第3話
明の部屋に入った二人は、明は勉強机の椅子に、美咲はベッドに腰かけ、くだらない話をしていた。幼馴染みということで、話題が尽きることはなかった。
「―――でさー、うちの母さんったら――で、――――だったんだよー?」
「へー、じゃあ―――だったとか?」
「そうそう!で、―――とか言ってー、――――してんだよ!?信じられる!?」
……まぁ、もっぱら話してるのは美咲で、明はどちらかというと聞き役だった。これは昔からずっと変わらないポジションだった。
二人がしばらく話していると、一階から由起子の声が聞こえた。
「明〜!ご飯よ〜!」
「わかった〜!……じゃあ美咲、下に行くか。」
「うん!」
「うわぁ〜〜!!おいしそー!!」
食卓に並んだ昼食の料理を見て、感嘆の声をあげる美咲。それもそのはず、机に晩御飯かと思えるくらいの豪華な料理が並べられていた。
…うちの母さんってこうゆうところあるんだよなぁ。普段の昼食なんて前日の夕飯の残りのくせに…
そんなふうに明は思っていると、由起子が明に鋭い視線を送ってきた。……その目は、“何も喋るな”と語っていた。
苦笑いしかできない明だった。
明と美咲と由起子と守の四人で昼食を食べていると、不意にインターホンが鳴った。
「あ、葵だわ!」
由起子はそう言うと、いそいそと玄関へと向かう。
明は何となく美咲の顔を見ると、その顔は緩んでいた。まるでエサを待つ犬のようだ。
全く、葵のどこがいいんだろ……
口を開けば憎まれ口ばかり……
その上、人を小馬鹿にしたような態度しやがって………
そんな葵の本性を、小一時間くらいかけて、美咲に説明してやりたい…
そんなくだらない事を明が思っているうちに、葵はリビングに来ていた。
「ただいまーー……。!!!あっーー!美咲ちゃんじゃーん!!おっひさー!」
テンションの移り変わり激しいな、おい。
「葵さーん!!おっひさー、です!!もう、帰って来るの遅いですよ〜!!」
お前もかい。
「ごめんねー、ちょっと用事があって……。うわっっ!!!!何、このご飯!?」
いや、そこは突っ込んだらダメだって。
葵がそう言った瞬間、いつの間にか由起子が葵の後ろに立っていた。美咲の位置からは見えないところ、つまり葵の背中に由起子の左手が隠れていた。
「何かしら?お昼ご飯が何か変?」
「!!!!」
葵は、由起子の急な出現と、普段ならしないような猫なで声に驚く。そのあと、葵の背中あたりに痛みが走る。恐る恐るチラ見すると、由起子の手が葵の背中をつねっていた……。
……けっこう痛い……
一刻も早く、背中の痛みから逃げるために、葵はすぐさま言った。
「なんでもナイです…」
明と守は苦笑いをしており、美咲は何が何だか分からない顔をしていた。葵は背中をさすっていた。
母さんは……笑っていた…
…………恐いです。




