第2章 第1話
「―――であるから、ここのxにはこれを代入して――――」
3時間目の数学の授業。
前の教壇では、クラスの担任の有川先生が問題の解説をしている。
松井美咲はつまんなそうにはぁー、と溜め息をついた。
「どうした~??授業中に溜め息とは感心しないぞ~?」
後ろの席の、宮代絵里がそう囁いてきた。
彼女はこの学校に入ってから初めて出来た友達だ。
顔は可愛い方なのだが、化粧をほとんどしてない。化粧すれば男子は放っておかないだろう、と美咲は思っている。
髪は1つに結わえており、活発な印象を抱かせる。
「だって授業なんてつまんない~~」
「えっ!?美咲ちゃんってそんなに頭良いのー!?いいなぁ~」
「い、いや………そういうわけじゃなくて………やばっ!」
美咲が宮代絵里と話していると、有川先生と目があったので慌てて前に向き直った。
彼女にはああ言ったが、美咲の溜め息の理由は授業のせいではない。
近藤明のことだ。
明はこのところずっと部活に出ていて、あまり会話できてない。行き帰りで一緒になることもほとんどない。
それに……
明が白井由美とどんどん仲良くなっていく。
見た感じだと由美は明に対して何も感じてないようだけど……なんか面白くない……。
そう思って美咲は再び溜め息をついた。
3時間目と4時間目の授業が終わって昼休みになった。
「やったー!やっとお昼だー」
宮代絵里がそう言いながら、机に頭をのせてだら~としている。
「じゃあお弁当食べよっ」
美咲がそう言うと、絵里は何に気付いたように、あっと声をあげた。
「今日お弁当持ってきてないんだった!」
「あ、そう?じゃあ食堂で食べよ?」
「うんっ」
そう言って二人は立ち上がり教室を出ようとしたが、美咲が絵里を引き止めた。
「あ、由美誘ってもいい?」
「由美……?」
「白井さんのことだよ!同じ塾だったんだよ!」
「そうなの?じゃあ一緒に行こっ?」
美咲は後ろの方の席の由美に手を振った。
「おーい由美ー。お昼食堂で一緒に食べよー?」
大声でそう訊くと、由美は笑顔でうなずいてお弁当を持ってきた。
美咲は由美が近くに来ると三人で食堂に向かった。
ここの学校の食堂は一階にあり、かなりのスペースがある。百人以上座れるようになっている。
四人席もあれば長テーブルもある。
しかも、ちゃんとした料理に加えて、パンやアイスなどの既製品も買うことができる。要は種類が豊富なのだ。
ドラマによく見るような熾烈な争奪戦とかもなく、みんな思い思いに好きなものを買っている。中には美咲のように、お弁当を食堂に持ってきて食べている人もいた。
「じゃー私買ってくるから、どっか座っといてー」
そう言って絵里は売り場へ向かった。
美咲と由美は空いている長テーブルに向かい合わせで座った。
「ところで由美さー、マネージャーどう?大変?」
お弁当の蓋をあけながら美咲が言った。
「んー……そうでもない、かな。まだ忙しい時期じゃないらしくて、それに先輩のマネージャーもいるし」
「でもさー、なんかじっとしてるのっていやじゃない?」
「それは美咲ちゃんだからでしょ……」
そう言って苦笑する由美。
「……まぁたまに休憩時間に遊びで相手してもらうくらいかな………。そういう美咲ちゃんは?テニス部どう?」
「問題なし!周りの先輩とかもみーんな優しいし!」
「へぇー」
ふと美咲が売り場で並んでいる絵里を見ようと顔を上げると、こちらに近づいてくる明と北川真平の姿が見えた。
「お、美咲じゃん。あと白井さんも。」
そう言って明は美咲の隣に座った。手には食堂のうどんがあった。
同時に、真平が由美の隣にお弁当を置きながら座った。
「あれ?明、お弁当じゃないの?」
「ん?あぁ。母さんが寝坊しちまって。美咲と白井さんは?二人とも弁当みたいだけど………」
「私たちは絵里がお弁当忘れたって言うから……」
「「絵里?」」
と、明と真平が聞き返すと、美咲は説明した。
「ほら、教室で私の後ろの。今向かってきてる子」
美咲が指さした方向には、トレーを両手で持ちながら歩いてくる絵里がいた。
絵里は、美咲達に気付くと声をあげた。
「……あら?…人数増えてる……??」




