第2話
「へぇー、幼馴染みねぇ~」
食堂のカレーライスを口に運びながら絵里が言った。
「そ。小学校低学年の頃からのね」
美咲が絵里に説明していた。
「ふーん……。で、白井さんに、近藤君で、……えーと?」
絵里が由美と明を順に指さし、最後に真平を指さした。
「俺?俺は北川真平。まぁこの三人とはこの学校で初めて知り合ったけど……」
そう説明する真平。さらに続けた。
「あ、ちなみに俺と明はバドミントン部だから。で、白井さんはそのマネージャー」
「えー、白井さんマネージャーなの!?大変じゃなーい??」
由美が微笑んだ。
「美咲ちゃんと同じこと言ってる。でも、一人じゃないし、それに私運動は苦手だから……」
「ふーん……」
「宮代さんは?何部?」
真平が絵里にそう訊くと、絵里は肩をすくめた。
「まだ決めてなーい。どっかしら入ると思うけど…」
「絵里ったらー、私がテニス部にしようって誘っても来てくれないんだよー」
美咲が不満そうに言うと、他の四人は呆れたような顔をした。
「べ、別に部活くらい自由に選ばせてあげれば……」
「まぁそうだけど……」
「お前は部活じゃなくて勉強しろ。勉強。」
「う、うるさい」
「宮代さん知ってる?こいつ、こないだの数学のテスト―――」
「わぁーー!!言わないでー!!」
明が絵里に美咲の点数を暴露しようとすると、美咲が慌てて大声を出して明の口を抑えた。
「え?何々?気になる~」
絵里が好奇に満ちた視線を明に送りながら、身をのり出した。真平と由美はもはや笑いをこらえている。
「絵里は知らなくていーの!」
明を叩きながらそう言うと、美咲は一心にお弁当を食べ始めた。
明たち5人が食堂で食べていると、向こうから桐島先輩と品川先輩がやってきた。その2人は由美の姿を見つけると近くに座った。
「や、由美ちゃん」
「こんにちは。桐島先輩と品川先輩も昼食ですか?」
「うん、これから」
桐島先輩と由美が会話しているのを、他の4人は緊張しながら聞いていた。なんと言っても桐島先輩は現役の生徒会長なのだ。
急に口数が減った4人を見て桐島先輩は不思議そうに言った。
「……あれ?あ、私のことなんか気にしないで。どうぞ食事を続けて」
しかし、緊張している明たちはろくに返事ができず、軽く頷くだけであった。そんな4人を見て品川先輩がフォローを入れる。
「……あのね、静香?自分が生徒会長だってことわかってる?」
静香というのは桐島先輩の名前だ。
品川先輩の言葉を聞いて、桐島先輩は言い返した。
「でもさ~生徒会長っていっても生徒には変わりないじゃん?」
「生徒会長って別格じゃない?」
「え~、私、特別扱いされたくはないんだけどー」
そう言って桐島先輩は明たちに向き直った。
「そういえば、初対面の人がいるね………。由美ちゃんはいいとして、そこの二人もバドミントン部だよね?……えーっと……北川君に近藤君……で合ってる?」
桐島先輩がそう訊いてきたので、明と真平は、はい、とだけ答えた。
次に桐島先輩は、美咲と絵里の方へ目を向けた。
「……それで、君たちは初めましてだよね?」
「あっ、はい、そうです。松井美咲っていいます」
「あっ、私は宮代絵里です」
慌てて自己紹介した二人に桐島先輩は軽く微笑んだ。
「そんなに硬くならなくていいってば~。私は桐島静香。一応生徒会長やってまーす」
笑顔でそう言う先輩に、明たちは徐々に緊張がほぐれていくのを感じた。
そのあと、昼休みが終わるまで美咲たちは桐島先輩たちと話していた。桐島先輩はとても話が上手くてみんなを楽しませた。昼休みが終わる頃には、美咲は桐島先輩への緊張も薄れ、このまま話していたい、とまで思うようになっていた。
……桐島先輩ってすごいなぁ。
話は面白いし、あんなに綺麗で、それでいて性格もいい。
おまけに生徒会長かつバドミントン部の部長。
あんな人になれたらいいな………
ばいばい、と言って教室へ戻っていく桐島先輩の後ろ姿を見ながら、美咲はいつの間にか憧れを抱いていた。




