第13話
体育館に入ってきた男は、どうやら先輩のようだ。制服を来ていることで、それが分かる。
ただ、いかんせん距離があるのでよく見えない。思わず、明は目を細めた。
その人は、更衣室に向かって歩き始めた。男子更衣室は入り口から見て右にある。
先ほど言葉を交わした山崎先輩が、あの人が入っていった更衣室に入っていく。
しばらくすると、二人とも更衣室から出てきて、一年生が集まっているところへと向かってきた。後ろから、桐島先輩ともう一人の女の先輩がついてくる。
四人の先輩が一年生の前に立つと、一年生は全員立ち上がった。
「俺が男子バドミントン部部長の、速水聡だ。よろしくな」
簡潔な自己紹介だったが、それだけで圧倒されたように感じた。
改めて、部長の顔を見てみる。
髪は黒で短く、精悍な顔をしていた。その顔には微笑みなど欠片もなく、厳格そうな印象を与える。
身長も180cmはあるだろう。体つきは、筋骨隆々というより、無駄な肉がない。
おそらくバドミントンも強いのだろう、と明は思った。
速水部長に続いて、山崎先輩と桐島先輩も自己紹介をした。ただ、先ほどと何ら変わりはなかった。
桐島先輩の自己紹介が終わると、もう一人の女の先輩が話し始めた。
「わ、私、品川紗耶っていいます…。副部長です……。よ、よろしく……」
なんとも頼りなさそうな先輩だ……。
ただ、桐島先輩とは、なんだかいいコンビのように思えた。
四人が自己紹介を終えると、速水部長が再び話し始めた。
「とりあえずこれから、バドミントン部の簡単な説明を行う。
俺らバド部は、男子と女子に分かれていて、練習内容も別だ。休憩時間や終わる時間も別。開始時間は一緒だけどな。
見て分かる通り、コートは4面ある。入り口に近い2面が女子で、奥の2面が男子。
着替えは部活が始まる前に、更衣室ですませとけ。あそこにドアが見えるだろ?」
そう言いながら、先ほど速水部長が入って行ったドアを指さした。
「あれが男子更衣室で、あっちが」
今度は反対側の壁にあるドアを指さした。
「女子更衣室だ。
それぞれの更衣室の横にあるのが、部室だ。………女子は知らんが、男子は用がなければ、あまり部室を使うなよ?」
そこまで言って、速水部長は息をついた。
「ここまでで、質問ある人?」
周りを見回したが、誰も手を挙げなかった。それを確認した後、速水部長は再び話し始めた。
「次は、練習内容について話す。
まず、開始時間は、授業が終わってからネット張りする時間も含めて、大体15~20分後だ。厳密な時間は決まってないからな。
終了時間は、大体18時頃だ。というより、基本的に生徒は18時には帰らなきゃいけないしな……。まぁたまに試合前とかは、遅くまで練習することもあるが。
練習自体は、そこまで辛くない。甘くもないけどな。ただ、怠けてサボったり、遊びでやるような奴はこの部にはいらない。入部するならそのつもりでいろ」
速水部長はぐるりと一年生を見回した。淡々とした口調だが、すごい威圧感を感じる。
なんというか………オーラ??みたいな。
「多分、この中には未経験者もいるだろう。だから、はじめのうちはラケットを貸し出すが、基本的に自分用のを買えよ。今まで使ってたラケットがある人は、明日から持ってくるように。
とりあえず今日は、一年生は練習に入れるつもりはないから、見学してけ。好きな時間に帰っていいからな?
本当にバド部に入りたい人は、明日のこの時間、またここに来い。その時初めて、自己紹介してもらうから」
速水部長は言い終わると、他の三人の方を見た。桐島先輩は首を横に振り、異論はないことを示した。
「じゃあ、以上だ」
そう言って、四人の先輩は戻っていった。
「どうする?」
真平が問いかけてくる。
「どうするも何も、とりあえず見ないことには始まらないだろ?まぁ俺は、もう入部するつもりだけど……」
「そうだな。少し見てから帰るか」
そう言って、二人は、練習の邪魔にならぬよう、体育館の端に座った。他の一年生も、大体同じだ。
しばらくすると、女子の部室の方から、由美が出てきた。一人の先輩と一緒に出てきたが、由美だけがこっちに向かって来た。
「どうしたの?そんなところに座って……」
「あ、いや、今日は見学してけって言われたからさ……」
真平が説明する。
明は少し気になったことを、由美に聞いてみた。
「白井さん、今まで何してたの?」
「ん?ずっと先輩の話を聞いてただけだよ?」
「ずいぶん長かったような………??」
「なんか今、マネージャーって一人しかいないらしいの。しかも三年生。だから多分、嬉しかったんじゃないかなぁ……」
「あぁ、さっき一緒に出てきた人が……?」
「そう。その三年のマネージャーの人だよ。なんか、マネージャーの心得?みたいなものを、話してくれたの」
三人が会話を止めてコートを見ると、すでに練習は始まっていた。
13話にもなってまだ入学してから一週間もたってない(汗)
とりあえず始めは大事かなと思って、詳しく書いてます。入部するまでで第1章を終わらせようかと考えてます。




