんなことに従わなきゃいけねえんだ!そもそも無断侵入してるのはそっちじゃねえか!」


「これは正当な捜査だ。そして君たちにはそれに従う義務がある。逆らうのなら実力行使させてもらうまでだ」


 ミランダが剣を構える。


「おもしれえ、やれるもんならやってみやがれ。その代わりこっちも容赦しねえぞ」


 戦槌を構えながらグスタフが不敵に笑った。


 普段なら権力には大人しく従うグスタフだったが今回は違う。


 手勢はこちらの方が圧倒的に多いし後ろにはクラヴィも控えている。


 目撃者はよそ者のルークとアルマだけ、となればいくらでも言い逃れができるだろう。


 以前その2人に手酷くやられたことも忘れて強気に出るグスタフだった。




「そこまでです」


 ルークが2人の間に入ってきた。


「こんなことをしてる場合じゃありません、いったん引いてください」


「ああっ!?てめえは関係ねえだろ!すっこんでろ!」


「そうもいかないんです」


 凄むグスタフに全く動じずにルークは続けた。


「あなたたちが何を考えて水門を破壊したのかは知りませんが、あの中に何がいるのかは考えなかったのですか」


「ああっ?あん中には何もいなかったじゃねえ……」


「グスタフ!」


「しまっ……」


 ランカーが叱責した時は既に遅かった。


「やはり貴様らの仕業だったのか!」


「クソッ謀りやがったな!こうなったらてめえらまとめて……」


 恥辱で顔を赤くしたグスタフが戦槌を振り上げ、ミランダがそれを迎え撃つために剣を構える。


「いけないっ!」


 ルークがミランダとアルマを抱えて横っ飛びに逃げた瞬間、水門の奥から真っ黒い塊が飛び出してきてグスタフに巻き付いた。



「な、なんだこれはっ!?う……うぎゃああああっ」


 真っ黒い塊に巻き付かれて絶叫をあげるグスタフの身体が黒い痣に覆われていく。


「ひいいぃっ!」


「ラ、ランカー……た、助けて……」


 何が起きたのか理解できずに呆然と見上げるランカーの目の前でグスタフの全身が真っ黒に染まっていき、やがて黒い物体と同化していった。


「ひいいいぃぃぃっ!!!」


 ランカーが悲鳴を上げる。


「な、なんだあれはあっ!」



 黒い物体はグスタフを吸収するとべちゃりと粘着質のような動きでにじり寄ってきた。


 高さは3メートルほどで、全身をブルブルと震わせながらこちらに向かってくる。


 それはまるで汚泥を積み上げた山が生命を宿しているかのようだった。



「グ、グスタフさんが飲まれちまったぞ!」


「こ、こっちに来るぞ」


「気をつけろ!」


 異様な事態に洞窟内に動揺と恐怖が広がっていく。


「き、貴様ら落ち着け!まずは儂を守るのだ!」


 クラヴィが必死に怒鳴っているが困惑する兵士たちには聞こえていない。



「なんなのあれ?」


 アルマとミランダも不気味に蠢くその物体を青ざめた顔で見守るしかなかった。


「まさか太古の水門(オールドゲート)はあの魔獣を封印していたのか?」


「正しくは違います」


 震える声で呟くミランダにルークが答える。


「あれはこの山の魔素が堆積して生まれた魔素と魔法生物の中間の存在、半魔法生物(シング)です」



いつも読んでいただきありがとうございます!


「面白い」「もっと読んでみたい」と思われたら是非とも広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へとお願いします!


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