第12話
パァン!
先輩と思われる人達がシャトルを打ちながら、コートでウォーミングアップをしている。体育館の端に、何人かは座っている。
良かった。まだ始まってないようだ。
明達三人が、扉の前で戸惑っていると、二人の先輩と思われる人が近くにやってきた。
一人は男で、温和そうな顔つきをしている。頼りない、というより、優しいという言葉が合いそうな人だ。
もう一人は女で、体は細く、すらっとしていた。とても綺麗な顔で思わず見とれてしまうぐらいだが、どこかで見たことあるような気が、明はしていた。
「君たち、入部希望者?」
「はい。よろしくお願いしますっ!」
「え~と、じゃあまず、自己紹介をしておこうかな。俺は三年の、山崎一輝だ。ちなみに男子の方の副部長ね。気軽に声をかけてくれて、全然構わないから」
そう言って、山崎先輩はにこりと笑った。
なんかもう、見るからに優しいオーラが出ていた。
今度は、女の先輩が話し始めた。
「私は三年の、桐島静香です。女子バド部の部長ね。一応、生徒会長もやってるんだけど………入学式で見たかな?よろしく。」
言い終わると、桐島先輩は微笑んだ。
……思い出した。
どこかで見たことあるってのは、入学式だったんだ……
横目でちらりと真平を見ると、桐島先輩に見とれていた。
二人に続いて自己紹介をしようと明が口を開くと、それを山崎先輩が遮った。
「あーー、まだ君達は自己紹介しなくていいよ。後で一年生まとめてしてもらうから。」
山崎先輩は、桐島先輩に目配せして、何か話すことある?、と目で聞いていた。
桐島先輩が小さく首を横にふると、山崎先輩は再び話し始めた。
「………え~と、じゃあ他の一年生のところに行こう。ついて来て」
山崎先輩は、くるりと背を向けて歩き出した。
「あ、あの!」
山崎先輩と桐島先輩が振り向く。
「何だい?」
「あ、あの…私……マネージャー希望なんですけど………」
由美がおずおずと喋り出した。
それを聞くや否や、二人の先輩の顔が、ぱあっと綻びた。
「うそっ!?良かった~~~。今年はマネージャー志望の子がいなくてね~。」
桐島先輩が由美に近づきながら言った。
笑顔の桐島先輩は素敵だった。
………戸惑う由美も可愛かったが。
「じゃあ、君だけこっちね!!」
桐島先輩はそう言って由美の手を掴むと、すぐに去って行った。
連れていかれたっていう表現が似合いそうだなと、明は心の中で苦笑いをした。
由美は終始戸惑う顔だったし。
山崎先輩も同じことを思ったのか、連れていかれる由美を見て呟いた。
「あらら~………。よほど嬉しいんだろうな、桐島のやつ。あの子、困ってたな……。まあいいや。それじゃ行こうか。」
山崎先輩は再び歩き出し、明と真平は、後ろをてくてくついていった。
「それじゃ、ここで待機してて」
山崎先輩はそう言うと、離れていった。
明と真平が連れられて来たのは、体育館の隅だった。周りには、他の一年生達がいて、座って待っているようだ。
明と真平も荷物を置いて、座って待つことにした。
明は、真平と談笑しながら体育館の様子を眺めた。
コートは全部で4面。まだ練習は始まっていないので、数人の先輩は思い思いに打っている。体育館の壁の近くで座りながら柔軟体操をしている先輩もいる。
今度は自分の周りの、同級生を見てみる。
男子は二人を含めて6人いたが、同じ2組の人はいない。真平のように、ラケットを持ってきてない人もいる。
女子は、男子より1人少なく、5人だった。だが、由美の姿はない。きっと、マネージャーは部員とは別の扱いなのだろう。
明達が体育館に来てから5分くらい過ぎた頃。
一人の男が体育館の中へと入ってきた。
その瞬間、体育館の空気が変わったような、気がした。




